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【短い文章で大きな感動を】いま「作詞」が注目される理由とは?(2012年6月号掲載)


近年、また求められ始めている「感動をくれるコトバ」。

1位 6,828万枚 阿久悠
2位 4,984万枚 松本隆
3位 4,576万枚 秋元康

(オリコン調べによる/2011年6月20日現在)

 このランキングは、日本の作詞家別シングル総売上枚数を表したもの。
1990年代終盤から作詞作曲、そして編曲までをこなすアーティストが増え、Jポップにおける作詞家の活躍舞台は激減している、と言われてきた。ところがご覧あれ、先のランキングのトップ3は、いずれもそうしたアーティストではなく、職業作詞家としての御仁が占めている。これはいったい、どういうことか?

 もちろん、この3人がそれぞれ時代の先端をいくプロであるということはまちがいない。4位以下のランキングを見ても、歌唱まで含め、楽曲制作をこなすアーティストがトップ10中の約半数を占めてはいる。だが……。

 ネットの発達により、文字媒体の流通が多岐にわたっている現代。カラオケでは必ず歌詞を文字として目にする。歌詞検索のホームページは、音楽の中の「コトバ」に感動を求めるファンで大にぎわいだ。そう、日本の音楽シーンで、ポップスの隆盛期に歌謡曲や演歌が死に絶えなかったように、プロが作った歌詞もまた、無くなることはなく、常に求められている。
 では、その「職業作詞家」になるにはどうしたらいいか? そして、作詞家でい続けるために、コトバはどう「磨いて」いくべきか? 
 流行歌の世界において、作詞家という仕事に未来はあるのか?インタビューを交えて「職業作詞家の現実」を追いかけてみる。

まず初めに:歌詞を作るための5つのポイント

書き写してみる

 まずは好きな歌の歌詞を書き写してみよう。
 自分流に書き換えてはダメ。テンがあればテンを打ち、改行されていれば改行する。当て字や送り仮名などの表記もそのままに、丁寧に清書する。その際、「ここはなぜ改行したのか」「ここになぜテンが必要なのか」「ここはなぜこの漢字を使ったのか」といったことを考えてみると、とても勉強になる。この作業は、絵画で言えばデッサン、スポーツで言えば筋トレのようなもの。写し終えたら、必ず声に出して読んでみる。さまざまなジャンルの歌詞を書き写してみるのも、好きな作詞家の作品をまとめるのもいい。書き写し、声にする。この作業で、すべての作詞ノウハウが学べる

まずテーマを絞る

 テーマは、はっきり意識できる場合と、書いているうちに「ああ、これがテーマだ」と気づく場合とがある。書いているうちにテーマが変わってしまう場合もあるが、できる限り、書き出す前に、「この歌詞ではもっともこれが言いたい」といったように意識しておこう
 テーマはその歌に込められたメッセージそのもので、サビで歌われるべきもの。聞いた人に「そうそう」とか、「あるある」のように、共感をもって受け入れられる。そういうテーマであることが望ましいものだ。

字脚を揃える

例えば

花を植えて(6) 君を迎え(6) 帰る道も(6) ここにいるよ(6)

 上に書いた数字は音の数(音節数)。これを字脚と言う。字脚の数え方は、俳句や川柳と同じ。
 長音(音引き)や促音(つめる音)も1音として数える。「しゅ」「ぎゅ」「にゃ」など拗音は1音として数える。

 上記の例文は、「6・6・6・6」とそろっている。また、「6」の中も「3・3」とそろっているので、たたみかけるようなリズムが感じられるはず。リズムがいいかどうかは、書いてある内容に関わらず、「読んでいて心地よいか」が鍵。まずは字脚を揃えることからはじめ、そこから自分にとって心地いいリズムを探してみよう

歌詞の構成を考える

 ひとつ典型的なものを挙げてみよう。
 Aメロ→Bメロ→サビ大きく見ると、「1番-2番-サビ」の繰り返しという構成。英語で1番、2番の歌詞をコーラスと呼ぶ。コーラスを2回やって、サビのみ(ハーフ)を繰り返すので、この形式をツーハーフと呼ぶ。曲の最初のメロディーを略してAメロ。次のひとかたまりがBメロ、そしてCメロ(サビ)となる。Aメロの役割は、主に「説明」。Bメロの役割はAメロのストーリーの展開部分やサビへの効果的な橋渡し。サビは、作者の主体となるメッセージ。
この、基本的なツーハーフのほかにもさまざまな構成がある。テーマを訴えるのに最も効果的な構成を考えてから歌詞を作っていこう。

文字数を考える

 一般的な歌詞の文字数はおよそ
○Aメロ
 2行~4行ぐらい
○Bメロ
 2行~4行ぐらい(Aメロより短いことが多い)
○Cメロ
 3行~4行ぐらい(これを繰り返すパターンが多い)

 もちろん、これはジャンルにもよる。一般に童謡の場合は、聞く対象である子どもの理解度を鑑みて、文字数は少なくなっているはず。

「作詞家」へと続くルート

作詞家になるのに特に資格はいらない。だが、作詞の現場では……

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※本記事は「公募ガイド2012年6月号」の記事を再掲載したものです。