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50代からの住まい#4 収納

高齢者の家にお邪魔すると必ずと言っていいほどあるのが婚礼ダンスです。そして、体が不自由になると真っ先に使えなくなるのが婚礼家具です。中に入っている物を把握できていないのも婚礼ダンスです。そして使っていない着物が眠っているのも婚礼ダンスです。扉を開けるのも引き出しを引くのも力が必要で、中の収納は半分が着物用、みたいな収納家具を今の生活スタイルでうまく活用できる人は、健康で体力があり、日常的に着物を着用するというような方でしょうか。

お屋敷に住んでおられるような方は婚礼ダンスのような大型家具を持っていてもいいと思いますが、体が不自由になって、ベッドを置いたり、歩行器や車いすを置いたりすると、置き家具というのは通行の邪魔になってしまいます。住まいに収納があるにもかかわらず、その備え付けの収納の前に婚礼ダンスを置いているおうちも何件も見ました。ウォークインクローゼットがある部屋に婚礼ダンスを3棹も置き、寝るスペースもない部屋になっているおうちもありました。親が用意してくれたものだから思い入れがある、今更処分する体力がない、ちょっとは使っているものが入ってる(ほぼ使ってない)、などがそのままにされている理由の上位に入ります。そこで50代からの収納について以下の3つを提案します。参考になれば幸いです。

①物を減らす                            60代からの住まいの収納についてですが、まず中に入れる物を減らすことが第一条件です。王道です。人の記憶力は20代をピークに下がり続けます。関連のない数字の記憶は平均7桁と言われています。関連性のある自分の好みの服であっても婚礼ダンス3棹分は100%無理です。とにかく全部出して使うものを選び抜いてください。そしてこのような大掛かりな断捨離ができるのは60代が最後かもしれません。片付けたいという思いはみなさんお持ちですが、体力や判断力がどんどん低下してくると、それを行動に移すことが非常に難しくなっていきます。

②家具を減らす                           物をしっかり減らすことができたら、大きな家具も必要なくなります。今の住まいは備え付けの収納がありますので、そこに収まる量にするというのも一つの目安になると思います。大きな家具は、地震対策で固定が必要ですし(力が必要)、物をとるために高いところに手を伸ばさないといけないし(危険)、処分するのも大変ですので(体力、判断力、気力が必要)、中の物を把握されていないなら、処分しても問題ないと思います。むしろ60代で処分できなかったら、死ぬまで処分できないと思います。晩年に介護などで福祉用具が必要になった時にもともとお持ちの家具を減らすことができる方はほとんどいません。既存の家具がある場所にそのまま新たに介護用の福祉用具が持ち込まれています。悲惨です。

③オープンな浅い収納にする                          ①と理由はかぶるのですが、記憶力がなくなってくると、奥にあるもの、扉の中の物はないものになってしまいます。認知症になった方が、ご自身で着替えができるようにと考えた収納は、箪笥でもなくハンガーラックでもなく、奥行きの浅い棚にそのまま並べる収納でした。お客様が入るスペースは扉をつけておいた方がいいと思いますが、プライベートスペースの収納は全てが見渡せるオープン収納がよいです。押し入れ、箪笥があるのに、普段着る服を鴨居にかけている方いませんか?奥に入れた消耗品のストックの数を把握できなくなってあるのに追加で買ってしまっていませんか?健康な時には気にもしなかった、扉を開けるという動作もおっくうになってくるのです。備え付けの収納であれば扉を取ってしまうのもありだと思います。また、今は扉を付けておきたいという場合は、着脱可能な扉もあります。また、扉のない収納は前に手すりをつけることが可能です。扉の取っ手など不安定なものを頼りに歩行される方が多いため、この案を提案することがありますが、今まで扉のあったものを外すというのは抵抗される方が多いです。その点置き家具は配置換えしやすいことがメリットですが、こちらも抵抗される方が多いです。そのため、話は最初に戻りますが、やはり持ち物を減らすことは必須条件です。



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