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幸せは歩いてこない/住野よる「また、同じ夢を見ていた」

「いいか、人生とは、自分で書いた物語だ。
 推敲と添削、自分次第で、ハッピーエンドに書きかえられる」(南さん)


「また、同じ夢を見ていた」は、「君の膵臓をたべたい」の著者、住野よるさんの第二作目です。
「君の膵臓をたべたい」は映画化もされ、若い世代を中心に大人気となりました。

今作は、おませな小学生・奈ノ花と、三人の女性たちの不思議な交流を描いた小説です。奈ノ花は、国語の授業で「幸せとはなにか」について発表をすることになり、彼女たちにアドバイスをもらいながら、幸せについて考えていきます。

この本はこんな人におすすめ

①あたたかな読後感の小説が好きな人
②人生に行き詰まっているように感じている人
③幼い頃の純粋さを思い出したい人

 それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います。

*不思議な登場人物たち

奈ノ花は物語の中で、三人の女性たちに出会います。
猫を助けたのがきっかけで出会った、格好いいアバズレさん。
物語を書いている、手首に傷がある南さん。
美味しいお菓子をふるまってくれる、一人暮らしのおばあちゃん。
彼女たちはそれぞれ、奈ノ花に人生について、幸せについて話し、アドバイスをし、時に厳しく奈ノ花を正しい方向へと導きます。
三人ともこんな年上の女性が周りにいたらいいな、と思うような素敵な人たちですが、読み進めるうちに彼女たちは何者なんだろう、という疑問が浮かんできます。

 *人生とは……

これは、奈ノ花の口癖です。小学生らしからぬ物言いですが、子供だからこその純粋な視点で人生について話しています。
この言葉は、物語の要所要所で他の登場人物たちも口にするので要チェックです。
私が特に好きなのは、奈ノ花のこの言葉です。

「人生はプリンみたいなものってことね」

プリンを食べる時は、ついつい思い出してしまいます。

*幸せとは……

奈ノ花は、国語の授業で幸せについて発表をすることになり、アバズレさん、おばあちゃん、南さんとの交流の中で、答えを探そうとします。物語の中には、「幸せとはなんなのか」という問いへの答えが散りばめられており、自分なりの答えを考えずにはいられません。
やや哲学的な面もありますが、奈ノ花の視点から綴られていくので読みやすく、柔らかで穏やかな空気がただよっています。


本作はコミカライズもされているので、そちらも是非チェックしてみて下さい。


こんなに何度も読み返したくなる小説って、あまりないのではないでしょうか?
前作の「君の膵臓をたべたい」も感動しましたが、こちらのほうがあたたかく爽やかな読後感で、個人的には好きです。
是非、リアルな日常と不思議の狭間で揺れる、独特で優しい世界を堪能して下さい、ぴょん!


(2021年4月11日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

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