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8月12日の新聞1面のコラムたち

 読売新聞『編集手帳』で「黙れ事件」なるものを知りました。日本が戦時体制に向かっていた1938年のこと。政府による人的・物的資源の統制を可能にする国家総動員法案の衆院での審議中、長広舌をふるっていた陸軍の説明員がヤジを飛ばした議員を「黙れ」と一喝した事件。どなられたのは陸軍出身でありながら軍の政治介入に批判的だった宮脇長吉でした。軍による議会軽視の象徴として歴史に残る事件です。軍によるものではないにせよ、議会が軽視されているのは今も変わらないように思うのですが、どんなもんでしょう。

 8月は戦時中のことを振り返る記事が多いです。子供の頃は辛気臭くてなんとも嫌なものでしたが、今年は戦後77年。77年前に生まれた人が77歳です。当然、この人たちは戦時中のことを記憶してはいないでしょう。記憶している人となると、もう85歳以上とか、そのくらい高齢の方に限られます。もう、私たちが子供の頃のように、戦争の話ばかりしたがるおじいちゃんおばあちゃんもほんとに少なくなりました。戦争の悲惨さを語り継ぐことができなくなり、再び戦争が起こるようでは悲しい。戦争は絶対にやってはならないことなのだという大前提を繰り返し繰り返し思い出していかなければなりません。私たちはすぐに忘れてしまいますから、せめて毎年8月にくらいは、思い出さねばなりません。

 朝日新聞『天声人語』では「地元民ガチャ」というのを知りました。紹介されていたのは青森県外ケ浜町にある、町内の店の看板など、住民ならすぐにピンとくる品々。そんなご当地ならではの「ガチャ」で地域が活性されれば面白いですね。近頃「ガチャ」は否定的意味でよく使われるようになりました。よく知られる「親ガチャ」から派生したのか、近頃は若者の運命が政治で決まるという「国ガチャ」もあるみたいですが、これはひょっとすると『天声人語』の造語なのかもしれません。と思って検索してみたら、ちゃんと定着している言葉でした。無知を棚にあげてごめんなさい。『天声人語』にも書いていますが、本来「何が出てくるかな」とワクワクするものなのに諦念や閉塞の代名詞になっているのが悲しい。

 産経新聞『産経抄』では中国外務省の報道官のツイートを紹介していました。「台北には38店の山東餃子館と67店の山西刀麺店がある。味覚は嘘をつかない。台湾は常に中国の一部だ。長い間、道に迷った子供もやがては家に帰る」。これに対する元米国務省報道官の辛辣なツイートも紹介されています。「中国には8500店のケンタッキーフライドチキンがある。中国は常にケンタッキー州の一つだ」。ツイッターでは、至るところでこのような小競り合いが繰り広げられています。それぞれの支持者がそれぞれのツイートを賞賛し、相手のツイートを非難します。訳知り顔で「もうケンカはやめようよ」と仲介に入る人は、ここでは必要とされないのです。このような本当に些細な摩擦がやがて大きな炎上を生み、現実の世界でも惨事を招きはしないか心配してしまいます。摩擦だって本来は気持ちいいもののはずなのに。

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