見出し画像

読書の記録 万城目学『鴨川ホルモー』

 職場に万城目学さんが来られた。新刊『八月の御所グラウンド』発売のタイミングだった。まだ暑い暑い京都にやってきた万城目さんはどこか飄々としており、廊下でお会いした際、「どうも万城目学です」とこんな私にちゃんと挨拶してくださった。当たり前のことかもしれないが、その当たり前のことをしない人だっている。偉い人には挨拶するのに偉くない人には挨拶しない人もいる。挨拶してくださった万城目さんとのファーストコンタクトで私は、ちゃんとこの方の他の作品も読まねばならないと思った。恥ずかしながら新刊の『八月の御所グラウンド』しか読んでいなかったのだ。

 『鴨川ホルモー』は万城目さんのデビュー作であり、映画化もされた人気作だからご存じの方も多いと思うが私は原作にも映画にも触れておらず、というのも、なんとなく京都を舞台にして面白い創作をしている人が悔しかったんである。しかし、そんなつまらない私の意地なんて本当につまらないものなのだと知る。こんなに面白いものを遠ざけて生きていた私はどれだけアホなんだろう。

 『鴨川ホルモー』の主人公たる安倍も相当アホである。新歓コンパで一目惚れした早良さんに電話番号を聞くことさえできず、こちらからアクションしないうちに同じサークルの芦屋っていう嫌な奴と早良さんは付き合ってしまう。この芦屋の野郎がイケメンなもんだから私も腹立たしくてならない。おーい、安倍よ、おまえもっと頑張れよ!アホ!と、ついつい背中を押してやりたくなる安倍が、いつしか成長を遂げていく姿に私も二十年前に戻ってもう一度、やり直したいことをいろいろ思い出してしまった。青春って密なんです。
 個人的には万城目さん、絶対三国志好きなんやろな、と思ったことが的中したから、せっかくお会いできたのに少しは三国志の話もしたかったな。こうやっていつも後悔は先に立たない。私もまだ今から成長できるかな。安倍みたいに。

#読書 #読書の記録 #万城目学 #鴨川ホルモー
#令和5年読書の記録 #読書感想文

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?