小山あざみ

首都圏在住。著述・編集業。映画、アニメ、漫画、文芸、社会。小説を投稿する以外には、主に…

小山あざみ

首都圏在住。著述・編集業。映画、アニメ、漫画、文芸、社会。小説を投稿する以外には、主に学生時代の出来事をつづっていきます。

最近の記事

【ネタバレなし】「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」に思う

 「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を見てきた。公開初日、朝7時から上映している劇場があり、初回に鑑賞した。以下、極力ネタバレを避けて書きますが、「まったく何も知りたくない」という方は本編をご覧になってからお読みください。  結論から言うと、傑作だった。ネット上には今作の展開について予想した文章や動画が溢れているが、少なくとも自分が見た範囲では、いずれも実際とは異なっていた。四半世紀にわたるファンとして、まさかこういう結末だとは、と驚く一方、いい終わり方だったな、とも感

    • かけがえのない旧友について

       ライダースーツを着て、モトクロスのバイクに乗りながら、いつも洋モクをふかしている。身長百七十センチ、短髪で、皮肉屋で、困ったことに美人——。同じ大学に通っていた友人は、そんな女性だった。  彼女とどういう経緯で知り合ったのか、よく思い出せない。気が付くと、なんとなく仲間の輪にいた。とはいえ、やさぐれた猫のような性格だから、いつも一緒というわけでもない。ふらりと姿を現して、気まぐれに話をまぜっかえし、たまに皮肉が過ぎてその場を凍らせる。  そんな彼女が、別の学部の先輩に片

      • あけましておめでとうございます

        なんだか年末年始な感じがしないですが、年が明けました。 あけましておめでとうございます。 いろいろバタバタしたり病気になったりで、投稿が滞りがちになってしまっています。 今年もマイペースで書いていこうと思います。 みなさんにとって、素敵な1年でありますように。

        • 「鬼滅の刃」と「ヤマト」と「エヴァ」

           今さらだが「鬼滅の刃」の最終巻(23巻)を読んだ。未読の人もいるだろうから、以下、なるべくネタバレを避けて、感じたことを書こうと思う。  最終巻は半ばまで、かなり凄惨なストーリーが続く。読んでいるのがいたたまれなくなるほどだ。ただ、中盤以降に劇的な展開があり、鬼狩りの話は終結する。これで終わりかと思ったら、そこから思わぬパートが始まり、さらに感動的なエピローグにつながっていく。  私は漫画ではなく深夜アニメから「鬼滅」に入った。それまでは「週刊少年ジャンプ」の連載(20

        【ネタバレなし】「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」に思う

          「書籍化」が祝福される理由について

           事情があって、しばらくツイッターの「小説垢」と呼ばれるアカウントをつぶさに観察していた。「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」といったウェブサイトに、自作小説を投稿している人たちのアカウントだ。ツイートは自作の宣伝が中心になる。「○○の第○話を更新しました。ぜひお読み下さい」といった内容だ。サイト上の小説は無料で読める。  2004年に開設された「小説家になろう」には現在、77万以上の作品が掲載されており、「作品登録ユーザー数」は200万人に迫る(この数字は、登

          「書籍化」が祝福される理由について

          雑談と、銭湯と、noteという居場所

           たいしたことをしているわけでもないのに、日々、なんだかせわしなく、noteの更新がおろそかになっている。にもかかわらず、毎日何人かの方がページを訪れ、たまに以前の投稿に「スキ」まで押してくださる。noteは不思議で優しいプラットフォームだなあ、としみじみ思う。瞬発力が重要で、秒単位で膨大なコンテンツが消費され続けるツイッターとは、時間の流れがまるで異なる。誰かに悪口を言われることも、論争になることもない(少なくとも私は一度も経験していない)。なんだか、古くからある喫茶店のよ

          雑談と、銭湯と、noteという居場所

          結婚の日、駅前でのキスシーン

           駅に続くエスカレーターをのぼりかけ、右隣に彼の気配を失って、後ろを振り向いた。ペデストリアンデッキの突端で、彼は彼女とキスをしていた。一瞬、声を失った。彼女がドレスをまとっていたのが理由の一つ。もう一つは、かなり普通じゃない場面なのに、そのキスシーンが、まるで絵に描いたように美しかったからだ。  もうだいぶ昔のことだ。その日、大学時代の友人だった彼と私は、結婚式の二次会に招待されていた。都心にある瀟洒(しょうしゃ)なホテル。挙式と披露宴を終えた新郎新婦は、上品な装飾の施さ

          結婚の日、駅前でのキスシーン

          私たちの「俺ガイル」の行方

           アニメ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」が先日、最終回を迎えた。通称「俺ガイル」。渡航(わたりわたる)さんのラノベが原作(全17巻)で、2013年から3期にわたってアニメ化された。とりわけ2、3期を手がけた制作会社フィールの作画が美しく、声優陣の演技も素晴らしくて、ずっと楽しみに視聴してきた。  「俺ガイル」の舞台は千葉市の公立高校だ。主要な登場人物は主人公の比企谷八幡、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣の「奉仕部」3人。「青春とは嘘であり、悪である」と公言してはばから

          私たちの「俺ガイル」の行方

          手編みのマフラーの思い出

           「いったい、どういうつもりなんですか、先輩!」  何人かの女子が、一つ上の先輩に詰め寄っている。ある秋の放課後、通っていた高校の一室。いったい何が起きたんだろう。私は少し離れた椅子に腰掛け、無関心を装いつつ、耳をそばだてた。  「俺、マフラー欲しいだなんて、あの子に言っていないぜ」  「つきあっている彼女には言ったんですか?」  「……いやまあ、それっぽいことは言った、かもしれない」  「だったら、なおさら、あの子から受け取るべきじゃないでしょう! 結局、先輩は、彼女も

          手編みのマフラーの思い出

          漫画「ハイポジ」――カセットテープとウォークマンの記憶

           漫画「ハイポジ」がテレビドラマ化されていたことを、偶然見かけたネットの記事で知った。原作は2017~2018年に「漫画アクション」で連載されていた。私にとっては、定食屋さんかラーメン屋さんで、たまたまあった雑誌をめくり、作品に触れたのが最初だったと思う。その一話を面白いなあ、と思いながら、連載できちんと追いかけず、完結後に単行本(全5巻)でまとめて読んだ。  大好きな作品なのに、なんでドラマ化を見逃したのだろう。検索してみて、ああそうか、と納得した。放映は2020年1月か

          漫画「ハイポジ」――カセットテープとウォークマンの記憶

          矢田亜希子さんと「街頭キャッチ」

           残暑が厳しく、遅く目覚めて、自宅でぼんやりテレビを見ていた。都内を散歩する番組のゲストに、矢田亜希子さんが出演している。ロケ地は渋谷周辺だ。矢田さんは原宿でスカウトされたという。  デビューしたのは高校時代の1995年。ドラマ「愛していると言ってくれ」で、豊川悦司さん演じる聴覚障害者の画家の妹役だったそうだ。このドラマはリアルタイムで見た。でも、ぜんぜん、矢田さんの印象がない。散歩番組には途中、ドラマに出演した頃の、矢田さんの写真が挿入されていた。ルーズソックスを履き、頭

          矢田亜希子さんと「街頭キャッチ」

          平手打ちの蹉跌

           高校時代、美人で勝ち気な友だちがいた。もうずいぶん昔のことだから、どういう経緯があったのか、細かくは思い出せないけれど、ある日の放課後、階段を上がった踊り場で、彼女と彼が言い争いをしていた。交際中の2人がこじれている、とは聞いていた。見ちゃいけないとは思いつつ、気になって、少し離れた教室から、ちらちらと様子をうかがっていた。  突然、パーンと乾いた音がした。彼が彼女を平手打ちしたのだ。もちろん、手加減はしたのだろうけど、人気(ひとけ)の少ない廊下に、その音はよく響いた。私

          平手打ちの蹉跌

          「ミサトと加持」への憧憬――「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」を考える

           感染症で今年6月の公開が延期になった「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の最終作をめぐり、あるウェブサイトに「【新エヴァ】ミサトと加持の “深い仲” こそが人間のリアルだったのに…描写がカットされていた件」と題する記事がアップされていた。エヴァについては以前にも書いたが、ざっとおさらいすると、1995~96年にテレビ版(全26話)が放映され、物議を醸した第弐拾伍話と最終話がリメイクされた1997年夏の劇場版で、一度完結した。  サイトのタイトルにある「ミサト」とは主要な登場人物の

          「ミサトと加持」への憧憬――「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」を考える

          白い煙のアイスコーヒー

           高校時代、夏休みにもほとんど学校に通った。夏が終わると、すぐに文化祭があったからだ。私たち生徒会や文化祭実行委員会のメンバーは、夏休みが準備の追い込み期間になる。  当時はまだ、炎天下で体を動かす運動部でさえ、「部活の途中で水を飲んではいけません」と顧問たちから厳しく指導されていた。いまから思えば、よく熱中症で死人が出なかったものだと思う。それとも、単に報じられなかっただけなのだろうか。いや、そもそも夏そのものが、ここまで暑くなかったような記憶がある。体感的にはこの数十年

          白い煙のアイスコーヒー

          浅倉南の40年――「タッチ」が全話、無料公開中

           あだち充さんの人気漫画「タッチ」が、きょうから全話、無料公開されている。17日までの期間限定だそうだ。  「週刊少年サンデー」で「タッチ」が連載されたのは、1981年から86年まで。私の小学校の終わり~高校時代にあたる。「タッチ」が始まった頃、少年漫画誌で人気だったのは「ジャンプ」と「チャンピオン」だった。「チャンピオン」については以前、「気分はグルービー」を取り上げた投稿で書いたけれど、「ちょっと大人でシニカル」な連載が充実していた。  対する「ジャンプ」はこの時期、

          浅倉南の40年――「タッチ」が全話、無料公開中

          真夜中のおふろ屋さん

           深夜、銭湯に行ってきた。私の自宅の周囲には、まだいくつかおふろ屋さんが残っている。思い立ったのが遅くなり、きょうは隣街まで足を伸ばした。ここの銭湯は、25時まで営業している。  少し気温の下がった夜道を歩く。感染症対策で、自治体から要請が出ているためか、商店街は静まり返っていた。コンビニの明かりをみて、なんだかホッとする。そのコンビニにも客はまばらだ。店の軒先に座り込んで夜な夜なだべる、「夏の風物詩」の高校生や大学生も見かけない。誰かエラい人が言っていたけれど、今年は本当

          真夜中のおふろ屋さん