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「役員のスケジュールが取れない」せいで採用し損ねた企業の話

転職エージェントの仕事をするまでは知りませんでしたが、実は転職活動においてスケジューリングは相当重要です。スケジュール次第で、転職先が左右される例がかなり多くあります。


業界大手のZ社は、これまで新卒採用が中心で、加えてグループ親会社からの異動で人員をまかなってきたので、中途採用はあまりやってこなかったとのこと。私にとっては今回が初めての求人依頼でした。

そんななかなか応募者Aさんの評価が高く、一次面接を通過しました。これまでの応募者はすべて一次面接でお見送りとなっていたので、企業としても初めての一次合格者に期待感がとても高かったです。
二次面接の面接官はZ社社長で、これが最終選考になるということでした。基本的には一次面接官の現場部長の判断を優先する方針らしく、よっぽどでない限りは不合格にしないような気配で、あくまで約束はできないもののそこそこ合格率は高そうな様子。

AさんもZ社への意欲は高く第一志望。ただし、他に複数社で選考が進んでいるということでした。

さて二次面接の結果は見事合格。さあこれで内定かなと思ったら企業から「すみません、もう1回だけ面接をお願いします。親会社の人事役員の面接が要るみたいです」とのこと。

この時点で転職エージェントの立場としては、少し警戒します。というのも、面接回数が1回増えるということはそれだけ内定が出るまでに時間がかかることになります。その間に知人経由で1回面接でポンと内定が出ることもあれば、ダメ元で応募していた企業から思わぬ高評価を得られることもあります。とにかく、Z社から気持ちが離れる要因が発生しうるわけです。

転職エージェントの私の立場としては、あくまでZ社に転職決定してもらわないと売上にはなりません。そのために、他の経路で応募している企業を悪く言うつもりは一切ありませんが、少なくとも元々第一志望にしてもらっていたわけなので、Z社をスムーズに選んでもらえるように状況を整えることも大事な仕事なのです。

ここで、Aさんからも相談が入ります。「他社で内定が出ていて、回答期限が1週間後だそうです。Z社は1週間以内に面接できそうですか?」
ただ、これ転職エージェントとしては確たることは言えません。Aさんもわかった上で聞いてくれているので、こんな回答をしました。「確実なことは言えませんが、これまでの企業のスピード感からするとおそらく面接実施はできるかと思います。ほかに内定があるというご事情をお伝えして、なるべく急いでもらうようにしますね」。ちなみに、もしこの時点で私が、スケジュール的に難しそうだと言えば、Aさんはそれならもう残念だけどZ社は諦めて他社にしようかなと、と気持ちが離れてしまう可能性があります。転職活動において一度離れた気持ちはまず戻ってこないので、私はなんとか繋ぎ止めます。

このあとはひたすらZ社にプッシュです。早く面接を組んでくれ、いつになったら組めそうか、と。ただ、人事窓口が言う期日になっても全然面接の連絡が届きません。

そうこうしてる間に、Aさんが言う他社の内定回答期日になってしまいました。そんなときようやくZ社から連絡が来ました。

「役員のスケジュールが合わず、来週だとご都合どうでしょうか?」

何を悠長な。。。
さっさと面接しないと他社に行っちゃうよと再三伝えているにも関わらず、なんでそんな提案ができるのか。。

ちなみに採用にちゃんと力が入れられている企業では、こういうときにも臨機応変に急ぐことができます。それだけ、採用をすることは難しいし優先度を上げるべきことだという認識があるからです。また、書類選考や面接を通じて、現場のほうで時間と労力をかけてやっと上がってきた希少な候補者だという理解もあります。それを、役員やその周りがゆったり構えてふいにすることは大きな損失だとわかっています。

結果的にAさんからは、他社に決めました、と連絡がありました。

転職エージェントの立場で、できることがあったとすれば、いかにスケジュールが大事で、それによって採用し逃すこともあると企業に啓蒙することだったかもしれません。でも、外部の業者が何か言ったところで、役員への接し方にまで何か変化を生み出せたかはどうでしょう。

このあとZ社に、Aさんが辞退になった件も伝えましたが、「そうですか」くらいの反応で残念がる様子も弱かったです。

いやー、最初からAさんの志望度も高くないならここまで悔しくはなかったでしょうが、志望度が高かっただけに、うまく入社まで導いてあげたかったなぁと思います。
Z社が私ほど悔しがっていないことがまたなんとも悔しかったです。

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