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フォトレシピのコンテキストデータからAIをつくる

デジカメがAI技術によって、よりインテリジェントでクリエイティブなものになっていくことや、それによってUIに大きな変化がおきることは、これまでの記事で何度か書いてきましたが、今回はそのAIがどのように作られるのかについて考えてみたいと思います。

AIの学習に必要なもの

現在は比較的単純なデータを大量に用意し、ディープラーニング(深層学習)という技術で、その中からパターンを学習し、認識能力を実現する方法がブームになっています。

例えば犬の写真を大量に用意し学習させれば、「イヌ」という言葉の概念の範囲(幅)を、かなり正確に判断し、さまざまな犬を「イヌ」と認識できるようになります。

多くの写真を扱うことができるSNSやフォトサービスでは、写真へのタイトル付け、タグ付け、記事付けをユーザーがするようにUX/UIを設計してあります。そのデータを使うことで画像認識が高度化しサービスの充実だけでなく、新たなビジネスに展開することができるためです。

写真と同様に、音声や翻訳などでも、多くの人が利用するほどシステムの能力が拡大し、さらに多くのユーザーが利用するようにビジネスモデルを組んでいます。

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これらの話から今後のAIの成長に重要な2つの方向が見えてきます。

一つは、大量にデータが集める仕組み。 もう一つが、豊かな関連情報と繋げる仕組みです。

大量にデータを集める方法は、多くのユーザーに多くの活動をしてもらうことが考えられますが、関連情報はどのように集めれば良いのでしょうか。

関連情報とは、因果関係、5W1H、起承転結、ビフォーアフターのようにお互いに関係をもった「コンテキスト(文脈)データ」のことを指します。

シンプルな情報を単独で集めても関連情報を持ったデータにはなりません。共通の時間や場所、一連の活動の多面的なデータなど、データを結び付ける「軸」を意識して、関連が切れないように集めなければなりません。

そのため、データにするのにも(ユーザーの手間も含めて)コストがかかりますので、ユーザーがコンテキストデータを作り出すのを喜んで実行できるようにするUX/UIの設計がとても重要になります。

定量データと定性データ

アンケートやシンプルなセンサーが得られる情報を「定量データ」、ユーザーインタビュー、ユーザビリティテストで得られる情報を「定性データ」と言うそうです。「質より量、量より質」みたいなことだと私は理解しています。

この言葉を強く意識したのは、「ユーザビリティテストで何人の協力者がいれば妥当性のある評価ができるか」という課題を考えているときでした。

例えば、ユーザーインタビューで単純に商品の色の好みを聞く場合には、定量的であった方が良いですが、「なぜ」をより深く聞き出すデプスインタビューの場合には、文脈的にユーザーの思考が見えてくるので、数が多くなく代表的なパターンは見えてくるというものです。

ユーザビリティテストでも同様で、いろいろなところでつまづく人が出てきますが、その理由や概念モデルを聞くことができ、定性的なデータが取れれば十分に評価ができるというもので、文脈的な「定性データ」の威力を感じることができました。


コンテキストデータを学習できるAI

そこで考えたのが、定性データを文脈パターンで理解できるAIという方向です。

深層学習と同じように、大量のコンテキストデータを学習させれば、もしかしたら可能になるかもしれません。

そのAIを使えば、ユーザーの利用状況を理解し、利用文脈に寄り添ったより使いやすいUI、楽しいUIが作れるかもしれません。

さらに、そのAIがそのまま製品UIとなって、やさしくユーザーをサポートすることだってできます。


「フォトレシピ」はコンテキストデータの宝庫

フォトレシピを作ること・使うことがユーザーの撮影UXの楽しさにつながることは何度か記事に書いてきましたが、それは短期的な目的と考えることができます。

中・長期的にみれば、データを利用してAIを学習させ、より進化したカメラやサービスを提供しユーザーにフィードバックしていくことが価値の中心になってきます。

この二重構造モデルは多くの分野で採用されているもので、日常の価値をきちんと提供することで、持続性のある長期サービスを実現していこうというものです。

フォトレシピは、「画像データ」、「カメラ設定データ」、「撮影状況・環境データ」、「撮影ノウハウや撮影者の想い」が一つになったものです。

つまり、非常に豊かなコンテキストを持っています。

フォトレシピを作ったり、使ったりすることが楽しければ、大量のレシピが公開され、利用されることになります。

また量だけでなく、あっと驚く写真を撮ったり、写真について熱く語ったり、質の高いレシピが作られるようにすることも重要です。

(この辺りの事情がnoteやクックパッドと似ており、サービスとユーザーの関係やUXデザインを参考にさせてもらいたいと思っています)

先ほど書いたように、関連情報を持った上質なデータを作るのは大きなコストがかかりますが、人生の価値、社会とのつながりの価値の大きさを背景に持つ「写真」だからこそ、その手間を掛けてもらえる可能性があると考えているのです。

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