おいしい珈琲をどうぞ

カフェ好きな私にとって、気になるお店に出会えることは都会で生活する人の特権だと気づいたのは、車移動が当たり前の生活するようになってからのことだった。

ここでいう気になるお店とは、食べログで美味しいかどうかを調べたり、インスタで素敵カフェを検索して見つけて、わざわざ時間をつくって、そこに行くことが目的になったお店ではない。

例えば、予定が早く終わった時にふと見つけたとか、いつも通らない道を歩いていたらなんとなく目に入ってきたとか、そんな風に意図せずして出会うお店のことだ。

名古屋の栄で働いていた12月のある日。思いがけずできた隙間時間を使って、私はいきつけの洋服屋さんに行き、せっかくだからと少し回り道をして職場に戻ろうとしていた。

その途中、「美味しい珈琲をどうぞ」と書いてある年季の入った看板が置いてあるお店がとても気になった。中の様子はあまりよく見えない、白い壁に黒い重たそうな扉の店だった。お店の佇まいと自分の直感だけを頼りにお店に入るのはちょっと勇気がいる。

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本当に美味しいコーヒーなの?お値段はどのくらい?
そもそもコーヒーそんなに好きじゃないわ…他に飲み物あるのかな?
小腹が空いちゃったな、食べれるものもあるかな?
働いているのはどんな人だろう?

いろいろ頭の中で考えて、でもやっぱり気になるから入ってみるのだった。コーヒーが飲みたいから、じゃなくてこのお店何?という好奇心が勝った。

結論をいうと、そのお店は喫茶店だった。二人掛けのテーブルが2つと店内奥にテーブル席が2つ、そんな感じ。コーヒー以外にもカフェラテなどもあったし、ケーキも数種類置いていた。白髪の似合うマスターは、寡黙というよりは気さくで、ガトーショコラが食べたいと伝えるとおすすめのコーヒーを選んで、淹れてくれた。

その日はそのまま、一緒に働く仲間へのクリスマスカードにメッセージを書いたのだった。職場の休憩室で書くより、きっとずっと良かった。

まるで秘密基地を見つけたような気持ちだった。ウェブにある情報に頼らず見つけた、私の感性で選んだお店はなんだか特別に思えた。今度は恋人や友達、大切な人と今度は一緒に連れてこようとその日に思い、実際に後日、何度か訪れた。

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家と職場を最短距離で往復しながら、スマホで効率的に、魅力的で間違いないカフェを見つけていくのも楽しいことは知っている。

でも、いつかまた、3歩歩けばカフェに当たるような都会で生活することがあれば、自分の足で歩きながら、ふらりとカフェに入る体験をもう少ししてみたい。


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