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2023年J2第36節 ファジアーノ岡山 - ジュビロ磐田 マッチレビュー

現地観戦した一戦。
磐田目線で主に前半を振り返ります。

先発

岡山3-1-4-2 磐田4-2-3-1

岡山は複数の選手が体調不良で離脱していたが、この試合で復帰。
磐田は主将であり精神的支柱の山田が先発復帰。

前半

キックオフ後、まずは磐田のボール非保持×岡山のボール保持、磐田のプレッシングの形に目がいった。

磐田は前節の山口戦へもアンカーの居る相手を想定してトレーニングを重ねていた。(実際には山口はダブルボランチだった)

今節の岡山はアンカーの存在する相手。磐田は、この2週間のトレーニングと、この1週間のスカウティングが見て取れるプレッシングを披露したと思われました。

図を確認いただきたい。

アンカーを消してサイドへ追い込む磐田

磐田は非保持4-4-1-1を基準に、まずはアンカーの輪笠を山田が見ることを約束事に。

そして岡山の左右のセンターバックにパスが出るタイミングをスイッチにサイドハーフが前にプレッシング。連動してサイドバックがウイングバックへスライドする。

岡山のインサイドハーフは磐田のボランチがMFのラインを形成しつつ監視。

この連動でボールサイドへロックをかけた。

ここで怖いのは4人目のインサイドMFとして岡山のツートップの一角(特に坂本)がアンニュイな立ち位置に降りてくることだが、序盤は磐田の2CBの迎撃が間に合っていた。

すると、このプレッシングが結実する。
6分の磐田の先制ゴールだ。

この用意したプレッシングからボールを奪ってのカウンター。

スタンドで私は超ガッツポーズでした。
トレーニングから作ってきたものを試合でそのまま披露して奪えた得点だと分かったからです。一介のブロガーとしては、この上ない喜びでした!

チームスタッフの準備が結実したファインゴール。

変わって
磐田のボール保持×岡山ボール非保持をみていくと、
アンカーの脇を磐田は上手に使っていったことが分かる。

ジャーメインが背後への動きを見せることによって最終ラインを下げ留める。

岡山も敵陣ハーフコートでプレーしたいため、前からプレッシングを試みるが結果的に陣形が間延びしていた。

大まかな状況は下図の通り。

岡山の中盤にはスペースが生まれていた

岡山の非保持は5バックからボールサイドのウイングバックを押し出して、残りの4人でライン形成しつつ、一時的に変則的な4-4-2に可変する形を採用していたと思われる。

ウイングバック片上げの岡山

磐田としてはジャーメインが裏抜けでもポストでもボールをキープして、チームの陣地を押し上げたことが大きかった。柳相手にも空中戦でタフに対応。

ジャーメイン1人で1~3人引き連れるので、必然的に岡山の中盤が空く。

磐田はワンタッチで剥がして、左サイドへの解放→クロスがメインのペナルティエリアへの主な侵入方法に。

30分過ぎまでは、ビルドアップの凡ミスから坂本が決めきれなかったシーン以外は完全に磐田が試合を支配していたと思います。ここで追加点を奪いたかった。
※現在の磐田はビルドアップに関しては未整備の部分が大きい

特筆すべきは磐田の選手達のトランジション時の個々のパフォーマンス

ボールロストした瞬間にボールホルダーを必ず捕まえ直す。最悪はファールでも止める。

この粘っこい個人戦術にはスタンドで感嘆しました。磐田が今シーズンずっと積み上げてきたものです。

球際のデュエルを先導していたドゥドゥにはメインスタンドで驚きの声が漏れていたと思いますし、開幕戦とは違う磐田を岡山の皆さんにもお見せ出来たと思います。

それだけ、この三十数分は磐田にとって非常に価値のある、確かな実力を証明した時間帯でした。

残り十数分のところで、磐田はやや重心が下がり、ブロックを形成するか
もしくは、ネガティブな意味でボールを持たされるシーンが増加します。

岡山のイレブンの中で立ち位置の噛み合わせの認知がピッチ内で共有されてきたことで、岡山のボール非保持が安定傾向に。

そしてアウェイでの高い気温で、且つ四か月振りのデイゲームで磐田のテンションが落ちたか。
磐田SHが岡山の左右のCBへのプレッシングを自重し、2TOPへ受け渡しをすることが多くなった。もしかしたら山田がピッチ内で指示を出していた可能性もある。

岡山は磐田のサイドバックが前にスライドする瞬間に、そのサイドバックの裏をインサイドハーフが狙うことで、磐田の陣形を崩してくる。

図で確認いただきたい。

2TOPへの直接アクセスのルート作り

磐田のトップ下+2DHが岡山のアンカー+2IHへのマンツーマーキングの意識が高いことを逆手に利用した岡山の狙い。

磐田の2DHが人を見つつエリアを守るゾーン守備の意識が希薄になってしまう現象。

これが岡山の36分の同点ゴールとなって現れた。

磐田としては自陣では4-4-2を維持したブロッキングを作りたかった場面になりました。
各々の受け渡しが、オールコートマンツーマンの様になってしまい、ゴールを守るのではなく、完全に人を守ってしまいました。特に松本が混乱してしまった。
初手の対応が真面目過ぎたか。左右のCBにはSHが行くという意識が働き過ぎた。むしろここはステイだったか。

敵陣でのプレッシングでは先制点として功を奏したが、自陣では、逆の作用として失点を産み出した磐田のスカウティングからのプレッシングの約束。これだからサッカーは様々な要素が絡み合うは複雑なスポーツだよなと。改めて面白いなと思わされた。

この試合の噛み合わせの肝として岡山の2TOPと磐田の2CBが常に1vs1だったこと、この刃を常にかざしていたことを、ようやく岡山が上手く使えたシーンになりました。

チアゴ・アウベスをグラッサが封殺していたが、ここまで対人では耐えていた伊藤槙人も前に入られてしまいました。

磐田はセンターバックをフォローアップするやり方を取っていない、取れないやり方になっているだけに、たった一度の球際の攻防が命取りになってしまった。

最後が伊藤槙人だっただけで、チームとしてのゴールの守り方、個々の立ち位置のエラー、球際の敗北が重なった。

岡山の鈴木喜丈と高橋のパスワークの練度の高さも素晴らしかった。

横内監督もこの場面以外では、前半のディフェンスに手応えを感じていたようです。

――1失点目を喫したときの守りについて
3枚のセンターバックが持ち出してくるということについても、しっかり準備はしていました。例えば出された後に必ず走ってくるというのは準備していましたし、そこでしっかり対応しようとしましたが、上手く内側に入られて、内側を走られてしまったなと。我々としては難しくしてしまったなという印象です。ただ、それ以外のところでは、一度我々のサイドをドリブルで突破されたシーンがありましたが、想定したことは随分できたかなという前半ではありました。

磐田公式

同点に追い付いたことで、岡山がテンションを上げて前ベクトルで試合を進めます。

磐田はビルドアップの出口を見出だせず、
CBが近くのSBやGKに早くつけるシーンが増える。それがさらに出口を狭くするプレー選択だが…。

爆弾ゲームの様な磐田のビルドアップ

ほどなくして前半終了。
1-1

後半

大きなオーガナイズの変更はなく試合が進む。

後半は途中投入の選手の特徴が試合に濃く現れた。

岡山にとっては56分に投入されたルカオ。
磐田にとっては59分に投入された古川。

この二人が後半を彩りました。

ルカオは伊藤槙人の前後でポストプレーで起点を作る。
ここで深さを取れる分、岡山の交代カードはインサイドで持ち味を発揮出来る選手を次々と投入することが出来た。

伊藤槙人としてもキャラクターの違う選手の2人、坂本→ルカオを90分見なければならなかった。
前述の通り、周りの選手のフォローアップ(サンド等)はあまりない。彼にとっては苦難の試合になりました。

対して磐田の古川は、ワイドレーンからの単独突破を求められるいつものタスク。
松原はワイドレーンを古川へ渡し、インサイドレーンを意識しつつ、古川から離れる。

磐田の左サイドはハーフレーンを使うのが、そもそも選手のキャラクター(ボディアングルが分かりやすい)からして苦手な組み合わせでスタートしているので、時計の針が進むに連れてカオスなバランスになる。

これを試合途中でハッキリとさせた。

とは言え、人数的な貯金を産み出してからのアイソレーションドリブルと言うよりは、古川にビルドアップの負債をお任せした状況での1on1もしくは1on2になっていた。

古川がゲインで岡山最終ラインを下げるのは、攻撃は最大の防御を体現していたものの、
決定的なボールをエリア内に供給することはなかった。対面した岡山の末吉の1on1の対応は見事だった。

こうして五分の状況が続いたが、75分に試合が動く。

コーナーキックから最も警戒していたはずの柳に豪快なヘディングシュートでネットを揺らされる。

トレイン上に整列して、本山がブロックをして柳をフリーにするデザイン。柳はドゥドゥやグラッサから逃げることに成功しました。

磐田としては交代ボードの手違いで交代に時間がかかってしまった直後のプレーのスローインからのコーナーキックであり、セットプレーのマンツーマンマーキングのマーカーを川口能活コーチがベンチから指示を出した直後でありました。変な間があったよねと。

がっかりしたセットプレー担当の川口能活コーチの後ろ姿が虚しかった。

セットプレーについて横内監督のコメント。

――セットプレーを与えてしまう状況、またCKでの柳選手に対しては十分警戒をしていたと思います
まずはCKになったときというのは、相手のスローインからだったと思うのですが、あそこで簡単に入れさせてしまったなと。できればあそこにスクリーンをする選手がいて、そうすればCKは与えていなかったかもしれません。そういったところは修正しなくてはいけないと思います。CKに関しては、もちろんああいうシチュエーションで我々もトレーニングをしてきました。それでも外されて入れられたというところで、もちろん柳選手は非常に入り方も上手かったですし、それでも止めなくてはいけなかったですが、まだまだ練習が足りないのかなと。そういうシチュエーションを想定してトレーニングしていたのですが、そこが決勝点になってしまいました。まだまだ突き詰めていかないといけないなと感じています。また少しセットプレーからの失点がここ最近増えてきたので、もう一度本当に見つめ直さなくてはいけないと思っています。

磐田公式

またもセットプレーの失点(今季の失点の割合でもっとも大きな要因になっている)ということで、トレーニングに割く時間を増やす様だ。

オープンプレーを重視したメンバーを遠征に連れていっているので、今後のメンバー選考も難しい選択にはなりそう。
(何気にセットプレー守備は杉本健勇のロスがあるのだ…懐)

逆転した岡山に対して、磐田は主に両サイドからクロスでエリア内にボールを届けるが、ことごとく跳ね返される。

相手にヘディングが得意な選手が居るのに、そこへクロスを届けなればならないという単調な攻撃だった。

最後に登場した遠藤保仁がプレーした様に
今一度、幅とハーフレーンを取ったり、3人目の動きを繰り返すことがもっと必要だった。

ジャーメインの決定的なシュートを柳が掻き出したしたシーンが、それを表していたと思います。

タイムアップ。
2-1で岡山の逆転勝利。

終わりに

ショッキングな逆転負けとなりましたが、しっかりとトレーニングで培ってきたものを披露出来た試合だったと思います。 #前向きにいこう

↑は以前の投稿だが、この思いは不変。
強度の課題に気付いていなかった時点で組んだ2年間凝り固まっているスカッドで、
現在と未来を同時進行で引き上げる最大出力値での前進をチームから確かに感じます。

試合翌日に横内監督もこの様に語っています。↓

岡山戦に関しては前半の最初、失点するまでは強度を高くやっていたので。今後の課題としてはそれをいかに長い時間やっていけるかに尽きるかなと。

サッカーの羅針盤

大きなオーガナイズを変更することなく、このまま突き詰めていけば良いと思います。

まずは目の前の試合に勝つために最高の準備をして欲しいです。

長崎戦勝ちましょう!もうダブルはダメだ!

今回はこの辺で締め🖐️

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お読み頂きありがとうございました!

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