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【脚下照顧】業務改善は「自分たちは普段何をしているのか」を自覚することが第一歩

■ 色々な素材はあるのに、なぜ業務改善はうまくいかない?


生産性の向上、業務効率化、ICTの推進、DX化・・・このような言葉の目的とすることはいわゆる業務改善であり、企業においては利益を上げることである。

もちろん、顧客満足の向上や社会貢献という話もあるが、ここではあくまで事業における内部的な話とご理解いただきたい。

さて、上記のような業務改善や利益確保に由来するビジネス用語や考え方、テクノロジーの進化による利便性の向上を叶えるツールは星の数ほど登場しているのに、このようなビジネスシーンを活性化できる素材をもってしても、各企業の業務改善が功を成していないように見えるのはなぜか?

これらは一部の企業にしか適合しなかったのか?
すぐに廃れるような、一時的な流行なのか?
言葉巧みに小銭を稼ごうとするの宣伝なのか?
テクノロジーはビジネスに活用できるレベルではないのか?

これらはイエスともノーとも言える。

成功モデルを参考にうまくいくこともあるが、「ああすれば、こうなる」というほど世の中は甘くない。運やタイミングだってあるだろう。
また、ビジネス用語や考え方はコンサル業を営んでいる人たちの飯のタネとも言えるし、1年後には廃れているようなものも多いが、全く有効ではないということもない。
テクノロジーの進歩は社会に合わせているため、常に発展途上とは言えど、どの企業もAIを活用した機器やデジタルツールを活用する場面は増えている。あとは使い手次第である。

何が言いたいのかと言うと、様々な考え方やツールは有効であるが不安定で不確実であり、事業をそれらに頼って何とかしようというのはリスクがあるという話だ。


■ 考え方やテクノロジーよりも土台


誤解のないように言うと、流行りのビジネス用語やコンサルタントの言うことに騙されるなとか、まだデジタルツールを導入することをするなと言いたい訳ではない。

よく耳にするビジネス用語は、世界のビジネスシーンで活用されている考え方だから取り上げられているわけだし、コンサルタントだってプロフェッショナルとして担当する企業を盛り上げる責務がある。
デジタルツールだって「ウチではまだ必要ない」なんて言っていたら、本当に必要になったときに職場で誰も務まる人がいなくなってしまう。
ビジネスに対してしかるべき学習をし、テクノロジーの発展とともに時代に適合できるよう準備や体制はとっておいて損はない。

しかし、ここまでお伝えしたようなことは、形は違えど、今までも世の中で繰り返されてきた。やや辛辣なことを言えば、改善しない歴史を繰り返してきたという意味であり、愚行を繰り返してきたとも言える。
どんなにビジネス用語が色々出ても、どんなに業務効率化に有用なテクノロジーが出たとしても、土台がしっかりしていないと意味はないのだ。

まずは、自分たちの問題を解決してくれそうなビジネス用語やら業務効率ツールを探すよりも、まずは自分たちの現状を見つめ直すことが先決なのだ。

そうしないと、どんなに生産性の向上とか業務効率化とか言っても、何を向上すればいいのか、何を効率化すればいいのか分かっていない。
ICTやらDXやらの言葉が先行して、それらが一体自分たちにどう関係しているのかが見えていないまま、表面的に理解した気になって終わる。


■ 私たちは、普段何をしているのか無自覚


もっと具体的に言おう。

なぜこのような状態になるのか?

それは、自分たちが仕事という活動において「普段何をしているのか」を自覚できていないからである。

自分たちが普段していることが何なのか、何のためにやっていて、どのようなことに結び付いているのか・・・ということを見ないまま改善しようにも、そもそも何が問題なのか気づきようがない。

だからこそ、いくら世の中が生産性の向上とかDX化とか言っても、どこか他人事になってしまうのだ。
そのような状態で、上の人間や外部から方法やツールを提示されたところでピンとこないし、無理やり導入したところで「やることが増えた」と不満を抱くようになる。

それは普段食べている物に配慮しないまま健康を崩しているのに、周囲から食事制限や運動を進められたり、病院に行くようにアドバイスをされるものの、当の本人は「体調は悪いけれど、そこまでじゃないから・・・」といって不摂生を続けるようなものだ。

自分の日常の振る舞いや言動、仕事の進め方や働き方、心身の状態や人間関係・・・これらに無自覚な人に対しては、周囲が何を言っても馬の耳に念仏である。

それでも、「何とかしなければ」と思うならば、周囲の話に耳を傾けられなくても、まずは自分の今の状態に真摯に向き合うことが必要だ。


■ まずは「脚下照顧」


「脚下照顧/きゃっかしょうこ」という禅の言葉がある。

それは「足元を照らし、己を見つめ直す」という教えだ。

迷ったり困難に出会ったときはジタバタせず、時には立ち止まって落ち着くことも大切。ふと足元を照らしてみれば、履いていた靴がボロボロで歩くのに苦労していた事実に気づくかもしれない。

しかし、多くの人たちは「とりあえず前に進まなければ」「何でもいいから何とかしなければ」と焦って自分たちの現状に気づかない。

そのまま、世の中にある様々な問題解決となるような考え方やツールに手を出すけれどうまくいかない、それは今の自分たちに合ってるかどうか分からないまま無理やり使おうとしているからだ。

それはボロボロの靴であると気づかないまま歩みを進め、心身を疲弊させていることに気づかないまま、「この地図が悪い」「一緒にいる人が悪い」だのと悪態をつく。

生産性の効率だのDX化だのと言う前に、まずは自分たちの現状を見つめる時間をもち、それを素直に受け止めることが必要である。

すると、普段は疑問に思わなかったことが改善策になったり、実は今はやらなくてもいいことに時間とお金をかけていたことに気づくこともある。

そのように自分たちをクリーンにしたうえで、さらに「もう少し良くしたい」と思ったときに、ビジネスシーンで有効な考え方やデジタルツールなどに目を向ければ意義ある導入になるに違いない。

もしかしたら、現状の業務を整理するだけでずいぶん改善になるかもしれない。どこかで考え方が複雑になっていた状態を「なんだ、こうすればもっと簡単になるじゃん」と今さら気づくことも多いだろう。

方法論にしがみつきたくなるのは分かるが、その前提として、まずは現在の自分たちのありかたを脚下照顧として見つめてはいかがだろう?


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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