見出し画像

自分の役割でないと思っても、引き受けてみて分かることもある

「断ること」の必要性


色々な働き方が容認されている現代。

決められた業務を時間通りにこなすだけでなく、自らスケジュールを組んで自らの裁量権をもって働いている人は多い。

ときには仕事に優先順位をつけて、引き受けられない仕事は断らざるを得ないこともある。

無理に引き受けられることもできるが、そうすると1つ1つの仕事の質が落ちたり、休日返上で仕事をする羽目になる。

このような事態を避けるために、最近では「思い切って断ることも必要だ」ということを伝えるビジネス書も見かける。

これはその通りだと思う。

誰もが1日24時間という限られた範囲の中で、何でもかんでも全てをこなせることは不可能である。

「自分の役割は何か?」を意識して、そこからなるべく脱線せずに本来の仕事に従事することは大切だ。


「それは自分の役割ではない」と断る職員


しかし、いつも頼みごとを断る人がいる。

上司などの作業指示を出す立場からの頼みであっても、平気で断る。

常套句として「それは自分の役割ではないと思います」と言う。

そこで「いやまぁ、そうかもしれないけれどさぁ・・・」と再度頼んでみるものの、「自分の仕事があるので」と言ってそっぽ向いてしまう。

もちろん、これは別に問題というほどの話ではなく、頼みごとを断ったとしても非難されるほどではない(断るときの態度は別として)。

そもそも、本人が言う自分の役割としての仕事を確実に遂行しているならば良いだろう。

しかし、「それは自分の役割ではないと思います」と主張ならば、まずは確認しておきたいことがある。

それは「上司が求めている役割」と「本人が思っている役割」は果たして同じかどうか? ということだ。

もしも、上司がその人に求めている役割と、本人が思っている役割の範囲が異なっているならば、上司から見て本人は仕事をしないという評価になってしまう恐れがある。


役割とは「求められていること」


予めお伝えしておくが、「上司の言うことを黙って聞いていればいい」という話ではない。

また、現代では特に労働条件や業務内容を可能な限り細かく定めておくことで、雇用主と労働者のトラブルを防止することが必要だ。

しかし、雇用するときに労働者に提示されることは役割であり、それは雇用主が求めていることである。

言い換えると、労働者にとっての役割とは「求められていること」である。
そして、その「求められていること」を定義するのは雇用主である。

求められていることの範囲に応じて、職場や上司は作業内容や指示を出しているわけだから、指示を受ける側が自分の役割を定義するというのは少し違うと言える。

もしも、自分の役割を自分で定義するのであれば、それはもはや個人事業主やフリーランスという働き方になってしまう。

そのような働き方ならば、誰に何を言われようが、自らの判断で断わるということをしても良いだろう。

なぜならば、仕事を引き受けても断っても、それらはすべて自己責任になるからだ。


とりあえずやってみて分かることもある


「面倒くさいからやりたくない」という大義名分として、「それは自分の役割ではない」という主張をすることが伺えるときがある。

あるいは「それは自分よりも〇〇さんに任せたほうが良いですよ」と言った役割の転嫁をする人もいる。

このような主張をすることによって頼まれたことを避けたいと思うことは理解できるが、「もったいないな」と思うこともある。

それは「自分の役割ではない」という大義名分によって、自分という存在の範囲を限定してしまっているからだ。

今ではキャリアパスなんて言葉があるが、個人的な意見を述べさせていただけるならば、仕事や人生において計画的かつ順当に事を進めることなんてできないと思う。

そこにおいて、「自分の役割はこうだ」「自分の将来はこうなる予定だ」なんて限定してしまうのは、変化の激しい世の中において無意味だと思う。

むしろ、自分の役割や将来を限定せず、よくわからないし、おそらくどうでもいいだろうことにも取り組むことで、自分という存在のエリアを広げていくほうが有意義だし、現代ではその数をこなしている人のほうが色々なチャンスを獲得している。

それは、とりあえずやってみることでしか得られないことであり、とりあえずやってみることで分かることでもある。

いつまでも「自分の役割はこうだ」と固執して、それ以外のことに「それは自分の役割ではない」と言っていることは、確かに自分の業務範囲を守ることはできるだろう。

しかし、固執していた役割が世の中からなくなったとき、それ以外のことをやってこなかったツケは出てくる。


――― 改めてお伝えすると、別に職場や上司の言うことを聞いたり、雇用契約以外の仕事も引き受けろと言いたいわけでもない。

また、断ることだってビジネススキルであることは確かであり、それは優先順位の高い、一定の質を求められる仕事を遂行するには必要だ。

しかし、自分が思う自分の役割を建前に、いつまでも安全圏にいることはできない。

また、個人が思うキャリアパスというのは案外そこまで価値があることではないかもしれないし、職場や上司から指示された業務が、自分のキャリアパスに大きく寄与する可能性だってある。

何なら、職場や上司はそのことを見越して指示としてチャンスを与えていることだってある。(まぁ、ただ雑用を押し付けているだけのこともあるかもしれないが・・・)

いずれにせよ、過度に「それは自分の役割ではない」と突っぱねるよりも、
ときには「まぁ、貸しにしておくか」くらいに思って引き受けることがあっても良いだろう。

もしかしたら、案外面白いかもしれないし、自分が知らなかった発想や視点を得られる可能性もある。

本当に自分の役割ではないかは、やってみないと分からない。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?