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【介護施設】「あれば使う」と不要品を溜めこみ、施設の中が物置と化していないか?

■ 年1回の大掃除より年数回の整理整頓


年末と言えば大掃除という風習がある。各家庭・職場において通常よりも大掛かりで細やかな清掃をして新しい年を迎える準備をする。

大掃除という風習が日本だけなのかは分からないが、整理整頓をして自身も環境も身軽にする機会として年越し前後は1つの目安になるのだろう。

ちなみに私は年末に大掃除はしない。と言うのも3~4カ月に1回は不要な物品は捨てるし、排水回りは週単位でこまめに清掃しているからだ。これは職場も家庭でも同様である。

別にマメなのではない。年1回まとめてやるよりも、こまめに小さくやったほうが楽だし設備や備品の異常に気付くからだ。いわば予防でもある。

整理整頓や清掃について他人にとやかく言うつもりはないが、こまめに清掃していることで心身のコンディションや仕事の効率性も図れているし、少なくとも整理整頓の回数が多いことのデメリットはない。


■ 物を溜めこもうとする習性と心理


そもそも、知らず知らずに物は増えてしまう。これは職場・家庭に限らず、誰もが実感していることだろう。

ミニマリストのように意識的に物を制限しない限り、気が付くと自分の身の回りは物で囲まれてしまう。文明社会で生きている人間であっても、巣で暮らす野生動物の習性のようなものが生物として残っているのかもしれない。

また、聞くところによると、人間は不安なときほど物を溜めこむ心理があるらしい。これにより明らかにその人にとって不要な物を衝動買いしたり、普段は絶対に買うことのない商品に浪費してしまったりする。

不安な気持ちを「ないよりはマシなはず」として、物の存在によって不安感を軽減させようとするのかもしれない。


■ 「あれば使う」と言うわりに絶対使わない


これに近い状態として「あれば使う」という言い分がある。

介護施設であるのだが、退去する際にご家族から「施設で使う物があれば差し上げますよ」と言われると、寝具や衣類などを引き取ってしまう職員が一定数いる。

その言い分として「あれば使うんですよ」「何かあったときのために、あったほうが良い」というものがある。

・・・しかし、「あれば使う」「何かあったときのために」と言って引き取った備品を実際に使うことはない。絶対に使うことはない。

最終的にカビくさくなったり劣化して廃棄することになる。最初から引き取らないほうがマシと言える。
実際、「あれば使う」と主張するわりに実際には活用場面がない。また、「何かあったときの『何か』とはどういう状況か?」と言う問いかけをしても黙ってしまう。

現場の意見は尊重したいが、在庫管理・資材管理の面から言わせていただくと使わない備品(不要品)を保管しておくことは、限られた空間を圧迫するというデメリットしかない。
これは備品の購入にもつながる話であり、「あれば使う」「何かあったときのために」と主張するタイプの職員に在庫管理や発注担当を任せると、在庫過多や経費増加という最悪な状態になってしまいかねない。


■ 施設内が物置になっていないか?


介護施設で上記のような状態が日常化し不要品が溜まると、当たり前だが保管場所だけでは収まりきれなくなる。

すると、職員の休憩室に物を置くようになったり、作業スペースにも溢れた物品が及ぶ。そして行き着く先として、利用者が過ごすリビングなどの共用スペースや通路にも段ボールなどを置くようになる。

その際の言い分としては「後で倉庫に入れるから、一時的にここに置いているのです」「倉庫を整理したらスッキリしますんで」というものだ。

しかし、黙っていれば日数を経ても物が溢れた状況は変わりない。それどころか、休憩室や共用スペースも倉庫のような保管場所としてカウントするようになる。

当然ながら、保管場所が溢れる要因としての不要品は、一向に片付けられないまま無意味に保管されたままとなっている。きっと、誰もその存在を覚えていないだろう。


■ 施設の物置状態はリスクしかない


このような物が無意味に溢れている状況は、在庫管理や経費といって経営面だけの話に終わらない。

本来は保管場所でない場所に物が慢性的に置かれるようになると、以下のようなリスクや不具合が想定される。

・介護施設として景観を損ねる → 外部からの信頼が落ちる
・置かれた物につまずく    → 事故を誘発する
・物があると掃除しにくい   → 不衛生な環境につながる
・休憩室が狭くなる      → 休憩がとれず仕事の質が落ちる

また、上記のような要因も相まって、施設にいると圧迫感を感じることから、次第に人間関係がギスギスするようになり利用者や職員のメンタルにも影響を与える。

認知症介護としても、物があることで施設全体が暗くなると生活リズムが乱れることにつながり、認知症の症状を加速する恐れもある。

たかだか物が過剰にあるというだけの話だが、介護施設という利用者にとっての住まいとしても、職員にとっての職場としても、そのデメリットは大きいことをご理解いただきた。


――― 年末の大掃除の話から始まり、いつの間にか介護施設のリスクの話になってしまった。何にせよ、人間は知らず知らずに物を溜めこむということを誰もが知っているわけだから、やはり定期的な整理整頓は行っておいて損はない。

別に断捨離することを推奨したいわけではなく、持ち物は自分(たち)の活動範囲に留めておけば良いという話である。

とは言え、このように書いている私自身、気が付けば書類やら本やらが溜まってしまっている。徐々に片付けていくこととしよう。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめたか方へも感謝。

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