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なぜ介護サービス事業は行政に提出する書類が多いのか

介護サービス事業は、行政に提出する書類がやたらと多い。
もしかしたら他業種も同様かもしれないが、とにかく多い。

小規模の事業所の管理者の多くは「書類作成するために介護サービス事業をしているわけではないのに」と嘆いているだろう。

サービス提供実績や請求業務など、売上に直結することであれば仕方ないと思える。介護職員処遇改善加算といった賃金改善に係る申請書類や実績報告となると手こずるが納得できる。

しかし、何かしらの調査票など「これは一体何の役に立つのだろう?」と思いながら書類へ記入して提出していることもある。

自然災害対策など重要性は分かるけれど、記入用紙に合わせるとどうしても実態とかけ離れた内容を記入して提出せざるを得ないこともある。
(施設入居者の人数や状態に対して職員数や車両数など避難の実施は現実的に困難、など)

時には、外部評価や介護情報公表システムなど、結構な手数料を事業所が支払って対応・申請することもある。
(正直、これはもはや有効性も不明な形骸化したものだと思っている)


このような行政への提出書類に加えて、社会情勢に合わせて義務化事項がどんどん増えているのが介護業界である。

介護サービスは介護保険事業のもとに運営していることから、書類整備や記録がすべてであると言っても過言ではない。

法令に即した事業体制の整備に加えて、書類の未提出や未整備などは確実に厳罰対象となる。だから、どの事業所も四苦八苦しながら、その精度も確認しようのない状態で行政に書類を提出していると思う。


とは言え、別に行政批判をしているわけではない。

介護サービス事業という社会に必要な仕事においては、行政から求められた書類を1つ1つ提出することによって(質は別として)事業整備がなされるという側面があると思う。

おそらくだが、このような書類提出がないと介護サービス事業所の多くは、事業としてちゃんと整備しようと思わないだろう。

例えば、BCP(事業継続計画)はその典型だと思う。

これは令和6年4月より感染症と自然災害をテーマに、それらが大規模に発生したときでも社会に必要なサービスとして、最低限の事業継続が成されるよう平時から発生、収束後を想定して整備するものである。この整備の中には、研修や訓練(机上シミュレーション含む)の実施も含まれる。

有事の際の想定や準備をはじめ、研修や訓練をすることだって、義務化されない限りは「まぁ、うちの事業所は小さいからいいか」とか「この辺りは災害の影響は少ないだろう」として何もしない事業所が多いことが推察されるからこそ義務になっていると思う。

実際、災害においてはBCPの義務化になってはじめて、その地域におけるハザードマップを確認したという事業所も少なくないと聞く。また、地域の避難場所なども知らないということもあるだろう。

何なら、介護施設においては利用者と職員だけのことを考えて「ここにいれば安心だろう」と思う一方、事例から近隣住民の避難所となることも想定する必要があることが浮き彫りになっている。


何が言いたいのかというと、行政から求められる書類作成は面倒くさいけれど、意外に自分たちの事業所を整備するきっかけになっているという話だ。

――― ただし、もう少し減らせるのではないかと思う。
いや、減らすというよりも、もう少し提出方式やフォーマットを整理してほしいといのが正しいかもしれない。

事務処理を簡潔にしてくれるのはありがたいのだが、毎年のようにフォーマットが変わるのは正直好ましくない。
特にワードやエクセルベースだと、昨年度に記入した内容をそのまま転用しようがないため、フォーマットが変わると1から記入する羽目になる。これだと事務処理の簡潔さがあまり機能していないとも言える。

また、社会的な必要性によって義務化するのは構わないが、一方で現代に適合しない形骸化した手続きや調査などは削減する方向にしたほうが良いとも思う。1年の間に同じような内容を提出することも多いので、行政の管轄も横断的にして管轄共通のデータベースで管理してほしいものである。

外部評価や介護情報公表システムだって、介護事業や介護を必要としている人たちにとっての有効性を、何かしらんの成果としてアピールするべきだと思う。そうでないと、活用性のないホームページを更新しているような不毛さがある。


初年度は介護職員処遇改善加算やら重説の変更など目白押しだ。
まぁ、人事整備や顧客への再周知の機会と考えることにしよう。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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