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介護業界における情報管理の意識の薄さ→「持ち込まない」「持ち出さない」「広めない」で改善する

■ 個人情報保護への意識


個人情報という言葉は、老若男女問わず誰もが知っている。そして、個人情報の取り扱いは非常にシビアであることも知っている。

個人情報保護に関する法律ができたのは、かれこれ15年以上前の話であり、企業による個人情報の漏洩などを事件がたびたび報道されることもあってか、個人情報は守るものという認知は一応されている。

個人情報保護に関する法律は、個人が保有する情報の種類や範囲が多岐に渡るようになり、国交や流通などグローバル化を推進するにあたり徹底した情報保護がなされていることなど背景にある。

また、オンラインやデジタル化の発達も目まぐるしく進む時世において、個人情報や機密情報を保護する法令はもちろん、物理的にも仮想空間上でも防衛する体制の整備は日々改善が繰り返されている。

悪く言うつもりはないが、日本は法整備において慎重かつ鉄壁性はあるものの、制定までに時間がかかりすぎることから後手に回ることもある。見方を変えれば日本の保有する情報が貴重であり、犯罪であっても入手あるいは破壊したいのだろうとも推察される。


■ 介護の仕事は個人情報だらけ


サイバー攻撃のコンピュータウイルスなどが一般人でも耳にする時代、個人情報の漏洩などと言うとインターネット経由が多いと思われるだろう。

しかし、情報とは何もパソコンやインターネット上の話だけではない。

紙媒体の書類だって情報だし、マイナンバーや運転免許証も同様である。会社で言えば社員情報や健康診断の結果、製品情報や設計図、会議録や稟議書、財務諸表や在庫一覧だって情報だ。これらは完全に機密情報だ。
これらはデジタル化が進んでいるとはいえ、現在の日本においては紙媒体の情報がまだまだ多いと伺える。

そんな時代において、介護業界においても情報の取り扱いは同様である。というか、介護の仕事は個人情報だらけと言っても過言ではない。
特に利用者たる高齢者の基本情報は、年齢や住所はもちろん、これまでの病歴や生活状況、ご家族の連絡先など細々とした情報を取り扱う。

介護サービスにおいてどこまでの情報が必要かという区切りはないが、利用者一人一人に合わせた支援を行うにあたっては、サービス開始前はもちろん、サービスを提供している間で得られた情報も鍵になる。

ときにはご家族との良くない関係性や経済状況など、知る必要も聞きたくもない情報を知ってしまうこともあるので、余計に情報の取り扱いには注意を払う必要がある。


■ 情報管理の意識が低い介護業界


しかし、残念なことに介護業界における情報管理の意識は低い。
他業界からみれば常識が欠けていると思われるかもしれない。

例えば・・・

・ 外出時、利用者情報である書類やファイルをカバンごと置き忘れする
・ 職場に個人所有のUSBメモリやSDカードを持ち込んだうえに紛失する
・ 個人情報の廃棄をシュレッダーにかけず、裁断してメモ用の裏紙にする
・ 共用パソコンのモニターにパスワードが書かれた付箋紙を貼る
・ 利用者情報を職場の掲示版に貼り出して回覧とする

・・・いかがだろうか?
これは大袈裟な話ではなく、書類が入ったカバンの置忘れやUSBメモリの持ち込み&紛失は、未だに介護業界の個人情報漏洩の原因の上位である。
なお、USBメモリなどの物理的な要因だけでなく、共有ファイルサービスなどの利用も含まれる。情報管理に対してこんな倫理観で、ICTの推進やらDXだのと言えたものではない。

また、ICTの導入となったとしても別な問題を引き起こす可能性はある。そもそも、介護業界においてデジタルツールなどに下手に知識がある人がやらかすことがある。

個人アカウントの共有ファイルサービスに職場の情報を保管したり、職場に相談もなく回線や通信機器を増設する職員もいる。これは個人情報の漏洩リスクはもちろん、職場内のネットワーク環境に異常をきたしかなねない。
これも大袈裟な話ではなく、運営する介護施設でネットワークに不具合が起きたので調べてみたら、職員が良かれと思って追加したWi-fiルータが原因だと分かった。

いずれにせよ、個人情報への意識が低いことから起こる、悪意のない最悪の結果と言える。


■ 私物は必要最小限にする


個人情報保護の基本的な考え方は、実は感染症予防と同じである。
つまり「持ち込まない」「持ち出さない」「広めない」である。

個人情報が何たるものか分からないならば、とりあえずこれらを守っていれば問題ないだろう。

より具体的に述べるならば、「持ち込まない」においては「勤務時の私物は必要最低限にとどめる」とすれば良いだろう。せいぜいスマホ、筆記用具、弁当・飲用水、あとは着替えや化粧品くらいに留めておくことを推奨する。

但し、USBメモリなどの外部記録媒体なんてもっての他だ。今や持ち込みはおろか、パソコンに差せばアラートが出る職場も珍しくない。
USBメモリなどは今や安価で簡単に使用できるが、その分リスクが大きい記録媒体であるとご理解いただきたい。と言うか、そもそも職場に持ち込むべきものではない。

また、介護施設の利用者に面白い動画を見せたいと思って個人のタブレット端末を持ち込み、職場のWi-fiに接続することを画策しているならば、そのような行為はやめたほうが良い。職場にあるタブレット端末を利用するか、なければ稟議を上げて職場用(利用者のため)として購入して利用することが適切である。


■ 仕事に関わる情報は原則持ち出しNG


次に情報を「持ち出さない」については、一部反論があるかもしれない。
と言うのも、悪意はないどころか「仕事のため」という理由付けになることがあるからだ。

「家で仕事をするため」として書類やデータを自宅に持ち帰ったり・・・

「打ち合わせで必要になるかも」として、カバンにパンパンになるほどの利用者情報としての書類やファイルを入れて外出したり・・・

「仕事を覚えなければ」として、新人スタッフが個人のメモ帳に書いた利用者情報や職場の業務手順などを持ち帰ったり・・・

いずれに「まぁ、分からないでもないが」という理由であるが、反論されることを承知でお伝えするならば、いくら仕事が理由であっても「職場の情報を持ち出すのはやめましょう」の一言しかない。

そもそも、在宅ワークでもないのに仕事を自宅に持ち帰る時代でもない。
また、外出先での必要になる見込みでたくさん情報を持ち出しても、実際には使わないことがほとんどだ。
早く仕事を覚えたい意欲は分かるが、仕事は暗記とは違う。焦るよりも現場でメモを見ながらじっくり覚えたほうが理解は早い。

もしも本当に必要ならば、職場の上司に相談して承認を得てからにするべきである。そして使用した情報は全て揃っている状態で職場の保管場所に戻すのが適切な流れと言える。当然、持ち出した情報をコピーして自宅に置いておくことはNGだ。

このように「持ち込む私物は最小限」かつ「職場の情報は持ち出さない」という物理的な対策をしておけば、情報漏洩など職場内外におけるトラブル防止になる。これが最後の「広めない」になる。


――― 介護の仕事は個人情報を厳重に取り扱いつつ、利用者の支援にあることになる。「介護だから情報管理とか関係ない」などと思ってはいけない。

介護に限らず、個人情報保護が不適切だと、何かしらのトラブルがあったときに事業所の信用だけでなく介護業界全体の信用を損ねる。

「情報管理もずさんな介護って、やっぱ遅れているな」「介護って常識がないのだな」なんて言われて良いはずはない。だからこそ、個人情報を取り扱っている仕事であることを再度理解し、「持ち込まない」「持ち出さない」「広めない」を徹底していただければ幸いである。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。


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