#8 ふるまいコーヒーイベントについて

ごきげんよう!
ご覧いただきありがとうございます。


導入

去る2023年11月25日に所属団体でイベントを開催させて頂きました。
このイベントはタイトルの通り、皆さんにコーヒーを飲んでもらおう!というものです。
今回はそのイベントについて、その趣旨、提供したコーヒー、焙煎のプロファイルなどについてお話していこうと思います。
なお、この記事での私の言葉と所属団体の意向は無関係ですのでご承知ください。
また、団体に迷惑をかけるわけにはいかないので、脚色や曖昧な表現を使用しています。

本編

やや詳しすぎる話も載っているかもしれませんが、ご容赦ください。

イベントの目的


・研究会に活動実績を作りたかった
サークルあるあるだとは思うのですが、創設者のいる代は何かしら活発に動きがあるものの、メンバーのモチベの低下やコロナによる分断とそれによる引継ぎの失敗などから活動が困難な状態になっていました。
そこでまずは、人の集まりやすい学祭期間に合わせて対外的なイベントを行うことで、内外問わず、サークルの存在と活動を周知する効果を得たいと考えました。

・コーヒーをもっと好きになってほしい
耳障りの良いありきたりな動機ですが、これはやはり大きな理由です。 
これに関連して、私がコーヒーに関わるようになった経緯をお話しておきます。(飛ばしてOK)

私の父は毎朝(夏以外)ドリップコーヒーを淹れていて、それを水筒に詰めて出勤しています。
そんな家庭で育ったこともあり、コーヒーそれ自体は子供の頃から身近な飲料でした。
小中学生のときから少しは飲んでいましたし、高校生のときは父に倣って水筒にコーヒーを入れていました。
この時点では、特段好んでいたわけでもなかったのですが、大学生になって、コロナ禍を通してできた友人に連れられてカフェに行くようになり、これまでほぼ苦いものと感じていたコーヒーの味わいの幅広さに衝撃を受けました。
ここが沼でした…誰も助けてくれなかった…(他責)
そこからは転がるようでした。
お店で様々なコーヒーを試しながら、
それらの味の違いは豆の品種、産地、精製方法だけに依拠するのではなく、焙煎度合い、保存状態、淹れ方、淹れ手、カップの素材や飲み口、そのお店の雰囲気など、あまりにも多くの要素で変化することを知りました。
そして知ってしまうと、この手でやりたくなるのが人間の性というものですよね…。
そして偶然にもこのタイミングで淹れ手になるチャンスがあったので、コーヒーのインカレサークルのようなものに飛び込みました。
ここも沼でした…助けるどころか皆が引きずり込んできた…(他責)
これが原点です。

つまり何が言いたかったかというと、
経験則に照らし、コーヒーをより好きになってもらうには、美味しい または 衝撃的なコーヒーとの出会いが1番手っ取り早いと考えました。
幸いにもコーヒーという飲料には、ステレオタイプなイメージがついていますから、飲み手のそういった印象を払拭するイベントを目指しました。
これは後述のメニューの設定に関連しています。

・私の淹れたコーヒーを飲んでほしい
これは完全にエゴです。
来てくれた方々(特に私の知人)に「これくらいのことができるようになったよ!」と報告したいという気持ちがありました。
これを団体を巻き込んでやって良かったのか、未だにその是非が分かりませんが、やらないと私が後悔するであろうと判断したのでやりました。
また、幸いにも忙しい日々を送ることができていて、学生の間にコーヒーの活動をするのはそろそろ限界だと感じていたこともあり、これを機に活動と距離を置こうという決心がついたこともあります。
さらに、私の生活基盤が関西にあり続けているおかげで、私の知人は学祭期間ならば集まってもらいやすいだろうという勝手な憶測がありましたし、これまでも前述のインカレサークルの活動やその後に始めたコーヒー関連のアルバイトの様子を度々SNSに載せていたので、私がコーヒーに関わって何かしらをしているのは知ってもらえているだろうという期待もありました。

なお今回のイベントは、出店という扱いではなくカンパ制を採用せざるを得ませんでしたが、結果としてこの目的に沿う適切な手段になったかと思います。

以上3つの目的意識をイベントの大枠として据えました。
先程「やらないと私が後悔するであろうと判断」したと申し上げましたが、この判断に踏ん切りが着いたのが11月15日のことでした。
判断が遅い!
私が竈門炭治郎なら鱗滝左近次にタコ殴りにされています。

メニューの設定


さて先程、
「コーヒーをより好きになってもらうには、美味しく衝撃的なコーヒーとの出会いが効果的であると考え、コーヒーについて持たれやすいイメージを払拭するイベントを目指す」
旨を述べました。
そこでまずは、私がかつてコーヒーと聞いて連想したイメージや印象を思い出しました。
・苦い
・黒い
・香りを楽しむ
・喫茶店やカフェで提供される
・ペーパーフィルターを用いてドリップする
・ブラックコーヒーこそ至高と言われる
などでしょうか。
専門店で提供されることや、コーヒーを趣味として探求される方がいらっしゃることから、こだわりが強く気難しそうなイメージがありました。
余談ですが、私の父も「コーヒーに砂糖やミルクは邪道」という硬派なコーヒーラバーです。

そしてこれらと逆のものを用意することにしました。反抗期か?
・苦くない
・黒くない
・ペーパーフィルター以外の抽出方法
・ブラック以外の楽しみ方
我ながら呆れるほど単純ですが、これらを主軸においた結果、
・クセの強くない浅煎りコーヒー
・エアロプレスを用いた抽出
・コーヒーを用いたモクテル(ノンアルコールカクテルのこと)
をメニューに取り入れることにしました。

そこで、ルワンダのシンビ農園によるウォッシュドコーヒーをご用意しました。

生豆のご購入はこちらから⬇
https://www.specialty-coffee.jp/products/detail/305

上記サイトにもテイストの説明があり、
・オレンジ
・レッドアップル
・グレープフルーツ
・チョコレート
・スウィート
・スムースマウスフィール(滑らかな質感)
・インプルーブ(冷めてもなお美味しくなる)
このようになっています。(括弧書きは私による注釈)

この豆に決める前に、取り扱っているお店で試しに飲んだところ、私にはオレンジというよりレモンの方が近しく感じられましたし、この説明にはありませんがほのかなスパイシーな香りもありました。
これらを踏まえ、このコーヒーは浅煎りによく見られるような強すぎる酸味(雑味)が少なく、単体でも美味しく楽しみやすいことに加え、コーヒーを濃く抽出してレモネードと組み合わせても相性が良いだろうという結論に至りました。

そしてご提供に至ったのが、
・ホットコーヒー
・ホットレモネードコーヒー
の2種類になります。
文章にすると随分長ったらしい過程を経ていますが、メニューそれ自体は11月17日頃には決まりました。

焙煎


コーヒーの味を決めるのは主に焙煎と言って差し支えないと思います。
焙煎はその名の通り、コーヒーの生豆に火を入れる行程です。
もちろん豆自体のグレード、農園での生育、精製方法は重要ですが、これらは私にはどうにもできませんし、前述のような淹れ方、淹れ手、カップの素材や飲み口によっても味に変化はありますが、焙煎ほど味に大きな振れ幅をもたらす要素ではありません。

別のものに例えるならステーキがイメージしやすいかもしれませんね(グレードの高いお肉でも焼きすぎや生焼けは美味しくない)。

メニューは前述のように決まっていたので、私が今回のルワンダから引き出したい要素は
・クリーンな酸味
・シトラシーな爽やかさ
・スパイシーな余韻
・甘み
であり、苦味を抑えることを意識しました。

コーヒーの焙煎はお肉を焼く場面と異なり、メイラード反応・カラメル化反応・炭化の全てを発生させて行われます。
コーヒーに含まれる単糖類はメイラード反応とカラメル化反応を、 タンパク質と遊離アミノ酸はメイラード反応を起こし、 有機物は200℃を超えると炭化します。
メイラード反応とカラメル化反応が香り成分、甘み、苦み、とろりとした舌触りなどを発生させ、炭化は強い苦みや粒子のような舌触りなどを生むと言われています。
 
さらに、焙煎の過程では生豆の持つ水分を100℃以上で蒸発させていくのですが、高火力・高温で一気に火入れすると、豆の表面だけが焼けてしまい中まできちんと火が通らない(=生焼けの)状態になってしまい、これが好ましくない雑味の原因になってしまいます。

これらを踏まえ、ルワンダの焙煎については
・炭化を抑えるため200℃以上にしない
・低温でゆっくりと火入れ
・豆の水分が抜けたタイミング(1ハゼ直後)で終了し、焼きすぎない
方針となりました。 
(これは私と一緒に焙煎をしてくれた友人からのアドバイス、バッチ毎のフィードバックを元にしたものです。その節はお世話になりました。)

※1ハゼとは
生豆に火を入れると段々柔らかくなりブヨブヨしますが、さらに加熱が進むと内部の組織が再度硬化します。
この間、水蒸気などのガスは柔らかくなった細胞の隙間から外へ逃げており、再度硬化した組織の中に取り残されたものは加熱によって圧力が上昇し、豆がそれに耐えられなくなり「パチパチ/バチバチ」と爆ぜます。

プロファイルはこんな感じ⬇

日本珈琲焙煎研究所さんにて
富士ローヤル R101 1kg(直火) を使用

投入温度は約175℃で低めのスタートです。
投入により温度が下がるので、8分かけて150℃まで火力を調整しながらゆっくり温度を上げて、13分頃には1ハゼのピークが迎えられるように調整しました。
焙煎度合いを示す指標で表すならば「ミディアムロースト」あたりになると思います。

このような感じで無事に生豆3kgを焼き上げました。
これが11月22日の出来事です。

レシピ開発


幸いにも優秀な友人のおかげで焙煎が上手くいったので、ペーパードリップの方は1投ごとの湯量や蒸らし時間の設定などのレシピ化は容易でした。

ドリップの要点は大体こんな感じです。
・コーヒー15g、湯200gを準備
・目盛は2(グラニュー糖より少し小さいくらいの粒度)でコーヒーを挽く
 (ミルは Kalita製NEXT G を使用)
・ドリッパーはHARIO製V60を使用
・湯は4回に分けて抽出

一方今回のレシピ化で最も困難だったのは、レモネードコーヒー用のコーヒーの抽出です。
シロップは当然味が強いので、今回のルワンダのような繊細なコーヒーを通常のように抽出して合わせてもかき消されてしまいます。
そこで、前述の通り、エアロプレスという器具を用いて濃い味わいのコーヒーの抽出を行うことにしました。
(エスプレッソやマキネッタも検討しましたが、前者はそもそもマシンがなく、後者はガス火が必要で、今回の設備上あまり現実的ではなかったので不採用となりました。これらの方がよりコーヒーを感じられる味わいになったであろうとは思います。)

エアロプレスは、名前のとおり、空気圧を用いてコーヒーを抽出します。
ペーパードリップは1気圧の状態と、お湯をかける動作による生まれる若干の水圧により抽出されますが、エアロプレスはピストンのような構造をしており、垂直に押し込むことでコーヒーに空気圧を加えて抽出することが可能です。
一方でエスプレッソは、マシンによって9気圧もの力が加わるので、コーヒーの香り成分、味、油分などが強く表れ、濃くとろみのある飲料になります。
エアロプレスでは流石に同様の圧をかけることはできませんが、通常のペーパードリップよりも濃厚で、お手軽に味わい深いコーヒーが楽しめる器具となっています。
なお、今回は通常のエアロプレスよりもより一層濃く抽出したかったので、強い圧をかけるために専用のペーパーフィルターを2枚に増やしています。
さらに、抽出の見た目がもの珍しいので、パフォーマンスとしても良いと考え、採用に至りました。

友人撮影&加工済
見た目が派手(ほんまか?)

レモネードコーヒーのレシピはこんな感じ
Ⅰ シロップ
・レモン4個、レモンと同じ重さのグラニュー糖、レモンの10分の1の重さのハチミツ、カルダモン6粒、クローブ4粒を準備
・全て混ぜ合わせて、レモンから水分が出るまで暫く放置したのち、加熱

Ⅱ コーヒー
・目盛は2〜2.5(上白糖よりやや大きいくらいの粒度)でコーヒーを挽く
 (ミルは Bonmac BM-250N を使用)
・エアロプレス使用、専用ペーパー2枚使用
・エアロプレスに粉20gを入れ、湯を攪拌しながら60g流し入れ、ヘラで再度撹拌して抽出

Ⅲレモネードコーヒー
・シロップ10g、レモンスライス2枚、湯80g、コーヒー30gをステアリングして完成

こうして11月23日にようやくレシピが完成しました。

イベント当日


11月25日は幸い天気もよく、学祭の盛り上がりに乗じてたくさんの方が遊びに来て下さりました。
不測の事態によりあたふたする場面もありましたが、所属団体のメンバーの力も存分にお借りしてコーヒーの提供を行うことができました。
また、コーヒーを飲みに来て下さった皆さま、カンパにご協力頂いた皆さま、施設の管理をして下さっている皆さま、手伝ってくれた所属団体のメンバーにこの場を借りて御礼申し上げます。

余談ですが、私の両親も来てくれました。
硬派なコーヒーオタクである父に、反抗期を体現したかのような今回のコーヒーを飲ませるのは、授業参観や三者懇談と同じような、妙な緊張感と恐怖感がありましたね。

総括


如何せん準備期間が短く(私のせい)、詰めが甘い部分が散見されました。
コーヒーの抽出レシピは時間をかけてもっと美味しいものができていたかもしれませんし、氷や器の手配をしていれば、アイスドリンクという選択肢が増えていたり、より見栄えよく目でも楽しめたりしていたかもしれません。
全て終わって振り返ると改善点は山ほどありますが、当時できたことをやりきって、一応のコンテンツとして成立させることができたので、「学生×コーヒー」を学部生の頃からやってきた私の集大成だったのであろうと思います。

しかし、焙煎は友人に教えと助けを乞いながらようやく出来たものですし、レシピ開発も団体メンバーとの相談を経ました。
団体メンバーにはエアロプレスを借り受けただけでなく、コーヒーの提供、施設の整備や片付けまで一緒に頑張ってくれました。
私の思いつき ないしは 強行突破としか言えない無策なイベントに、多くの人が力を貸して下さり、どれだけ感謝してもし足りません。

私ひとりではきっと形にすらなりませんでした。
コーヒーを皆さまに提供できる機会があれば、またどこかでお目にかかりたいものですね。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

かちょり

追記


総括では「こちら側」=運営側への感謝を述べましたが、ここでは大多数の「そちら側」=お客様側への感謝を述べたいと思います。

私はコーヒーを自分のために淹れて飲むことはほとんどなく、専ら人のためです。
(その意味で、私はコーヒーの「提供」が好きなのであって、コーヒー「それ自体」は大して好きではないとよく言っています。) 
私にとってコーヒーそれ自体は手段に過ぎず、コーヒーをきっかけに私とカウンター越しに対峙した相手に、何かしら喜んで欲しいというのが私の究極的な願いであり、目指してきたものです。
「美味しいコーヒーを飲んでもらう」でも「コーヒーを片手に読書を楽しんでもらう」でも「コーヒーで喉を潤しながら、おしゃべりの場としてくつろいでもらう」でも、相手の幸せの一助になるのであれば正直何でも良いな〜と思っています。
また、この手段がコーヒーであることに重点を置いているわけではなく、相手の一助になりたいという願望に気付いたきっかけがたまたまコーヒーだっただけということに最近思い至りました。
手段がお酒でも美味しいご飯でも、実はあまり変わりません。居酒屋のバイトも、朗らかで幸せそうなお客様に恵まれているため、とても楽しいです。

つまり、私の好きなコーヒーの提供は、淹れ手だけでは成立せず、むしろ楽しんでもらう相手こそが必要不可欠であり、そういった相手と対峙することが私の幸せでもあります。
来て頂いた皆さま、お会いできてとても嬉しかったです。本当にありがとうございました。

抽象的で言語化の不足した精神論のようなものを書いてしまいました。
読みにくい部分もあるかと思いますが何卒ご容赦ください。

相変わらずの遅筆ですが、期末考査もありましたし、7000字以上あるので許してください…。
いつも懲りずに赦しを乞うている気もしますが。

それでは、またこんど!


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