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調べる読書、仕入れる読書、考える読書

会社員時代から本をよく買っていたのですが、独立してからはより積極的に買うようにしています。組織から離れると圧倒的に情報が少なくなるからです。

例えば、最近は因果推論の邦書がたくさん出てきているので、Amazonでレコメンドされるたびに購入して読むようにしています。実務で利用するという意味もありますが、自分の理解がまだまだ追いついていないので量稽古しているわけですね。

このような読書は私の読書生活の中心になっています。ひとことでいうと「調べる読書」でしょうか。今日において調べると言えばWebサーチがお手軽なのですが、難解なコンセプトと対峙するときには本に頼るのが良いと思っています。

その一方で、調べる読書ばかりやっていると、自分の関心事に沿った本しか読まなくなってしまうという弊害があります。会社員時代であれば、自分が全く関心がないこともタスクとして降ってくるので本のジャンルが散らばりやすいのですが、独立するとそうもいきません。

そこで、自分の専門外、もしくは、隣接領域に積極的に目を向けなければならないと思うようになりました。ビジネス系の雑誌やニュース読んだり、本屋で新刊をチェックしたりしながら、関心を広げるようにしています。

例えば、独立後にハーバードビジネスレビューの定期購読をはじめました。一般雑誌を定期購読するというのは実に20年ぶりのことだったのですが、やってみると案外良いものだなと思いました。良質な記事が多いというのもありますが、クライアントが直面している課題や話題に自然とタッチできるというのがよいです。

また、ビジネス系ではNikkei FT the World、テック系ではNikkei Tech ForesightACM Tech Newstowards data scienceをたまに読むようにしています。「たまに」というのがポイントで、毎週読む!とか決めていると挫折してしまうので、緩くやっています。

この他マニアックな情報源として、フォーリン・アフェアーズ・リポートも時折読んでいます。こちらは会社員時代からちょくちょく雑誌を購入して読んでいたのですが、独立後にデータベース参照用のライセンスを購入しました。

いろいろ書きましたが、これらのニュースソースを読みながら自分の関心の外にある情報や書籍にリーチするようにしています。「仕入れる読書」といってもよいでしょう。

さて、このように調べる・仕入れる読書をやっていると、読むべき本が多くなっていきます。そうなると必然的に本一冊に掛ける時間は短くなっていきます。月に十冊以上読むとなるとじっくり読むことは不可能で、こちらに書いたようなやり方で情報を取る形にならざるを得ません。こうした方法は、現代の多忙なビジネスパーソンにとって基本的スキルといってもよいかもしれません。

しかし、その一方で、情報過多になると様々な弊害がでてきます。トレンドを追うばかりになってしまう、情報を集めるのに時間を割きすぎる、自分の軸がなくなってしまう……などなど。

この問題について、かのショーペンハウアーは次のように言っています。

どんなにたくさんあっても整理されていない蔵書より、ほどよい冊数で、きちんと整理されている蔵書のほうが、ずっと役に立つ。同じことが知識についてもいえる。いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜呑みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある。

ショーペンハウアー「読書について」

読書は自分で考えることの代わりにしかならない。自分の思索の手綱を他人にゆだねることだ。

ショーペンハウアー「読書について」

良書を読むための条件は、悪書を読まないことだ。なにしろ人生は短く、時間とエネルギーには限りがあるのだから。

ショーペンハウアー「読書について」

かなり手厳しい指摘ですが、本質をついていて胸に刺さります。読書に傾倒すればするほど自分の頭で考え抜くことから離れてしまうというわけですね。

ということで、調べる・仕入れる読書に傾きすぎたときには、ショーペンハウアーの言葉を思い出すようにしています。そして、自分の仕事や人生にって大切だと思える本を読み返しながら、自分と向き合う時間をとっています。いわば「考える読書」です。

このような形で日々楽しい読書生活を送っています。


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