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データ分析・機械学習の利用シーンを考えるための「デジタル技術利用検討マトリックス」

ビジネスシーンでデータ分析や機械学習を利用することは特別なことでなくなってきました。決して万能な道具ではありませんが、様々な形で利用を検討している人が増えている気がします。

私がデータサイエンスの世界に飛び込んだのはダベンポート教授の「分析力を駆使する企業」が出版されたころで、データの重要性が認知されつつあったものの、非Web企業においてはあまり活用が進んでいませんでした。しかし、ビッグデータ、AI、DXブームを経てデータ活用のホワイトスペースがどんどん埋まってきたように感じます。

その一方で、私はこの世界に入ってからというもの、データ活用が十分になされていない業務に技術を適用するプロジェクトばかりやってきました。例えば以下のようなプロジェクトです。

  1. 大量文書の専門的な仕分け作業を自動化する。

  2. SNSのデータを活用して災害の発生を検知する。

  3. 自然文で目的に合う文書やデータを探せるようにする。

  4. 見積作業の誤りを検知する。

  5. 休職・離職者の発生を予測する。

  6. 人事の配置をレコメンドする。

  7. ハイパフォーマーの特徴的な経験や属性を見つける。

今となっては見慣れたケースではないかと思います。しかし、私が取り組んだ当初はベストプラクティスがない状態でやっていましたので刺激的でした。その面白さは「どうやって分析するか?」というHowの部分もさることながら、「何に取り組むべきか?」という問題設定にこそあったと思います。前向きに言えば機会の発見ですね。

このnote記事では、新しい取り組みで技術活用の機会を探るためのヒントをお伝えします。


独自性が増すほど手探りになる

データ分析や機械学習の活用が進んできたとはいえ、新たなプロジェクトでこうした技術を活用しようとするときには、ゼロから利活用シーンの検討をすることが多いのではないでしょうか。

例えば、新規ビジネスの検討を考える場面です。また、何らかの開発プロセスにリーン的なアプローチを取り入れる場合も同様かもしれません。

こうしたプロジェクトでは、デザイン思考のような方法論を用いてビジネスのあるべき姿を描いた後、データ分析や機械学習などのデジタル技術の利用を検討するフェーズに移ることも多いのではないかと思います。技術は手段であり目的化するのは好ましくありませんが、デジタル技術がビジネス競争力を支える柱になりつつ今日では、検討は必要とされるでしょう。

このようなとき、初手として世の中の事例を集めることからスタートことが多い印象です。しかし、新しい自社独自の変革を考えていくと、そう簡単に適用できる事例がないというジレンマに当たってしまいます。誰もがコピーできる取り組みは企画の時点で難しいと判断されてしまうからです。
そのため、革新的な取り組みになればなるほど事例は参考程度にしかならないように思います

構想を実現するための技術活用

逆に言うと、新しい取り組みはコンセプトメイキングに知恵を絞っているはずですので、理想を描けている状況と言えるでしょう。製品開発であれば、現場観察やペーパープロトタイプなどを用いて顧客のペインポイントを理解しつつあるかもしれません。

このような構想の原型(プランA)の輪郭が見えてきたフェーズで、データ分析などのデジタル技術を取り入れて構想に厚みを持たせるような場面を想定してみます。

この場合、コアとなる取り組み、つまりビジネスモデルや組織変革構想の達成が最も大切になります。製品であれば価値提案、組織変革であれば変革の成功要因に技術が寄与するかどうかが重要になってくるわけですね。この点は強調してもしすぎることはありません。

その一方で、コアとなる要素の周辺に目を向けると様々なプロセスが存在することがわかります。例えば、モノ的な製品開発では販売の前に仕入れや生産などプロセスが存在します。ソフトウェアやSaaSではローンチ後の市場とのフィッティングが肝になるかもしれません。またマーケティングはいかなる商売においても存在する活動ですが、場合により組織変革でも社内マーケティングが必要になるかもしれません。

このように、構想を実現するため活動は多岐にわたります。そのため、データ分析や機械学習を利用する場面も広げて考えてみる価値はあると私は考えます。

利用シーンを考えるための2つの軸

そこで、視野を広げるためのヒントとして、2つの軸で考えてみることをおすすめしています。

ひとつは何のために利用するか?という軸で、大枠で「意思決定支援」「UX向上」に分けられます。意思決定支援は経営やビジネス施策のGO/NoGO判断や問題解決に寄与するものです。一方、UX向上とはエンドユーザーや現場に対する価値を高めるもので、結果として満足度や生産性の向上を目指します。

もう一つはどこをターゲットとするのか?という軸で、ざっくり「社内プロセス」と「プロダクト・サービス」に分けられます。端的に言うと、社内に目を向けたものか、社外に目を向けたものかということですね。

これらの軸を組み合わせると以下のようなマトリックスができあがります。これを「デジタル技術利用検討マトリックス」と名付けました。

デジタル技術利用検討マトリックス

構想を実現するために効果的な利用方法を4つの切り口で検討してみるのも一案です。また、アイデアがたくさん出てきて発散した場合も、このマトリックスに当てはめてみることで重視すべき打ち手が見えてくるでしょう。

データサイエンスの応用分野で出てくる取り組みをマッピングしてみると以下のようになります。近年私が注力してきたピープルアナリティクスは人事の意思決定支援が中心ですが、作業効率化や組織開発も含めるとUXの観点まで拡張されてきます。

デジタル技術利用検討マトリックスの例

また、冒頭にご紹介した私の過去の経験を当てはめると以下のようになります。一つを除いて概ねどこかに収まっている感じですね。また、左下のグロースハック領域がすっぽり抜けていることもわかります。これはあくまで例でありますが、抜けている領域について何かできることはないだろうかと考えてみるのも一案です。

デジタル技術利用検討マトリックスの例

まとめ

このnote記事では、データ分析や機械学習といったデジタル技術の利用シーンを検討するための視点として、「デジタル技術利用検討マトリックス」を紹介しました。私の過去の経験に基づくものなので厳密なものではないかもしれませんが、発想を広げたり整理したりするのに便利ですので活用してみてください。


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