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ピープルアナリティクスに関する投稿記事のまとめ

私はnoteで「ピープルアナリティクスの道具箱」というマガジンを運用してきました。人事データ分析の経験をまとめたものになりますが、もともとは社内の人事部門や分析チームメンバーからの質問に答えるためにはじめたものでした。

この記事では、マガジンの中を整理しつつ、分析シーンに沿ってまとめていきたいと思います。また、アップデート事項もこちらに記載していきます。

2023/10/26 追記★
事務所のサイトに本note記事を基にしたピープルアナリティクスに関する特集ページを開設しました。整理・加筆していますので、ぜひご覧ください。


そもそもピープルアナリティクスとは?

こちらがマガジンに一番初めに投稿した記事になります。当時は、社内でHRアナリティクスと呼んでいたのでこのようなタイトルになっています。

この記事ではそもそも人事データ分析とは何だろうか?という疑問に答えるものになっています。ここでは以下のように定義づけていました。

HRアナリティクス(ピープルアナリティクス)の主たる取り組みは人事施策に対するファクトに基づく定量的な意思決定支援にある

人事データと向き合う。HRアナリティクス事始め。|武田邦敬|KunihiroTAKEDA

この定義は自分の経験をもとに考えたもので、今もクライアント向けの説明で軸にしているところです。その一方で、ピープルアナリティクスの活用範囲を見るとも少し広がりがあるように感じています。具体的には、以下のような効用があると考えています。

  1. 勘・経験でなくファクトに基づく意思決定を行えるようにする。

  2. 人事に仮説検証型の業務プロセスを取り入れ、戦略人事を実現する。

  3. 人事部門内のオペレーション効率化を実現する。

  4. 従業員と人事部門のコミュニケーションを高度化する。

  5. 人事部門内の組織開発につなげる。

上の1.は先ほどの記事で述べたものですが、その他については別の記事に書いていますので、順にご紹介していきましょう。

仮説検証型人事を実現するためのピープルアナリティクス

こちらの記事はピープルアナリティクスとOODAの関連について述べたもので、人事部門向けアドバイザリ業務の中での気づきがもとになっています。

当時、社内の人事部門ではピープルアナリティクスのプロジェクトがいくつか走っていたのですが、分析プロジェクトの立ち上げに課題がありました。

データ分析には検証したい仮説がないとワークしないのですが、そもそも仮説を立てるという行為そのものが難しいという話があったのです。これは、今もクライアントから共感をいただいている課題でもあります。

そこで、ピープルアナリティクスに特化したテーマ設定のためのワークショップを開発し展開していきました。この中で、ある人事幹部の方がこうおっしゃったのです。

ピープルアナリティクスは人事に仮説検証を持ち込むものだね。ただ、よく考えてみると、データ分析云々の前に人事が身につけるべき基本動作ではないかな。

この言葉を聞いてまさにそうだと気づきました。目的と現状のギャップを考えて、課題解決の仮説を立てて実行すること。それはどのような業務でも必要な話です。そして、施策効果の計測が難しい人事こそ、データ分析の可能性にあふれていると気づいたのでした。


2023/11/14 追記★
ピープルアナリティクスにおける仮説検証の考え方を「DDDIサイクル」としてまとめました。こちらもご覧ください。

2023/11/24 追記★
仮説検証サイクルのどのフェーズからスタートすべきなの?という疑問にお答えすべく、簡易診断ツールを作りました。


ではどうやって仮説を考えて分析テーマを考えるのか、という点については次の記事をご覧ください。

分析テーマを考えるためのフレームワーク(TIHAM)

人事データ分析というと、まずはデータを集めてTableauやRで見てみよう!という方法論に目が行きがちです。しかし、データ分析で大切なのは、何のために分析するのか、分析によっては何を知ってどういうアクションにつなげたいのかという目的こそが重要になります。

データ分析、機械学習、AIなどなど方法論自体も魅惑的で私も大好きでありますが、目的なき分析はどこにもたどり着きません。

「労力をかけて分析するのだから目的が分からないなんてないでしょう?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、新しい応用分野になればなるほど、こうした手段と目的の取り違えが多いものです。

この問題を最小限にするため、ピープルアナリティクスの作業に入る前にテーマを整理するためのフレームワークを開発しました。覚えやすいかどうかわかりませんが、TIHAMと呼んでいます。

このフレームワークは①目的、②課題/アイデア、③仮説、④アプローチ、⑤施策を整理する簡素なものですが、かなり強力なものだと思います。特に、仮説検証後の施策を分析前に考えておくことができる点が重要です。

ピープルアナリティクスの切り口

データ分析の目的や問題設定が決まったら、分析アプローチを決めていくことなります。このとき、どのような切り口でデータを見ていくか迷うことがありますね。上の記事では、その切り口をざっと整理しマインドマップにまとめています。

例えば、ハイパフォーマーの経験を分析するなら、業績データと活動データや研修履歴を組み合わせて分析しよう、という風に考えていくわけです。このとき、そもそもどういったデータを活用できるのか押さえておくことはとても重要です。

しばしば「人事データだけだと分析が難しい」という方もいらっしゃいますが、関連システムのデータも含めると、組織内情報というのは相当に広がりのあるものです。

マインドマップを参考に考えてみてください。
きっとこれだ!と思う切り口が見つかるでしょう。

結構やっかいな人事データ分析の前処理

ピープルアナリティクスを実践する上で鬼門となるのが、データの前処理です。各システムに散らばったデータを集約・統合し、分析しやすい形に整える必要があるからです。上の記事では前処理の注意点について述べたものになっています。また、データ統合基盤の設計にもヒントになるでしょう。

人事データ専用のデータウェアハウスやデータマートを整備できればベストですが、これには時間とコストがかかるため、整備中の状況で分析に手を出すこともあるはずです。私もかつてそうでした。

まったく手つかずの分野でデータ分析を行うとき、概ねデータの前処理に苦労するものですが、人事分野は一味違う課題が潜んでいます。

一言でいうと履歴地獄&コード地獄。

私はSE時代に人事系システムの開発をしていたので勘所があって助かったのですが、そうでない方は面食らうことでしょう。上の記事を見ていただけるとイメージがつかめると思います。

どうやって分析していくのか?

データの前処理が終わるといよいよ分析に入っていきます。分析者に求められるのは問題設定に応じた分析手法を適用して評価し、洞察を得てレポーティングすることです。

上の記事では、エンゲージメント分析を例題に分析の流れを紹介するものになっています。トイデータ(デモデータ)も公開していますので、ぜひ見てみてください。

ChatGPTのAdvanced Data Analysisを使うと指示ベースで分析ができる時代になり驚いていますが、その指示や評価を適切に行うためには、人が分析に精通している必要があります。したがって、ピープルアナリティクスを実践する方は、様々な経験と独学を通して、分析アプローチを学ぶことが必要です。

かつて、私は未経験でデータサイエンティストになってしまったのですが、大変な状況に陥りました。30過ぎの手習いということで七転八倒したのですが、当時より格段に学びやすい世界になっています。

データサイエンス一般については、次のマガジンに記事を載せていますので、ご覧ください。


人事部門の作業効率化のためのピープルアナリティクス

ここまでは意思決定支援としての人事データ分析を考えてきましたが、オペレーションの効率化にも活用できます。分かりやすいところだと、所属別の時間外勤務状況を集計して部門に渡すような作業です。上の記事の「場面2」でこの点を議論しています。

こうした作業は人事総務関係にとって定常的な作業となりますが、思いの外作業コストがかかります。

人事システムや勤怠システムから何らかの方法でデータを引っ張ってきて、Excelを使ってゴリゴリ作業をし、共有ドライブやクラウドにファイルを格納して、メールで通知する……みたいな感じでしょうか。

これを効率化するためには①データ集約と加工、②データ集計、③データ可視化、④部門向け仕分け、⑤部門への通知の5工程のすべてまたは一部を自動化する必要があります。

いきなりすべてを自動化することは難しいかもしれませんが、例えば、最も手間がかかっているのが①②であれば、その部分をバッチ処理にする方法が手っ取り早い解決策になります。あるいは、②③④を手元のTableauのようなBIツールで加工することも効果的でしょう。⑤を実現するためには、データガバナンスの整理が必要になってきます。

こうした議論は勤怠に限らず、社内サーベイのフィードバックにも有効な方法論になります。

ピープルアナリティクスは人事内の組織開発につながる

人事部門の仕事は採用、配置、評価、人材育成、給与・勤怠、福利厚生など業務が多岐にわたり、ともすれば縦割り的な状況にあることもあるでしょう。ピープルアナリティクスを実践してきて感じたのは、効果的な分析を行うためにはこれらの垣根を飛び越える必要があるということでした。

例えば、社内の特定の職種のパフォーマンス改善に関する課題を議論していたとします。このとき、パフォーマンス改善のための人的な手段として人材育成だけでなく、中途採用や配置に議論がおよぶことはめずらしくありません。そして、各チームからの意見が交差してまとまらないことがしばしばあります。

このような場面においてメンバーに焦点を与えるのが「ファクト」です。ああじゃないか、こうじゃないかという議論があったとき、その想定をデータを使ってみてみるわけです。そして、それをきっかけに議論が前向きに進む場面を何度も目にしてきました。

ここまでの話は必ずしもデータだけでなく、従業員へのインタビューなども活用されるべきです。しかし、ピープルアナリティクスの視座を持つことによって、インタビューに関して客観性を担保するための視点が生まれます。

このように、ピープルアナリティクスの活動そのものが人事に何らかの前向きな影響を与え、ひいては人事の組織開発につながるだろうと私は考えています。

人事データ分析の参考書

最後にピープルアナリティクスに関する参考書をまとめた記事をご紹介します。この記事から2年近く経ちましたのでそろそろアップデートする予定です。

前半は技術的なもの、後半は人事業務そのものの本をあげています。記事のポイントはどちらかというと後半にあり、ピープルアナリティクスチームに新規に入ってきた分析者向けに示唆した内容となっています。ドメイン知識はとても大切ですよね。

まとめ

このnoteでは、私が過去に投稿してきたピープルアナリティクスに関する記事を整理してみました。この分野に入ってから4-5年が経ちますが、当初よりも盛り上がりを見せていてうれしいですし、まだまだ学びがいがある分野だと思っています。

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