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親の役目~お父さんお母さんは子どもたちのヒーロー

今から数年前の秋のこと。

お世話になった先生から
突然電話がありました。

聞けば
年長組の先生が
急きょお休みすることになり
今、新しい先生を
探しているとのこと。

「新しい先生が
見つかるまででいいの。
手伝ってくれない!」

ということで、
先生が見つかるまでの間、
私は幼稚園で働くことに
なりました。


さて、
その日も、
秋空の下
子どもたちと元気いっぱい
遊びました。

片付けの時間になり
冷たくなった手を
こすりながら
保育室に戻ると
Kちゃんが私を見て
笑いながら言いました。

「先生の手
おばあちゃんみたい!」

そう言われ
自分の手を見てみました。

ハンドクリームを
塗ることも忘れ
冷たい秋風の中、
子どもたちと
走り回った後の私の手は
本当にガサガサで
Kちゃんの言う通り
おばあちゃんみたいでした。

「本当だ。
おばあちゃんみたい」
私も一緒に笑いました。

その日
学校から帰宅した息子に
言いました。

「今日ね、幼稚園で、
お母さんの手
おばあちゃんみたいって
言われちゃった。
でも、
ホントに
おばあちゃんみたいだね」

私は改めて
自分の手を眺めながら
言いました。

息子は私の話を
黙って聞いていました。

「ちゃんと、
お手入れしなくちゃね」

相変わらず
息子は黙ったままでした。

しーん

……

ん?



息子の様子が 
何だか変です。 
さっきからずっと
うつむいたままで…。
よく見ると肩が、
小刻みに震えています。

どうしたんだろう?

息子の顔をのぞき込みました。
そしたら…

な、なんと!

息子は泣いているでは
ありませんか!

「どうしたの?」

驚いて尋ねると
息子は
すすり泣きながら
こう言いました。


「そんな…
そんなひどいこと言ったの…
だれだぁ…」

???

あぁ
そういうことか。

私は
ようやく
息子の涙の訳が
分かりました。

息子は
悲しかったのですね。

母親である私が
おばあちゃんの手みたい
と言われて。  

お母さんに  
そんなこというやつは
許せない…
そんな気持ちだったのでしょう。 

思いも寄らない展開に
驚きつつも
息子の優しさに
胸がいっぱいになりました。  

「大丈夫よ。 
お母さん、気にしてないから。

ごめんね。
○○が傷付くとは思わなくて…。

でも、ありがとう。

その子もね、
悪気があって言ったんじゃないのよ。
だってね、その子
お母さんのこと大好きなんだもの。
だから大丈夫」

誰だって
親のことを、
悪く言われるのは
嫌なもの。

父や母への
複雑な感情があった私ですら
親に対する悪口は
決していい気は
しないものでした。

特にも
小さいうちは
子どもにとって親は
どんなヒーローよりも
素晴らしい存在
なのだと思います。

お父さん力持ちだね!
お父さんかっこいい!
お母さんかわいい!
お母さんと結婚する!

子どもは
お父さんお母さんに
大きな憧れを抱くもの。


だからこそ、
小さな子どもの
親に対する憧れや夢を
親はそう簡単に
諦めてしまっては
いけないのだなと
この時思いました。 

若作りをするとか
出来ないことを
無理にやるとかではなくて
子どもを
がっかりさせるようなことを
あえて言ったりやったりする
必要はないのだと。

いずれ、
親を越えていくとしても
先に生まれたものとして
憧れや夢を
抱かせてあげるのも、
親の役目なのかもしれないなと。

あの時はまだ、
息子にとって
私たちは
キラキラと
輝く存在だったのでしょう。


あれから数年が経ち
小さかった息子も
思春期を迎えました。

一方私たちは
体力が衰え、
出来ないことも
増えてきました。

憧れられるどころか、
「お母さん大丈夫?」
と心配される始末。

それでも、
それでもまだ、
親として
出来ることはある。

信じること。
待つこと。

もう、
あれこれ
手出しすることは
なくなってしまったけれど
これから先
息子が悩んだり
道に迷ったりした時に
暗闇を照らす光で
ありたい
そう思います。

それが、
もしかしたら、
親としての、
最後の役目、
ゴールなのかな
そんな風にも思います。

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