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web3とは何ぞや?

2021年の熱狂的なNFTブーム以降、あまり話題に上ってこなくなったweb3。
一時期は、メタバースとブロックチェーンは相性がいいなどといわれて、いろいろごちゃまぜに話題になっていたこともあったのですが、このところChatGPTなど生成AIの影に隠れてしまった印象があります。
ところが最近、知り合いから「NFT売ったりしてるんだって? web3とかブロックチェーンとか教えてくれ」といわれて、ひとまずブロックチェーン界隈の現状を検索したところ、あれ?そうなんだ!とか、え、いまそんななってんの?とか思ったことを備忘録も兼ねて書きとめておきます。


web3とは

Web2.0の次はWeb3.0じゃなくて「web3」

マジで!? って、思いましたけど、web3はWeb3.0とは違うんだそうです。

どうも諸説アリっぽいので微妙っちゃぁ微妙なのですが、何が違うかザックリいうと、Web3.0と書くとこれまでのWeb2.0の延長っぽくなってしまうけど、ただの延長じゃない! って気持ちを込めてweb3と書くことになっているらしいです。
しかも、頭の「w」は大文字でなく小文字にするほうが、みんなが楽しくやっている感じがする(?)ので、Web3ではなくweb3と書くそうです。
ン十年前、iMacが出たときに「へ~、『i』は小文字なんだ~」って思ったアレがまた来ました。

web3のキモはブロックチェーン?

いろいろ読むと、web3は「さまざまなサービスがブロックチェーン上で動いている状態」を指していることが多いです。「ブロックチェーン上で動く」とは、例えばイーサリアムだと、イーサリアムのバーチャルマシンEVM上でSolidityなりVyperなりで書かれたアプリケーションが動いているということ。
Bitcoinの説明でブロックチェーンをよく「分散台帳」とたとえられますが、イーサリアムのような仮想マシンが動作することを前提としているチェーンの場合は、台帳ではなく「分散型の状態マシン」なのですね。
全アカウントとそれぞれの残高に加えて、仮想マシンの状態も保持しているというわけです。
でもこれ、マイニングに参加している大量のコンピュータが全部同じ内容のデータを持ってるわけですよね。
よくまぁそんなんでうまく動くなと思いますが、なんか成り立っているんですよね。

このブロックチェーンといい、生成AIといい、最近は、超大量のコンピューティングリソースを湯水のように使いまくるのが流行りなんですね。
コンピュータで遊ぶと言えば、8bitマイコンをユニバーサル基板に半田付けして、7セグメントLEDを光らせて遊ぶぐらいだった時代から、半世紀も経たずにこんな時代になるとはねぇ~。
あのころは、128バイト(128kではない)にどうやってプログラムとデータをうまく詰め込むかなんてことを一生懸命考えていたのですが……

web3のキモは『コミュニティ』

さて、web3というのは、単にブロックチェーン上でサービスが動いていることではなく、これによって引き起こされる社会変容や、その結果生まれた新しい社会そのものを指すのだという人たちもいます。
ブロックチェーンは「分散型」つまり「中央集権型ではない」という特長があります。なにか決める時は多数決(あるいは多数決に似た手段)で決めます。これは「コンセンサス・アルゴリズム」といわれるもの。
更にこれらは「トラストレス(信用不要)」で実行されます。つまり参加者についてお互いを信用している必要はなく、だれでも参加できるということ。

中央集権的ではなく、誰もが参加できる……
あ、これ、なんか懐かしい。

そう、Web2.0といわれる以前(Web1.0?だった頃)に、「これからはフラットでウェブなんだよ!」って、よく言ってましたよね。
日本ではJリーグが始まった頃と重なるので、野球型からサッカー型なんて表現をしている人もいて、少し企業経営者たちの都合のいい解釈に偏っていたような気もしますが、元々はインターネットが普及することによって、既存の地位や階級に関係なく、フラットに情報交換ができるようになった!という話だったんですよね。

日本ではあまり馴染みがないのですが、アメリカではインターネットどころか、パーソナルコンピュータもなかったころの、ヒッピー文化から連綿と続くカウンター・カルチャーがベースになっているようで、日本人が思っている以上に「フラットである」ことはとても重要。
スティーブ・ジョブズも強く影響を受けたといわれる、スチュアート・ブランドの『ホール・アース・カタログ』なんかはその象徴で、とにかく人類はみんなフラットなんだ!という思想があるわけです。

そのころLSIの高集積化が進んで行ったという時代背景もあって、スティーブ・ジョブズをはじめとした当時の若者たちに、後のパーソナルコンピュータへとつながる電子機器への興味と共に、表現型をさまざまに変えつつも、根底にヒッピー思想的なものが流れていたというか、半ば宗教的にしみ込んで行ったんですね。
つまり、この頃のコンピュータ・ギークやコンピュータ・ナードと呼ばれる人たちが持っている思想基盤とブロックチェーンは、どうやらとても相性がいいようです。

コミュニティ!

ブロックチェーンとは無関係に、見た目から露骨にギークでヒッピーなリチャード・ストールマンはこういいます。

「あなたとコミュニティの自由を尊重するソフトウェア——それがフリーソフトウェアだ」

https://japan.zdnet.com/article/35012377/

ストールマン節、出た。

Free Software Foundationの開祖様なので、何かにつけフリーソフトウェアに触れるのは当然なのですが、

あなたコミュニティの自由を尊重する」

このあたりがポイントかなと思います。
フリーソフトで尊重されるのはあなたの自由だけではなく、「あなたとコミュニティの自由」なのです。

昔っから言うんですよね。
この界隈の人たちは常に「コミュニティ」という言葉を口にします。
このあたりの真意はちゃんと理解できていないのですが、たぶん、中央集権的な社会を否定するということは、既存の権力に逆らうということでもあり、一人で権力に逆らうのは無理。あるいは、一人で逆らっているつもりになっていても意味がないということかもしれません。
とにかく常に、コミュニティを意識しているのです。

SNS時代に入って「コミュニティ」の響きも多少カジュアルなものに変わってはきているものの、例えばDAOに代表される、ブロックチェーンを使って中央集権的ではない誰もが参加できるフラットなコミュニティを作ろうという動きなどは、ストールマンたちが口にするような「コミュニティ」をイメージしているように感じます。

これまで通貨は国家が価値を保証することでのみ成り立つと思われていました。
しかし、数学的に希少性を保証することで単なる数字に価値を与え、ブロックチェーンというオープンな仕組みで改ざんを防ぐという方法で、仮想的に通貨に似たものとして扱えるシステムを生み出してしまった。
今度は、この技術を使って、中央集権的でない、つまり国家的でないコミュニティーを仮想的に作ろうとしています。
国家を丸ごとDAO化しようとか、DAOで国家を作ろうという幾分荒唐無稽とも思える話もありますが、それとは別にもう少しリアルな話として、中央集権的な力の及ばないコミュニティというのは、いわば国みたいなものだよねという意味で、DAOは国家であると表現する人もいます。

日本では戦後のベビーブーマーたちは、団塊の世代と呼ばれ、安保闘争などの学生運動を通じて既成権力に反発しますが、その後の高度経済成長の中に巻き取られ、むしろ中央集権的な力を強化する方向へと進みます。

アメリカのベビーブーマーたちは、一見無秩序でだらしないようにも感じるヒッピー文化を生み出すことで既成権力に反発し、更に次世代の若者へその思想を引き継いで行きました。

高度経済成長とバブル景気の中で育った筆者には、世界中の若者たちが権力に反発した1960年代を体験していないので、理解しきれないところがたくさんあるのですが、どうやら、web3のキモは先人たちがずっと心の中に描いていた理想の「コミュニティ」にあるようです。


最近の動き

zkEVM(zero-knowledge Ethereum Virtual Machine)

ざっくりいうと、ゼロ知識証明(ZKP)という技術を使って、EVM(Ethereum Virtual Machine)のスケーラビリティを確保しようという技術です。
既存のEVMではスマートコントラクトが正しく実行できていることを確認するために、スマートコントラクトをオンチェーンで実行します。
オンチェーンで実行するということは、数千のノードからなる分散型ネットワークに対して、スマートコントラクトと状態の計算を個別に実行させて突き合わせることになります。
ゼロ知識証明という暗号技術を使えば、イーサリアムのネットワーク外でコントラクトと状態の計算を実行して、イーサリアムノードは、計算そのものではなく、計算と状態の簡潔な証明を処理するだけでよくなります。
これで、スマートコントラクト実行時の各ノードの負荷が小さくなり、スケーラビリティが確保でき、更にガス代も安くなります。

日本発

2022年1月にローンチされた日本発のブロックチェーン「Astar Network」が、いろいろ話題になっています。
今月半ばに、ポリゴンと提携して、Astar zkEVMを立ち上げたと発表しました。
技術的な話だと、上記のようなzkEVMが使えるようになるので、エエやん、エエやん。なのですが、元々、Asterはイーサリアムとは別のポルカドットのパラチェーンとして構築されていたので、こちらとの関係はどうなるの?など、いろいろ今後の展開が注目されています。
そんな中、Astar Network創設者の渡辺創太氏が設立したStartale Labs Pte Ltdがソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社と協業して、Web3プロジェクトのインキュベーションプログラムを開始するという発表もあり、
目が離せない状況になっています。

ステーブルコイン

ステーブルコインとは、価格の安定性を実現するように設計された暗号資産(仮想通貨)のことですが、Binance Japanと三菱UFJ信託銀行が共同で、2024年中をめどに、Progmat Coinという新たな日本法に準拠したステーブルコインの発行を検討しているというニュースがありました。
こちらは主にB2Bでの利用を想定しているようですが、JPYCとの関係など、今後どうなっていくのか気になります。

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