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伝説の魚料理屋

 チェーン店に入りたくない時がある。普段はよく利用する。なんなら、毎日ってくらいチェーン店を利用していたこともある。
 でも、ふと「今日はチェーン店嫌だな…」って思う時がある。


 その日は好きなアーティストのライブ帰りだった。

 友人と歩いているときに「夜飯食べるか」という流れになり、ライブ会場から夕飯がありつける場所を探していた。

 別に何を食べたいかでは無く、友人とライブの感想を話しながらダラダラ歩いていた。

 その時、ふと視界に魚料理屋の看板が見えてきた。

 「どうしよう。ここにしようか?」

 結局、他に候補もなかったのでその店に入った。


 そこは少し薄暗い優しい雰囲気の店だった。僕たちは2人だったが、お客さんも少なかったので4人掛けの席に案内された。

 横の席に荷物を置き、とりあえず飲み物を、と。友人はビール、僕はウーロン茶を注文した。

 飲み物が届くまでの間にメニューをどれにしようか、友人と相談した。
 そもそも僕自身、居酒屋などに行くのが少なかったので豊富やメニュー量に困惑して、少し選ぶのに時間がかかった。

 家でも食べる鮭を選んで、味の違いを堪能しようか。少し贅沢して鰻などを食べてみようか。

 そして最終的にメニュー表にデカデカと写真が張り付けてあったホッケを選んだ。

 落ち着いた空間も相まって優しい気持ちで食事することができた。
 ライブ帰りの飲食店ではだいたいライブの振り返りをするものだが、その空間ではその空間が素晴らしいという会話で盛り上がった。

 1時間くらいで食事を済ませて店を出た。美味しかったな。また来ようという話をしてその日は別れた。

 消えた

 後日、また行こうとしたらその魚料理の居酒屋が無くなっているのだ。

 場所を確認したわけではない。そもそも場所を覚えていない。
 Googleマップで探しても見つからない。店の名前も覚えていない。八方塞がりだ。

 あの店はライブ終わりにしか出会えない伝説のお店なのだろうか…。

 いつかまたライブがあった日には同じルートを歩いてみようと思う。


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