詩 〈花〉

月夜の下の 橙の花
月の光とは違う あたたかな明かり

ただ 月と花と 優しい風だけが在った

花も寒いと感じるのだろうか
花も暖かいと感じるのだろうか
月を見て 美しいと感じるのだろうか

滴る夜露に誘われるように
こうべを垂れるその花は

自らの美しさに 気づいているのだろうか

いつしか花の周りには
夜露が小さな海をつくっていた

花は海に写った自分を見て
自分もあの月と同じくらい美しいのだと知った

風が運んできた 優しい雫

それは花をよりいっそう輝かせる

自分の美しさと
やさしい明かりに気づいた花は

どこまでも続く星空の下で

どこまでも美しく咲き続ける

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