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#2 誰かを好きになると云うこと。

恋とか愛とか、誰もが抱く普遍的な感情も、生まれてきた国や時代にって罰を与えられたり迫害を受けたりする。

アフリカ東部ウガンダで2023年5月末に反LGBTQ(性的少数者)法が発効した。この法案は世界で一番同性愛に厳しい罰則が設けられ、最高刑は死刑だ。

恋に気付いた時、その相手が同性だったら罪と見做みなされる。
ただ誰かを好きになっただけなのに。

同性同士で性的関係を持つこと自体ウガンダでは既に違法だが、規制が更に強化されたかたちだ。法律を複数回違反したり、HIV(エイズ)ウイルス感染者の同性と関係を結ぶと死刑が適用される。
デモなので同性愛を促進した場合でも禁錮20年が科せられる徹底ぶりだ。

恋とか愛とか、人が人を好きになる普遍的な気持ち。そんな基本的人権及び基本的権利も、国の権力者の主義主張ひとつで塞ぎ込まれてしまう。
ただ誰かを好きになっただけなのに。


だけど、有史以来自由な恋愛が認めらた歴史の方が短い。
英国イギリスや欧米で19世紀にキリスト教徒的結婚観を否定し始めた自由恋愛主義者が個人の意思と愛情に基づいて選んだ相手と結ばれる運動に端を発し、日本では明治の時代に自由恋愛の概念が生まれたとされる。政略結婚や親が決めた見合いが常とされていた結婚に、まずは芸術文化などから自由恋愛主義のアプローチがなされた。

現代は恋にいて幸福な時代と言える。しかしながら、マイノリティとされる人たちがいるのも事実。LGBTという言葉が誕生したのは1988年頃のことだ。デモや啓蒙活動にって少しずつ社会的尊重を得ていった。しかし……。

ただ人を好きになる。そんな普遍的な気持ちを社会に認められるために戦った人達がいる。そして戦いはまだ終わらない。

ただ人を好きになる。その相手が同性というだけで社会的には認めてくれない国や地域が多数ある。
同性婚及びパートナーシップ制度で同性カップルの権利を保障する制度を有する国や地域は2023年6月末にネパールが仲間入りを果たしたが、国連加盟国196カ国に対して、たった35カ国しかない。(※)
同性婚及びパートナーシップ制度で同性カップルの権利を保障する制度が無い国や地域で生まれた恋は、人様に見つからないように、ひっそり育むしかないのか。ウガンダほど劣悪じゃなくても、公には認められない愛。きっとあなたの「好き」も、わたしの「好き」も、同性愛の方の「好き」も、人を思う「好き」としての気持ちとなんら大差がないのに。
世界中にたくさんある恋とか愛とかと同じなのだ。


この国のLGBTを取り巻く環境はどうだろう。
先進7カ国の中で唯一LGBTに対する差別禁止法案が無かったこの国で、ようやく「理解を促進」する法案が2023年6月23日に公布された。差別を禁止するのではなく、あくまで理解を促進する法律とニュアンスが弱い。政権与党の主義主張が反映された法案だ。
法案の正式名称は『性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律』と、とっても長い。性的少数者に対する理解を広める為の基本理念を定め、基本計画の策定などの事項を定める為の法律だそうだ。要するに、まだLGBTに関する法的な取り決めは始まったばかりだ。そもそもこの国では一般的な男女の恋愛だって停滞している(未婚化、晩婚化、少子化)。

異性との恋愛だって運命の人に出逢うのが大変なのに、少数の同好同士が結ばれる奇跡。社会情勢や他人ひとの目を気にせず、オープンに「好き」が好きな人に伝えられる。そんな素敵な奇跡を世界が早く認める時が来れば良い。
本当は恋とか愛とかに、正しいとか正しくないとか、誰かの許しが必要だとか法律の制定だとか、そんな億劫な規律に縛られない自由でパーソナルな気持ちが、恋とか愛とかなのだ。

おとこ同士だとかおんな同士だとか叶わぬ恋だとか両想いだとか全部ひっくるめて、好きになってしまったのだから仕方がないじゃないか。


恋せよ、なんじ





出典 (※)世界の同性婚/NPO法人EMA日本


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