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Vol.3 GPSデータの基準作り どのようにターゲットを設定する??

最近のハイパフォーマンススポーツでの負荷管理には、GPS(or GNSS) が使われている現場がかなり増えています。
その中でも、どのように負荷を管理していくか、どの様にターゲットを設定していくかは現場の課題のように感じています(筆者も日々検討しています!)。

そこで、今回はGPSデータを使って、チーム全体だけでなく、選手個々に合わせたExternal Load(外的負荷)の設定のやり方を提案している論文があったので、そちらを紹介させていただきます。

ACWR(Acute to Chronic Work Load Ratio)は、日本でもよく聞くようになりましたが、今回紹介する、Game Basedでの%設定を行うような負荷管理は、まだあまり聞かない印象です。
※おそらく日本語での情報が少ないからでしょう。

ということで、気になる方は下記文章を見てみてください!

⇩原文は下記になります
How to Use Global Positioning Systems (GPS) Data to Monitor Training Load in the “Real World” of Elite Soccer
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2020.00944/full


ここから、日本語略です!
原文の導入部分は飛ばしています。興味のある方は原文へいってみてください。



PLANNING THE TRAINING LOAD FOR THE WHOLE TEAM WHILE RESPECTING INDIVIDUALIZATION
.~個性を尊重しながら、チーム全体のトレーニング負荷を計画する~


The Importance of Analyzing Game Performance for Determining Training Load Reference Values for Each Player.
各選手のトレーニング負荷基準値を決定するためのゲームパフォーマンス分析の重要性。



試合中の各選手の身体活動のプロファイルは、シーズン中の試合中に記録された身体的要求に従って、月間、週間、日ごとのExternal Loadを計画するために使う(Stevensら、2017;Martín-Garcíaら、2018)。

↑の目的のためには、試合の基準値(Gref)を個別に数値化する必要があります(Akenhead and Nassis, 2016)

個々のGrefには、今シーズンだけでなく、前シーズンの公式戦データも含まれます。
External Loadのモニタリングに使用されるGPSパラメーターを決定するために、Grefは公式戦で記録された最良の5つの値の平均値として算出する(最も高い身体的負荷の試合に備えるために)

新しい選手については、Grefを作成するか、文献からの参照データ、または同じ競技レベルの前シーズンの値を使用する。

下記、表2に示す例は、試合中の選手のピッチ上のポジションに応じた身体的要求の値を強調している(UEFAチャンピオンズリーグのU-23チーム)。

Scheduled Plans With Reference to Games Performance
~ゲームパフォーマンスを参考にしたスケジュールプラン~

各GPSパラメータのゲーム基準値により、スタッフは集団レベルと個人レベルの両方でExternal Training Loadをプログラムすることができます。(Rago et al., 2019b)

External Training Loadは、ゲーム基準値のColective weighted factor(のちに記述)によって、各GPSパラメーターから算出される。

Grefは、各選手ごとに異なるので、External Training Loadは個別化される。(Ingebrigtsen et al., 2015)
各選手のExternal Training Loadは、GPSパラメータの性質に応じて、メートル(距離)またはイベント数(回数)で計算されます。

例えば、高強度ランニングであれば、m単位で計算され、加減速では、達成すべき回数が算出される。

Grefに重みづけ係数(例えば、1週間の総走行距離であれば3.2倍)を乗じることによって、External Training Loadを集団的かつ個別にプログラムすることができる。

Monthly(月間)

最初の4週間は徐々にExternal Training Loadを漸増し、目標とするHigh Chronic(4週間) Training Load値に達する。

オランダとイギリスのプロサッカーで記録されたデータから、Chronic high Total distanceは最大115000m,  Chronic High Speed Run distanceは最大3727m, Sprint distanceも混ぜたものでは、最大6173mとなった(Jaspers et al., 2018; Bowen et al., 2019)
※それぞれ4週間での、Total Volumeのこと。

加速と減速の回数については、各メーカーによってフィルターが適用されているため、文献からのデータを使用することは困難である(Varley et al.)

これらの公表データから、我々は1週間に1試合を想定した月間計画を提案する(図)。

各週に各GPSパラメーターについて、GrefをWeekly Factor[Fw(i)]で重みづけし、Weekly External Training Load(WTL)を算出する


Fw(i)は、文献に記載されているHigh Chronic Training Loadに達するように任意に選択される。

「式」 WTL = Fw(i)× Gref
WTLは、Weekly External Training Load
Fw(i)は、週ごとの加重係数
(i)は週数
Grefはゲーム基準値

上記、図は、4週間のトレーニング計画を示している。
総走行距離、High Speed Running, Sprint, 加減速の回数は、最初の3週間でFw(i)の増加によって徐々に増加し、4週目には減少する。

例えば、High Speed Runは、Fw(i)は1週目で1.8倍、2週目で2.0倍、3週目で2.2倍、第4週目で1.6倍であった。

External Training Loadの増加は、週間で約~10%の増加に相当する。
この週間での10%の増加は、ACWRでいう0.8~1.20の間を保証する(Gabbett, 2016)

下記、表3に示した例は、4つの異なるピッチポジションの週間データを示している。
External Training Load計画は、集団的なフレームワークである。しかし、In the Real world(現実世界)では、個々の特殊性により、毎月のExternal loadを個別に調整せざるを得ない(後程、External Loadの個別調整について説明)

まとめると、External Training Loadは、月単位で漸増し、より大きなより高いchronic external loadへ到達できるように計画されるべきである。
ゲーム基準は週単位で重み付けされる(例えば、第1週は総走行距離×2.8、第2週は×3.2、第3週は×3.4、第4週は×2.6)

Weekly

週間トレーニングスケジュールは、試合日(GD)を中心に編成される。
トレーニング日は、試合日の前後にトレーニング可能な日数に基づいてスケジュールされる(つまり、試合日からマイナス、またはプラス表記;Clemente et al.)
試合の身体的需要に応じて、External Training Loadを適応させるために(下記参照)、週は試合日に開始し、試合日-1に終了する。
そして、公表されているデータに従い (Malone et al., 2015; Akenhead et al., 2016; Stevens et al., 2017; artínGarcía et al., 2018)、週のExternal Training Loadは、各トレーニング日に任意に配分される。

各日、各GPSパラメーターについて、Grefを日毎の任意係数[FGD(i)]で重みづけし、日毎のExternal Training Loadを計算する。

「式」 DTL = FGD(i)× Gref
DTLは、各日のTraining Load
FGD(i)は、日毎の重みづけ係数
(i)は日数
Grefは、ゲーム基準値

月間Training計画と同様に週間External Training Load計画は、集合的な枠組みではあるが、In the Real worldでは、各日およびGPSパラメータにおいて、計画(TLplan)と現実(TLreal)との間に差異が生じる可能性があり、これをTLdiff(i)と呼ぶ(式3)

(式3)TLdiff (i) = (TLplan− TLreal) (3)

各日においてのTLplanとTLrealの差は、その後の日のFGD(i)で比例分配(相対的に分配)される(図3)
FAGD(i)と名付けられた荷重係数も計算される(式4)

FAGD(i) = FGD(i)/ ∑(FGD≥(i)) (4)

最後にそれぞれの日に、TLadj(i)が計算され、その後の日に比例分配される。(式5)
TLadj(i) = TLdiff (i)× FAGD(i) (5)

TLadj(i)は、ある日のTLplanとTLrealの間でのExternal Training Loadの差である。
FAGD(i)は、Daily TLplanとDaily TLreal間での差に対する係数である
FGD(i)は、日の加重係数(daily weighted factor)である。
∑(FGD≥(i)は、それ以降の日の加重係数の合計である
(i)はその日の番号
≥(i)は、事後値であり、(i)を含む。

表4は、4つの異なるポジションでの、試合日後のTotal distance, High Speed Running, Sprint, Acceleration, Decelerationの例を示している。

試合当日のTLplanはGref(推定値)であり、TLrealはランダム(実際はわからない)である。

この表の括弧内では、週の試合のExternal Training Loadの個々の分布を%で表したものである。(推定値よりもOverだった場合は+, 推定値よりもUnderだった場合は-となる)

週終わりの Game day -1のTLplanは前日までに記録されていたTLrealの結果である。
これはテクニカルスタッフが必要であれば、最後のトレーニングセッションを適応させる情報となる。
例えば、もしGame day -1において、(Game day + (Game day +2) + (Game day +3) + (Game day +4) + (Game day -2)のHigh Speed Running Distanceが計画よりも高い場合に、テクニカルスタッフは、戦術目標を維持しながら、高速走行距離を減少させるために、ピッチ面積を減少させることを選択することができる。

まとめると、External Training Loadは週単位で計画することを推奨する。
Game Referenceは、日毎のファクター(例えば0.6)を使って、重みづけする必要がある。
これは、個々のレベルで実現され、TLplanとTLrealを考慮したアルゴリズムに従って調整されるべきである。


Daily

トレーニング前に、テクニカルスタッフに従って毎週計画されるExternal Training Loadに関して、その日の全体の目標を達成するためにトレーニングセッションをプログラムする。

トレーニングセッション中の継続的なフィードバックにより、TLplanに関連したExternal TLを、全体にも個人にも「リアルタイム」で調整することができる。

この調整は、全体的にはゲームルール、ピッチエリア、運動時間を修正することで対応でき、個人にはその日のTLplanを達成するために特定のフィジカルエクササイズを追加することで対応できる。

全体のエクササイズと、特異的なフィジカルエクササイズは、試合の身体的要求を満たすようにプログラムされる。

そのため、各選手において、1分あたりのHigh Speed Run, Sprint, 加速,原則を継続的に評価し、運動の特異性を確認する。

図4は、月間External training Load計画の2週目のGame day + 3 におけるトレーニングの例である。

各Grefは、Total Distance(0.65), High Speed Run(0.2), Sprint(0.1), 加速(0.9), 減速(0.9)で重みづけされている。
言い換えれば、それぞれGrefの60%, 20%, 10%, 90%, 90%を表している。

このトレーニングセッションは、テクニカルスタッフが定めたフィジカル(加速/減速に特化した持久力など)、テクニカル(ハイプレッシャーをかけたプレー)、タクティカル(プレスゾーンや組織形成など)、メンタル(集中力など)の各目標を組み合わせたもの。

トレーニングセッションの最後に、TLplanに達しなかった選手には、オプションとして2つの特定のフィジカルエクササイズが割り当てられた。
この例では、4つの異なるポジションの値が表5に示されている。

したがって、TLplanに到達するようにトレーニングセッションを組み立てることが推奨される。
トレーニングセッションを開始する前に、各選手について目標とするTLを算出する必要がある。
さらに、選手が算出されたTLに到達するのに役立つ特定のエクササイズを処方することもできる。

Adjusting Individually External TL
External Training Loadの個別調整

年齢、身体的コンディショニング、負傷歴など、チームの多様性が大きいため、各選手のExternal Training Loadを個別に設定する必要がある。
まず、External training Loadは、全体の週単位の加重係数[Fw(i)]と日単位の加重係数[FGD(i)]によってプログラムされる。

その後に、各選手のニーズを満たすために、Fw(i)とFGD(i)を個別に設定し、全体のExternal Training Loadに対して、External Training Loadを増加させるか、減少させる必要がある。

身体的パフォーマンスとトレーニング負荷の適応評価は、External training Loadを月単位、週単位、日単位で個別に調整するために使用される。

毎月、Submaximal aerobic test(例、時速12km/hで4分間走)と、カウンタームーブメントジャンプにより、選手の有酸素運動と神経筋のパフォーマンス状態に関する情報を得る(Halson, 2014; Buchheit et al.)

毎週、試合当日+3、heart rate variability during an orthostatic stand test 起立性スタンドテスト中の心拍変動(Ravé and Fortrat, 2016; Ravé et al., 2020)、血中クレアチンキナーゼ(Hader et al., 2019)は、試合からの回復に関する情報を提供する。

毎日、トレーニング前にwellbeing アンケート(例、筋ダメージ、疲労、睡眠の質など)(Malone et al., 2018b)、トレーニング後にSession RPE(例、ボルグスケール)を実施することで、選手が各トレーニングセッションでの負担や適応をどのようにチックしているかについて情報を得ることができる。

これらの情報は、実践者が選手に影響を及ぼすExternal Training Loadの管理について、「正しい判断」を下すのに役立つ。

この処方箋は動的で適応性があり、ユニークな状況が発生した場合には、「現実世界」に従って日々更新・調整することができる。

まとめると、
コーチは、観察されたExternal training loadの適応とともに、身体的パフォーマンステストの結果に応じて、加重係数を個別に調整することができる。

サッカーの試合のデータを含め、毎月、毎週、毎日のレベルで、内的および外的TLデータを継続的に収集することは、TLをよりよく管理(例えば、増加または減少)するのに役立つ。


Limitations, Strengths, and Practical Applications

この実践的なアプローチは、「現実の」サッカー練習中のトレーニング負荷をモニターするために、スポーツ科学の知識を用いて理論的な枠組みを構築しようとするものである。
しかし、議論された重み付け係数[例えば、Fw(i)やFGD(i)]については、いくつかの限界があることを認めなければならない。
より具体的には、これらの係数は、発表されたデータや既存のモニタリングデータから、研究チームが任意に選んだものである。
これらの重み付け係数[例えば、Fw(i)とFGD(i)]の精度を上げるための科学的プロセスをより正確に定義し、検証するためには、今後の研究が必要である。

しかしながら、ここで論じた実践的なアプローチは、我々の知る限り、科学的な勧告と現場での実際のコーチング経験を組み合わせようとした最初の出版物である。
このような複合的なアプローチは、外部TL処方のための実践者の作業視点を開くことができる。
実際には、使用するGPSデータの信頼性を確認することが重要である。

さらに、選手はトレーニングセッションでも試合でも、シーズンを通して同じデバイスを使用する必要があります。
関連するGPSパラメータを任意に、または個別に閾値を設定して選択した後、使用するパラメータは全シーズンにわたって同じであるべきであり、パラメータを変更することは推奨されません。

使用される各GPSパラメーターのゲームリファレンスは、各選手に固有のものです。

外部 TL の集合的な計画は、月、週、日単位で更新される。

最後に、選手の外部TLの調整は、身体的パフォーマンステストとトレーニング負荷の適応の結果を考慮しながら、TLplanとTLrealの差に依存します。


Conclusion

GPSは、プロサッカー選手における外部TLを追跡するための有効かつ信頼性の高い適切なツールである。

これまでの科学的勧告では、傷害のリスクを軽減し、選手の身体的パフォーマンスを最適化するために、TLをモニタリングすることの重要性が強調されてきた。

この意見書では、エリートサッカー選手において、集団(すなわちチーム)および個人の両方において、GPSデータを使用して外反長径を分析し、処方し、コントロールする方法について、アプローチを提案しました。



最後に、
この方法は私自身もチームで実践していて、今のところ負荷管理の中では手ごたえを感じている手法になります。
もし、よくわからないや実際にどのように実践しているか気になるなどありましたら、コメント欄にコメントお願いします。 ⇦X(旧:Twitter)の方にDMをください!
個別で資料等お見せします。


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