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車の旅

「クマキ、俺車買ったよー」
「うわー、凄いなぁ。」
社会人2、3年目だったはずである。
友人は関西から、私に電話にてそう話した。

この友人は大学時代からの付き合いである。
大学時代中、共にバカをした。
先輩にアホなことをして一緒に怒られたり、
お酒の席で、無茶をしたり
好きな人のことでウダウダしたり
勉強のことや、考え方のことで議論した。
喧嘩もしたかもしれない

私は
その友人の事を面白いやつだと思ってた。
非日常的な事を厭わずやれる
そういう、私の憧れる人だと

社会に出て私は
自分の平凡の才に、苦しんだ
もっと言うと、普通の人のできる仕事がうまく出来ない、いわゆる仕事の出来ないやつだったし、さらに苦しんだ。

そうやって、心が折れるたびに、私は、良くその友人に電話をした。
だいたいの話を聴いてくれるやつだった。

私は結婚をした。
結婚は思っていたよりもずっと、互いの違いを認め合うという、私が逃げてきた事の連続であった。
妻はよく出来た人で、だから、私のだらし無さを良く注意した。
毎日、自分の出来なさを痛感する生活だった。
しかし、その友人は私を凄いと褒めてくれた。結婚は俺には出来ないとも言い、だから、私は良くできていると言っていた。

ある日の電話が冒頭の話だ。
関西に転勤になってから数ヶ月経った日であった。彼は買ったばかりの車で東京まで来ると言う。長旅だな、と言うと、友人は

「クマキに、会いに行くんだよ」
「お、おう、ありがとう」

そう言って友人は照れて、じゃあなと電話を切った。
なんだよ、お前は本当に色々と、、、、

社会人になってからは、彼は私の心をなんども助けてくれた。
そう、
彼は優しいやつだ。


良い旅を、ゴールで迎えるよ!
いってらっしゃい。



#エッセイ#随筆
#旅する日本語
#差添い
(さしぞい)・・・人を助け守るために付き添うこと、まさその人。

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