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遠くからながめる息子は、三割増し。

先日、縁あって次男がラジオ番組に出演した。

関西ではおなじみの某ラジオ局。噺家さんがパーソナリティをつとめる生放送だ。15分ほどのコーナーのゲストということで、大学の先輩と一緒に参加することになったのだという。

ちょこっと出演して二言三言ぐらい話して終わりかな…と思いながらも、とりあえず家族のグループLINEで姉や弟に宣伝。ひとりそわそわしながら、ビールを用意し、おつまみも並べてはじまりを待つ。

あらかじめ知らされていた時間通りにコーナーがはじまり、いよいよ先輩と次男が登場。ラジオから聞き慣れた声が聴こえるのは、本当に不思議な気分だ。

まずは、それぞれが自己紹介。噺家の方が色々と質問をしてくださり、場が盛り上がる。次男は緊張した様子ながらも堂々と話している。

15分はあっという間。気がつけば、用意したビールは手つかずのままぬるくなり、私はスマホを握りしめて聴き入っていた。

コーナーが終わっても、しばらくはぼーっと余韻にひたる。うれしい。なんだか、とってもうれしい。

プロの噺家さんと一緒にラジオブースに入るだけでも緊張することだろうに、しっかりと受け答えをしていたこと。そして、自分が知らない、自分が思っていた以上に成長した次男がそこにいたことがうれしかったのだ。

こういうのもまた、親孝行っていうんやんなぁ…としみじみビールを飲む。ぬるい。ぬるいけど、おいしい。

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こんなふうに、ちょっと離れた位置から子どもを見てみると、なんだか3割増しぐらいに立派に見えるものだ。そして、自分の知らない姿、思った以上に成長している姿に感動してしまう。それは、これまでに何度も経験してきたこと。

たとえば、保育園の発表会。小学校の運動会。中学時代のコンクール。文化祭で見た次男の漫才や、ライブでベースを弾いていた長男の姿。本当に色々なことがよみがえってくる。

長男が高校生のとき。アルバイトをしていたコンビニでカードをつくってほしいと頼まれたので、お店まで行ったことがあった。

お客さんが多かったので、少し離れたところから働く姿を見ていたのだが、きびきびと笑顔で対応していて驚いた。家では仏頂面なのにね。カードの申し込み用紙を書いているときも、他のパートさんや店長さんに、「あ、母なんですよ」と笑顔で言ってくれたりして。コンビニを後にして、涙がこみあげてきたことを思い出す。あのときの長男も3割増し、いや、5割増しぐらい立派に見えただろうか。

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幼いころからすれば、遠くからながめる距離はちょっとずつ伸びている。私の手を強引に振りほどき、どんどんと自分の世界へ行ってしまう息子たち。さみしいような、うれしいような。でも、やっぱりうれしいことだ。もう長男なんて、遠すぎて見えないし。笑

次男にしてもそう。私が知っているのは、Tシャツにパンツ姿でうろうろして、YouTubeばかり見ている姿。でもそれはもう、彼のほんの、ほんの小さな一部なのだ。ラジオ出演だってこなしちゃう次男なのだ。

あ。普段はだらけた姿ばかり見てるから、それほど立派でなくても三割増しに見えるだけかもですね。清志郎の曲にある「昼間のパパは〜光ってる〜」的な。笑