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家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった_日記20230804

昨日は一番やりたい仕事が捗らず、事務的なことを挟みながらやり過ごした。集中したいことに集中できないと眠気も出てきたりして、ダメ人間な気がしてくるけど、それはそれで仕方ないか。そんな時はドラマでも観てしまえ、となった。

うちはテレビがないのでリアルタイムでは見れなかったけど、NHKオンデマンドで『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を観終えた。
すごく面白く観たのだけど、何が良かったとひと言では言いあらわせない。このドラマを知ったのは文化放送で大島育宙さん紹介していたからだった。初めはその設定から興味をもった。コメディであるとは聞いていたものの、弟がダウン症で母が車椅子で、という家族がどんなかたちで良いドラマになっているのかと思った。

1話を観ただけで、これは最後まで観るだろうと確信した。ストーリーがどう展開していくのかわからないけど、役者さんの演技も良かったし、編集も映画のように凝っていた。まず主役の七美役の河合優実さんの演技に圧倒された。どんな方かと調べてみたら『由宇子の天秤』で女子高校生役だった方だと知って驚いた。あの映画では閉じこもった役だったから、こんなに元気はつらつが詰まっている方だとは想像もしていなかった(素の河合さんのテンションはどんななのだろう?)。七美は中盤で壊れてしまうけどその演技はコミカルかつ熱演だった。
坂井真紀さんの母役や美保純さんの祖母役は喜怒哀楽にあふれ、そしてウン症当事者の役者・吉田葵さんの弟役は忙しない家族のスピードを抑えながら中和するような間合いをつくってくれていた。

過去がフラッシュバックするシーンが多用されていて、それは緊張感を生むとともに、途中まではそのフラッシュバックの過去が何だったかは明かされないミステリーにもなっていた。妄想や夢のシーンがうまく挿入されいて、現在とシームレスにつなぐ編集はドラマというよりも映画のような凝ったものだった。

障害を持った人が2人もいる家族、と聞くだけで苦労がたくさんの大変な家族というテンプレな見方を持ってしまうかもしれない。現実のそういう家族の苦悩は想像できない。ドラマの中でも途中で歩けなくなるお母さんは絶望しているし、生まれた男の子がダウン症とわかった時も絶望している。バリアフリーの場所でないと出かけられないし、進学や就職先も限られたりと制限も多い。
でも、誰でも事故に遭って不自由雨が生まれたり、そもそも歳を取れば動けなくなるし見たり聞いたりする力も衰える。いくら身体を鍛えたって、五体満足で健康みたいなことは脆いものだし、いつ失われるかわからない。だから今の自分が良ければいいという考え方を抑えて、誰もが生きやすくなるためにどうすればいいかを考えさせてくれる。車椅子の母が路上の放置物で通せんぼされるシーンが出てくる。道に落ちている物を端に寄せるとか、ちょっとしたことだけでも誰かの役に立つかもしれない。

七美が書いた文章がなぜ受け入れられるのか?と問われるシーンがある。それは家族の苦労話としてではなく、家族のことが読みたいからだという。コスパ、対パ、生産性、そんなことばかりが勝ち基準にされるなかで、だれもが理想や平均的な像と身の回りの現実を比較ばかりしてしまう。こうしなければいけない、他よりもここがダメだあそこがダメだ、そんなことばかり考えて自信を失っていく。やらなくてもいいことまでやろうとしてしまい、疲弊していく。舞台となっている岸本家は特別でもない、わたしの家も特別ではない、みんなそれぞれ。それぞれに苦労もあるけれど、楽しいこともある。

基本コメディなので、随所に小ネタが放たれて面白い。多くの人に見てほしい。

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