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徒然雲 あのときの、あのひとの、書いた文字【文字を愛でる 大和文華館】

おかしいな〜晴れ女のはずなのに・・・
最近、休みとなると曇りや雨。

それならそれで観たいものは山ほどあるのでよくてよ。

ということで本日も美術館へ。
こちらも楽しみにしていた展覧会で、会場の美術館も初めて訪れる。

奈良市にある『大和文華館』
あべのハルカス美術館同様、近鉄を利用していると車内や構内でポスターや広告を見かける。
ずっと気にはなっていたが、行ったことはなかった。
広告やフライヤーの引きが少々弱いビジュアルであることと推測。
今回の特別展『文字を愛でる』もかなり渋いお誘い。




ただ、今ワタシは文字や書にアンテナがビンビンに振れているので
あっさりとキャッチ&ゴーとなった。

近鉄線学園前駅からすぐ、立派な住宅街の中に静かに佇む美術館。
学園前エリアは奈良の芦屋と呼ばれるような高級住宅街であること、奈良に越して初めて知った。
芦屋に行ったことがないのでわからないが、東京でいうと田園調布や成城といったところでしょうか。
前職で最後の数ヶ月、学園前に通っていた。
南のエリアとは全く雰囲気も地形も違い、どちらかというと地元の横浜の住宅街に似ていて全然新鮮味がなく、ワタシの中のイメージする奈良とはかけ離れていて魅力は感じなかった。

その学園前の『大和文華館』

近畿日本鉄道(近鉄)の社長、種田虎雄(おいたとらお)が設立、初代館長の矢代幸雄氏(美術史学者)が作品の選択、収集、運営を担った。
東洋古美術を中心とした国宝、重要文化財を含む絵画、書、工芸品が収蔵されている。
「文華」は中国の古語で優れた文筆の才や文化が栄えるさまをあらわすことばから付けられた名前とのこと。


敷地前の駐車場あたりから鳥の囀りが聞こえてくる松林の奥に建物がある

文華苑に入る




建物が見えてきた。
おっ、これは!


期待ふくらむ



正面右側から上がってくると日本庭園の砂紋のような白い砂利が広がる。
その建物の美しさに驚く。

なんと、吉田五十八の建築だった!(迂闊にも知らなかった・・・)
東京では五島美術館がワタシの好きな吉田五十八の建物。


正面


シンプルエレガント




今回のテーマは『文字を愛でる』と題され、
経典・文学・手紙 のジャンルから文字を鑑賞しようという展示だった。

中国から伝わった書が、日本において仏教経典の写経によって文字が写し伝わっていった。


ー経典にみる文字ー

もう最初の展示から目が釘付けになるものばかり!


写経切
伝光明皇后筆





写経切
馴染みのある字体





この美術館が所有する国宝の一つが

一字蓮台法華経(普賢勧発品)(装飾経) 平安時代

法華経二十八品の最後の部分、普賢菩薩勧発品を書写したもの。
この見返し部分お大和絵がなんとも雅な平安時代を垣間見れる。

法華経 普賢菩薩勧発品
見返し


法華経


一字蓮台、そう、一字一字が蓮の花に載って書かれている。


大好きな字








装飾経切
法華経妙荘厳王本事品
平安時代
紙本木版





過去現在絵因果経断簡





そして経典の中でも、いやこの展示の中でかなりゴージャスだったのが
こちらの『大方広仏華厳経』

黒に見える(紺)紙に金泥線で描かれた詳細な絵と文字が浮き上がり
とても美しく厳かで、その両端の植物の絵柄がかなり好みのデザインだった。

大方広仏華厳経
朝鮮・高麗時代後期


見返し絵


華厳経
正統派字体
好きな字体の一つ


紺紙金泥著色
繊細な絵は石版画のよう








ー文学にみる文字ー

和歌や漢文などに書かれた文字は、日本絵画展などで一緒に観ることもあるが
改めて文字としてみると、作者、歌の内容、そして書かれた字のバランスや性格が浮かび上がり面白い。



和漢朗詠集断簡
伊予切
平安時代後期


カナ文字が流れるような優雅さ。





文学のコーナーで一番好きだった文字が次の
後陽成天皇宸筆という歌の文字。
素人目でシンプルに美しい字だな〜と。

後陽成天皇宸翰和歌







ワタシが今気になるスタイル?がこの墨絵と書の組み合わせ。
乾山にしては渋い墨絵で新鮮!
内容はやはり艶やか?!


春柳図
尾形乾山
江戸時代中期







初めて知る名前だったが、美しい歌と月に惹かれた。


日野資枝(ひのすけき)詠草
江戸後期







また、書ど素人のワタシがその美しさにうっとりしたのが
近衛信尋筆和漢朗詠集の文字

近衛信尋筆和漢朗詠集
江戸前期



絵巻物は文字と絵の絶妙なバランスで、物語に彩や迫力でイメージを膨らませられる逸品だった。


忠信物語絵
桃山時代

文字の並びが美しい!
そして紅色がアクセントに。






道成寺縁起絵巻
江戸時代後期




文学のコーナー最後は阿国歌舞伎の話
これは絵が最高に興味深く、役者や観客の着物に目がいく。

阿国歌舞伎草紙
桃山時代







ー手紙にみる文字ー

最後のこの手紙達が非常に多種多様で、あのひとやこのひとと有名どころの手紙や書簡が目白押しで、へぇ〜あの方はこんな字を書いていたのね〜と
とにかく面白く、興味深いものばかりだった。



源義経書状
鎌倉時代


義経の文字・・・どんな文字か想像はしたことはないが
なんとなくイメージとは違う、繊細だったのであろうことは想像通りであるが。
ちょっとドキっとする字・・・
美しい。





洞院公賢書状
南北朝時代


男らしい文字なのかな?
堂々とした印象。




足利義満書状
南北朝時代

相国寺の上棟に際して、馬を献上した人物に送った自筆の書状。
義満殿のね・・・
かっこいい字であると思った。




今回、初めて知った散らし書き
これはかなりユニークかつ大胆!

三条西実隆書状





そしてそして、あの方の字

豊臣秀吉髻(もとどり)書状
桃山時代


なるほど・・・






今回見ることができてよかった人物の字の一つ。
古田織部

古田織部書状
織田有楽宛
桃山時代
花押が・・
らしい



この二人がこんな風に親しく繋がっていたとは。
現在、東京では『織田有楽斎展』が開催中で、いいな〜と思っているところ。





古田織部書状
御ひ殿宛






そして今回の展示でも唯一?と思われる女性の文字。

どなただと思います?

前田利家夫人
まつ(芳春院)書状


これは個性的なのでしょうか?
女性の文字はこういう感じなのでしょうか?
わかりませんが、好きな文字ではないかな。





この方の特別展が現在トーハクで絶賛開催中で、多くの方が記事を投稿されていて
いいな〜とこれまた羨ましく眺めている・・・


本阿弥光悦書状
池田作左衛門宛
江戸時代前期



書に関しては、そんなにぶっ飛んだ趣は感じられないが・・・
個性的であるのは確かかな?






そしてそして最後にワタシの心がガッツリつかまれたのが・・・


鉄斎書簡貼交屏風
富田好室宛
明治時代




そう富岡鉄斎の書簡たちにやられました!

薄墨のバックの絵に濃い墨で書かれた文字。
字の良し悪しはもはやわかりません。
とにかくこの粋なデザインと洒落たセンスにシビレた!


近藤家宛鉄斎書簡






近藤家宛鉄斎書簡




冨岡鉄斎、知ってはいたが、こういうセンスを持っていたとは全く知らなかった。
公に出る作品とは違った、プライベートでのユーモアと心のこもった手紙で
こんなの届いたら額に入れて飾りますわ。

そしてこのようにサラッと絵を添えた字が書けたらいいな〜とつくづく思う。

籠の鯛は描けそう・・・笑


ワタシが今回の特別展の広告を作るとしたら、断然この鉄斎を使ったと思うなぁ。




ということで、展示数は54点と少ないが見応えはたっぷりだった。
今、文字に夢中のワタシにとって現在のところは文字の良し悪しは全くわからないので、感覚的に好みかそうでないかでしか判断できないが
それはそれで観るものとしての鑑賞でき、色々な刺激やインスピレーションを受けることができた。

文字を見ると、その人のことがわかるというが・・・
確かになるほど、その意味がなんとなくわかり
また、勝手に想像していたそのひとが意外とこんな人だったということも
わかったような気がする。

面白い。
やっぱり書、墨絵がきてます・・・ワタシの中にどっぷり。


ワタシにとってとてもいい展覧会だった。
大満足!


すっかり図録になったが、全てを載せたいぐらいで
改めて手入れしながら、自分の記録として構成し直したいところです。












建物を囲む文華苑は四季を通じて花や植物が楽しめるようになっている。




梅はだいぶ終わりつつあった







古き文字に、時代と個性と芸術を観た。



今回も長い記事になり、最後までお付き合いいただきありがとうございます!

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