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仕事を始める君へ

もし仕事を始めようとしている人に助言を求められるとしたら、何と答えるだろう?

おそらく、自分ならこう答えるだろう。

「転職する時のこと考えて、毎日の仕事に取り組んでみたらいいよ」

雇ってもらった会社に礼儀がないと言われそうだが、これは必ず辞めて転職した方が良いと言っている訳ではなく、あくまでも心構えとして、その気持ちを据えて仕事に取り組んでみてはどうだろう、という提案だ。

日本には終身雇用という制度が根付いているせいか、就職というより、就社という意識が強いようだ。シンガポールで駐在社員の方と話をしていても、それが前提としてあるんだなとつくづく感じる。若い人の中では、その意識が変わってきているという記事をよく目にするが、本当だろうか。

私はずっと外資系で働いているせいか(それが理由ではないかもしれないが)、就社という意識が全くない。生き残るため、結局自分に頼るしかないので生存能力を高めることに集中しなければという思いがある。会社が自分の都合に合わせて、何かあった時には救いの手を差し伸べてくれるだろうと楽観的に考えたことはない。もちろん会社の中での人間関係はとても大事だし、「会社」という出会いの場を通して、良き友人を作ることができることもあるだろう。ただ、会社は会社なので、個々人の思いだけで、自分の都合の良いように動いてはくれないものである。もし動いてくれた時は、それはラッキーだったと思うようにしている。会社に対して期待値を低く抑えている自分にとってはそんなことがあると、とても嬉しい(笑)。

満足度=現実÷期待値」なのだ。

自分に頼るしかないと言っても、仕事は人と人とが紡ぎ出すものなので、人との関係は大事にしないといけないと思う。自分にとっては、生き残るためのライフラインは、会社の中というより寧ろ会社の外に多く持っておくことが必要だと考えている。社内のポリティクスに精を出すよりも、自分に対するマーケットからの評価と客観的に向き合うことが圧倒的に大事という訳だ。

だからこそ一つ一つの仕事には誠実に取り組む必要がある。そして自分の評判を高めネットワークを広げていく。もちろん、先で転職すると考えなくてもきちんとできる人もいるだろうが、「自分はずっとここに居ることはできないかもしれないのだ」と考えることで自分自身の力の境界線をさらに広げ、活動量を増やす一つのモチベーションにしていく。

ちなみに会社の外に強い繋がりを持てるようになると、会社との付き合い方がとても楽になる。結局会社としては、そういう人を失いたくないものだ。自分の意見を通しやすくなるだろうし、のびのびと仕事ができるようになっていく。

もちろん、言うは易く行うは難しなのだが、「どうせクビになることはない」というような甘い考えで仕事をするよりも、長い目で見ればずっと効率的だろう。人は皆、易きに走るものだ。これは生き物としてエネルギーをセーブしようという思惑が働くので、ごく当たり前のことで別に否定することもないのだが、冒頭の言葉は自分の行動を律する考え方として、役に立つのではないかなと思う。

そうやって生きていると、転職についても世間一般のやり方と変わってくる。転職は、転職エージェンシーに登録するか、ヘッドハンターに声をかけられて転職するという流れが世間では一般的なのだろうか。これまで、5回転職をしてきたが、実際にヘッドハンターを絡めた転職は若い時に1回あっただけだった。それ以外は、全て転職先の企業からの「お誘い」によるものだ。こういった誘いを受けて転職していく人は、世間とは全く違うペースで条件が上がっていく。誘う側としては、今と同じ条件で来てもらおうとはハナから考えていない。だから、好条件を常に提示してくるし、転職する側としては交渉もしやすくなる。

企業側としても、メリットが高い。

通常の面接プロセスを通して応募者の中から選ぶとしても、たった数時間の面接で分かることは少なく、実際のところ一緒に働いてみないことにはその人の仕事ぶりなどは分からないものだ。マーケットでの仕事ぶりを実際にある程度の期間観察できるのは、選考失敗のリスクを少なくする。しかも、エージェンシーを通すと年収の約30%もの手数料を支払わなければならないが、それもない。

もちろん、マーケットで人と接することが少ない職種もある。その場合は、上記の限りではないと思う。その時は、社内ではあくまでもフリーランサーという意識で働くと良いと思う。職場で対する人々が自分にとってのクライアントとなる。転職時には、そこから縁が広がることもある。

自分の子供達が大きくなって仕事をする頃、伝えたいなと思う。「一期一会」、「情けは人のためならず」など、人との縁を伝える言葉は多くある。今も昔も人の世の中で変わらないものはあるのかもしれない。

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