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第2回 映画『怪物』を語る!!〜是枝裕和が問い続ける、「現実を受け入れる構え」とは

くに:はい、2回目行きまっせ!!

たけ:今回はくにの希望でピックアップしたやつね?

くに:そう、是枝裕和監督の『怪物』です!!まだ公開中だよ!!

たけ:公開日初日に行った、俺。我慢できなくて(笑)

くに:宣伝用のトレイラー映像だと、内容が全くわけわかんないもんね(笑)
なんかすごいモンスターが出てくるの??みたいな。

たけ:怪物だーれだ、ってね。

くに:率直にどうだった??

たけ:超面白かった。開始数分からギア全開だったよね、ハイ、おもしろ決定!!って感じ。

くに:あたしも超楽しんだ!!是枝作品は結構観てきてる??

たけ:初期の作品と海街ダイアリーは観れてないかな。。。

くに:全体的にどういう印象?

たけ:んーー個人的に思うのは、一貫してるテーマは「現実を受け入れろ」ってことなのかなーと。現実を超俯瞰してる感じ。柳楽優弥主演の「誰も知らない」っていう映画あるよね?確か今ネトフリで観れるけど、観たことある?

くに:観てないな〜。

たけ:ウィキペディアにも出ちゃってるからいーか。。内容言っちゃうと、母親が子育てをネグレクトするお話で、実際に起きた事件をモチーフにしてるんだけど、内容からしてひどい母親じゃない? でも、母親がいかにひどい奴とか、断罪される描写が一切ないんだよね。で、置き去りにされた子供達が淡々と衰弱していって、最後にどんでん返しも特にないんです。要するに、「そういう母親もいるし、その犠牲となる子もいる、しょうがない、残酷ですが」っていう感じ。実際の事件は本当に悲惨なんだけど、映画自体は抑制的だったけどね。

くに:それ、面白いの??(笑)

たけ:まー子役の演技が凄いですよねー。あと、母親役がタレントのYOUなんだけど、ピッタリ(笑) 監督のインタビュー読んだら「子育てを投げ出しそうな人だったから」って書いてあった(笑)

くに:ウケる!!!

たけ:『万引き家族』も『怪物』もそうだけど、エンディングに向かうにつれてどんどん家族が崩壊していくじゃない。『誰も知らない』も崩壊していって、決して元には戻らない。

くに:「家族」というものについて否定的なのかな??

たけ:そういう側面もあるし、一方で温かい家族もある。どちらにもなり得るのが家族っていうもので、それを受け入れろっていうことだと思う。徹底的に冷めた視点で「家族」を、もっというと「現実」を受け入れろ、というのが是枝作品の特徴なのかなーと思う。

くに:『怪物』では、安藤サクラ演じる母親だったり、瑛太演じる先生だったり、田中裕子演じる校長先生だったり、一人の登場人物について、いろんな側面があるという描写が印象的だったよね?さっきまでひどい奴だなーと思っていたら、実は背景にこんな現実があって、それを通してみると全然違う人に見えたり。

たけ:そうだね。それもさっき言った「現実を受け入れろ」ってことなんじゃなかなー。そのためには俯瞰して色んな側面から物事や他人を見て
良いところも悪いところも受け入れて初めてそれを肯定できるんじゃない?その視座あなた持ってますか?っていう監督のメッセージなんじゃないかなー。ニーチェですよニーチェ、『善悪の彼岸』ですよ(笑)

くに:でた、たけの哲学の引き出し!あたし詳しくないから!

たけ:ゴメンやめます、、、(笑) 大学で哲学の授業ばっかとってたせいです(笑) なんか、職場でも友人関係でも、ある人のある一つの側面がしゃくに触って「なんなのあいつ!」ってなりがちじゃない?まさに、登場人物たちも、ある側面にしかフォーカスが当たらないことによってどんどん怒り狂ったりおかしくなっていくよね。そんでもって、その登場人物を見てる客席の人も見事にそのフォーカスと同じ状態になっていくよね(笑) この映画観てると見事に登場人物に引きづられていくんだけど、そのスタンスってあまり良くないって年を重ねるにつれてだんだん気づいていきますよね。ほんで、その気づきが、人に優しくしたり、大事に思ったり、尊重したりと、全ての始まりなんじゃないの??っていうのが、是枝作品から俺が勝手に受け取ってるメッセージです(笑)

くに:それを直接的には描かないんだよね。

たけ:そう!!!メッセージが超メタ構造になってるから、何度見ても面白い!!

くに:で、怪物は結局誰だったと思う?

たけ:んーーーーーー、、、誰というより私たちの住むこの社会なんでないすかねえ。KYじゃないけど、空気のチカラ、半端ないじゃないすか。。。
『失敗の本質』っていう本があって、第二次世界大戦で敗戦した日本について書かれてるけど、空気の支配がいかに強いか、ゾッとしました。

くに:なるほどね〜。確かに、「それするとこうなるからやめとき!」みたいなのが映画にも漂ってたね。

たけ:それに抗うというより、それと上手く付き合っていかなきゃいけないよねー。

くに:是枝作品は、いわば「SURVIVEのすすめ」ってことか!

たけ:そうかもね!!

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