ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記~12

「お願いした衣装を取りにきましタ」

「いらっしゃいませ。こちらになります」

夕日が差し込む店内にお客がやって来るとアイリスは急いで衣装を手に持ち近寄っていく。

「わぁお!素晴らしい。こんなに素敵な衣装をどうもアリガトウございます」

「いえ、お気に召していただけて嬉しいです」

衣装を見ただけで感激して喜ぶ女性に彼女も安堵して微笑む。

「是非ともあなたを今日のお祭りの会場に招待したいでス」

「あ、あの実はこれ私一人で作ったわけではなくて、このお店で働いているイクトさんと二人で作ったんです。なので私だけ招待を受けるわけには……」

自分だけが招待されるのは気が引けると思い断ろうとするとお客が納得した顔で頷きにこりと笑う。

「それならお二人を招待しまス。ぜひ私の踊りを見にいらしてください」

「は、はい。それなら喜んで」

女性の言葉にアイリスは二人一緒ならと招待を受けることにする。

「私はミュゥリアム。ミュゥて呼んで下さい。この街でお友達出来て私嬉しいでス。アイリスさんよろしくです」

「はい。私も新しいお知り合いが増えて嬉しいです。ミュゥさんよろしくお願いします」

ミュゥの言葉に彼女も素直に喜び笑顔になった。

それからイクトが戻って来ると招待されたことを伝える。それならばと彼が急いで衣装を仕上げると、アイリスは人生で初めてドレスアップして会場へと向かった。

「ま、まさか王宮の庭でやるとは思っていなくて……やっぱりお断りすれば良かったかしら」

「いまさら引き返したりしたらミュゥさんに申し訳ないよ。ほら、始まるみたいだよ」

庭に集まったのは上流階級から庶民まで様々な人達が一様に会し賑わいを見せていて、まさか王宮の庭で踊るとは思っていなかった彼女は場違いなところへ来てしまったと思い帰りたいと言い出す。

そんな彼女の様子にイクトが苦笑してやんわり止めるとステージに明かりがともったのを見てそう伝えた。

「皆の者今宵はわしの誕生日を祝ってくれて感謝する。今宵は楽しんでいってくれたらわしも嬉しい。そして今日はこのパティーのための衣装を仕立ててくれた若き女流の職人も会場へと来てくれている。わしはいままで着てきた衣装の中で一番気に入っている。彼女へ大きな拍手を」

「!?」

ステージに立った国王は朗らかな笑みを湛え開催に伴う挨拶をするのだが自分の衣装を作ってくれたアイリスが来ていると知り彼女へ精一杯の感謝の気持ちを伝える。

会場内から大きな拍手を受け驚くアイリス。隣にいるイクトも笑顔で彼女へと拍手を送っていて気恥ずかしさと嬉しさとで頬を紅潮させた。

「さて、今日はこの生誕祭のために遠い異国からわざわざ踊りを披露しに来てくれている踊り子さんが見えている。紹介しようミュゥリアムさんだ。彼女はとても素敵な踊りで人々を楽しませてきた。その踊りを今宵は皆に楽しんでもらいたいと思う」

「みなさん。私の踊りぜひ見てくださイ」

国王が次にミュゥを紹介すると演奏家による音楽が始まり彼女の踊りが披露される。

その見たこともない踊りと華やかな衣装を身にまとったミュゥに人々は魅了され彼女の舞に見入っていた。

そして踊りが終わると会場中から溢れんばかりの拍手とはやし立てる口笛の音が響く。

こうして国王生誕祭の夜はふけっていきアイリスはイクトと共にお祭りを楽しんだのだった。

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