ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記15

 翌日。開店と同時にお店へとお客が来店する。

「おはようございます。あの……昨日頼んだドレスはもうしあがっていますか。何分事情があってこれから暫くこちらに来る事ができないので、出来上がっているのでしたら頂きたいのですが」

「いらっしゃいませ。あ、昨日の……はい。こちらになります」

昨日とは違って顔を隠すかのようにスカーフを巻いた女の子が店へと入って来るとそう言って尋ねる。

そんなお客へと棚からドレスを取り出したアイリスが少女のそばまで持って行く。

「いかがでしょうか」

「まぁ。本当に素敵なドレス。噂に聞いた通りの腕前ですね。これ早速試着してもよろしいでしょうか」

「勿論です。どうぞこちらへ」

ドレスを手に取り嬉しそうに頬を赤らめ微笑むお客へと試着室まで案内する。

「……まあ、あつらえたみたいにピッタリ。もう何年もこのドレスを着ていたみたいに着心地が良いです」

「喜んで頂けて嬉しいです」

姿見に映った自分の姿にご機嫌な様子で話す少女にアイリスも嬉しくなって笑顔で答えた。

「これならきっとみんな喜んで下さるわ。アイリスさんありがとう御座います」

「いえ。お客様伝票をお持ち致しますね」

「あ。そのわたしお金を持ってきていないの。後で使いの者をよこします」

「へ?は、はい」

伝票を持ってこようとした彼女を止める様に少女が言うとアイリスは、貴族の人なら自分で支払うことはめったにないのかなと納得して頷く。

「わたしの名前はシュテナです。覚えておいていただけると嬉しいです」

「分かりました」

「それでは、失礼します」

照れた顔で自己紹介したシュテナへと彼女は頷き答える。お客は嬉しそうに微笑むと一礼してお店を出ていった。

「とっても可愛らしいお嬢様だったね」

「そうですよね。私も初めて会った時はお人形さんみたいに可愛くて見惚れちゃいました」

カウンターの中から様子を見守っていたイクトが声をかけてくるとアイリスも同意して頷く。

「また新しいお客様が増えて嬉しいかな」

「はい。この街にきてから半年が経っていろんなお客様と知り合えて嬉しいです」

「そうだね。俺も君のおかげで新しいお客様と知り会えて嬉しいよ」

彼の言葉に頷く彼女の様子にイクトも微笑み同意する。

「でもシュテナ様。しばらくこのお店にこれないってどうしたのかしら」

「さあね。でも貴族のお嬢様みたいだから、遊び歩いてばかりもいられないんだと思うよ」

「お嬢様も大変なんですね」

不思議そうに首を傾げて考え込むアイリスへと彼がそう言った。それに彼女は納得して頷く。

「そうだね。それじゃあ俺はこれから会議に出なきゃいけないから出かけてくるけど、後は頼んだよ」

「はい。いってらっしゃい」

壁掛け時計の時刻を見たイクトが言うとアイリスは返事をして見送る。

彼がお店を出てからアイリスは店番をしながらお客の相手をしてすごした。

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