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泣かないでください

書くのが遅くて自分でも呆れるし情けない。
今日こそ続きをと思ってログインすると、安倍元首相が狙撃された事件について書いているひとがいて、そのことを知った。

この記事の上に貼り付けた薔薇の写真は、以前Twitterの固定にしていて、それは在日コリアンのともだちに向けたメッセージだった。
それから、全ての、マイノリティの、今日いちにちが辛かったひと、途方にくれているひとに向けたメッセージとして、しばらくそこに置いていた。
(Google翻訳で調べた怪しい)韓国語で「泣かないでください」って、多分、添えてたと思う。

私より年下の在日コリアンのすなちゃんとはTwitterで知り合った。
実際に会ったことはなく、彼女の本当の名前も知らない。

すなちゃん、私があれやこれやと「カウンター」に嫌がらせされたことに躍起になって自分のことにばっかりかまけている間に、いつの間にかアカウントを消してしまいましたね。
挨拶ができなかった。ごめんなさい。あなたのこと書いていいですか。

すみません、勝手に書きます。


すなちゃんは、はじめからTwitterを趣味とか気晴らしとかに使っている風では全然なく、ネトウヨの差別的なツイートの通報のためにログインをしているような人だった。

会社がしんどくなって辞めるとき、社長だかに「在日なのに面倒見てやったのに」ということを言われて強いショックを受けたこと、「在日コリアン」という自分自身のルーツ、立場について、家に帰ってNETで調べたらひどい記事ばかりで泣きながら夜を明かしたこと、図書館でもろくな本が見つからず、絶望したこと、そんなことをはじめに書いていた。

地震が起きるたびにTwitterで沸く差別ツイートを何時間も通報しながら、すなちゃんは泣いていた。でも自分にできるのはこれだけだからと、ずっと通報をしていた。
「当事者が時間を奪われる」というそのことに私は本当に胸が痛くなったし、やりきれないと思っていた。

泣かないでほしいと思った。あなただけがそんな思いをするべきではない、あなたは明るいことにもっと時間を使って、美しいものをもっともっと見てほしい。
でもそれを言うと、彼女の行動を否定してしまう。
そして、彼女のいる、しんどいところから抜け出せるくらいの「明るいこと」や「美しいこと」を、私なんかが彼女に差し出すことができないことも分かっていた。

そして私は本当のところ、Twitterの中で通報を繰り返していても焼け石に水で、この国の差別問題はマシになるわけではないと諦めてもいたし、それを言うと彼女を追い詰めると思ったし、でも自分でもどうしたらいいか分からなかった。

すなちゃんが引っかかるところと、私が引っかかるところは、本当によく似ていて、それは身近な人の在日コリアンやアジアの諸国を見下すふとした発言、所作から浮かび上がる「宗主国仕草」であったり、ヘイト、と言うと言い過ぎかもしれないけど、「差別という自覚もないほど自然に」差別をしている人たちに対する自分の気持ちの持て余し、と言ったらいいのか。

でもこちらが受け止めすぎると苦しい、なんでもない風をしてやり過ごすしかないこと、同じ在日コリアンに話しても「考えすぎ」と言われたり、「被害者意識が強い」とたしなめられたりもするし。変に気を遣う。
それも含めて「感情労働」そのもので。しんどいのだ。
そればかりをしていると、日々鈍い怒りと無気力が溜まってくる。

私がそういうことを呟くと、よくいいねをしてくれた。

すなちゃんがNETで嫌韓の記事しか見つけられなかったこと、それは安倍政権が続いたことにも関係している。
彼が在任している間に、一般の人たちの賃金は下がり経済は縮小し、その反動のように若者の右傾化が増し、排外主義はますます強くなっていった。
自民党や安倍が積極的に行った加害の歴史の否定、公文書の改竄に廃棄に、辺野古への強行埋め立てなどにみる民意の否定はそのまま「民主主義」の否定だった。
「友達」が起こしたレイプ事件の揉み消し、LGBTは生産的ではないと言い、LGBTの子どもは自殺者が多いと笑った杉田水脈を起用し続けたこと、改竄を指示され自死に追い込まれた赤木さん事件に向き合わなかったこと、入管施設で起きている人権侵害を放置してきたことなどなど…

すべて「暴力の肯定」=暴力だった。
その加害者ともいえる人物が突然「暴力」のもとに、倒れてしまった。

動揺した。
知らない人に、自分自身が通りすがりに頭を殴られた様な衝撃。
暴力、が。
また別の暴力と繋がって、覆っていく光景。
キツイ。
私はずっと国家の暴力を見て育ってきたし、今も怯えているし、それがはっきりわかった。また私がショックだったのは、彼には司法で裁かれてほしかったのに、その機会が失われたことで、国民の知る権利が失われたことだ。

瞬く間に、「暴力はよくない」という記事が駆け巡り、そして連動するように犯人は在日に違いない、というヘイト記事も広まった。
そう言うところだよ。「普通の」日本人の皆さん。
それが暴力の芽だってこと、生きてるうちに、あと何万回、何十万回言い続けないといけないんだろう。

すなちゃんが受けてきたことは暴力じゃない?
戦争の清算ができていないまま憲法改正をしていく自民党に投票するつもりか、投票にも行かない皆さんは如何なる暴力にも加担していないのか。


親しくしてもらっている在日コリアンの方の、高齢のお父さんは、「犯人が朝鮮人じゃなくてよかった」とぽつりと呟いたという。

私も同じことを思う。
地震が起きるたび、デマで殺された人たちを思う。
「犯人は在日」とすぐデマを広げる現代日本の、
「悪者はいつも外からやってくる」と信じ切っている人たちの無邪気な差別意識に心を削られそうになる。

https://twitter.com/kurage_blossom/status/1545343522118590465?s=20&t=maSbFxEx5u8t73A2S_dAVw

すなちゃんどうしてますか。
泣かないでください、
私も日々うんざりしてますが、私はしぶとくこの国を観察するので、いつかまた出会えたら、いいねし合いましょう。

選挙権のある人は、選挙に行ってください。


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