見出し画像

お椀

結婚当初から使い続けていたお椀の傷みが気になるようになり、それから更に数年。
先日とうとう欠けてしまったことを切っ掛けに、新しいお椀を迎えました。

山中漆器のお椀です。

今まで使っていたお椀は、雑貨屋さんで購入した物でした。味のある形と、渋い色味が気に入って。値段は覚えていないけど、きっと安かったんじゃないかな。おそらくウレタン塗装のもの。

塗り直して長く使うことが出来、体のことも考えると、次はウレタン仕上げではなく漆のお椀をと数年前から考えるようになりました。


山中漆器を選んだのは、木目が見える器が好きだから。

山中漆器の特徴は「縦木」とよばれる木取り方法。
縦木取りすることで、美しい木目が現れる。
この木目を生かした漆塗りが「拭き漆」。

生漆(きうるし)とよばれる透けた漆を、塗っては拭き取る作業を繰り返し、漆を木地に刷り込んでいく。
この拭き漆で仕上げることで、漆を塗ったあとも木目が見える器に仕上がる。

拭き漆は下地が隠れないため、木地にごまかしはきかない。
そのため、木地挽物職人の技術が高く 山中漆器は「木地の山中」と称されている。

白鷺木工  山中漆器のこと。


白鷺木工さんは、原木の木取りから仕上げ挽きまでトータルで手がけている木地屋さん。天然木から作られている山中漆器の原材料の5割のシェアを誇るそうです。
白鷺木工さんを知ったのは、あるお店で見たお椀がきっかけ。それ以来ずっと、欲しいものリストで温めていました。

今回お椀の形は夫婦で揃えず、それぞれ好きな形を選びました。私はサブロク椀の百合。素材は国産の欅。

サブロク椀  百合   漆茶
トップの写真は私のお椀ですが
こちらはホームページからお借りしました


驚くほど軽く、曲線が美しい百合。両手で持つとその曲線が手の平に心地よくフィットして、ほんのり反った薄い縁 (羽反りというそう)が、口に優しく飲みやすいお椀です。

そして使うようになってつくづく、器で味も変わるのだと実感しています。

以前のお椀は全体にがっしりとして角もあり、百合に比べ縁も厚く、表面も滑らかではありません。当たり前の様に日々使い、意識することのなかった口への当たりが、百合の薄く滑らかな縁への衝撃で意識に上がったのです。

羽反りのお陰で すっ と入ってくる汁物の心地よさは、味までも上品に優しく変化させてくれました。見た目の美しさ、手に伝わる繊細な心地よさ、口をつけ味わった時の感動を知ってしまった私は、「もうずっとこれがいい」。そんな風に感じてしまうほど、世界が変わってしまいました。こんなにも美しく繊細な形を削り出せる技、作り上げる皆さんへの尊敬と感謝も感じずにはいられません。


新しいお椀を迎えて、また食卓の景色が変わりました。
昨年迎え、暮らしにすっかり馴染んでくれたごはん鍋。

今回はお椀。そして次は漆の箸をと思っていて。お気に入りに出会う日を楽しみにしています。


この記事が参加している募集

このデザインが好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?