もしもその手に触れたなら

もしもその手に触れたなら

君と私はただの友達。
何でも話せる友達だ。
何でも話される友達だ。
「今朝、彼女が弁当作ってくれたんだ」
そんな太陽みたいな笑顔向けるなよ。
隣で食べてた菓子パンが、
一瞬にして無味になる。

君が話せば話すほど、
私の話は薄くなる。
それでも近くにいられれば、
それでも良いと思ってた。

地元に戻ると知ったのは、
君の彼女が泣いてたから。

君から聞ければ良かったのに。


空港の出発ロビーで君を待つ。
足が勝手に震えだす。

君はいつもと変わらない。
口から出るのはバカ話。
私も負けじとバカ話。
心の声をかき消すように。

「それじゃ、今までありがとう」
君は右手をすっと出す。

もしもその手に触れたなら、
私は立ってはいられない。

もしもその手に触れたなら、
私はその手を離せない。

私はその手に押し付ける。
いびつな形のクッキーを。
「小腹がすいたら食べてもいいよ」

私はそっぽを向いたまま、
君に大きく手を振った。

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