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【文芸論】夏目漱石が教えてくれること

小説だけに限らない、夏目漱石の多くの作品の世界は私たちの生活視野を広げてくれます。

文学論、文芸論、また公演の記録などは、岩波文庫から広く出ていますし、図書館でも容易に入手することができます。

その中の一つ『漱石文芸論集』(岩波文庫1986年5月16日第1刷発行)に収録されています「文芸の哲学的基礎」講演の記録において、目に留まった気になった一言がありました。

それは文筆家の物を書く際の姿勢として、「文芸家はものの関係を味わうものだ」と言っていることです。

確かに人やら物の様子を表現するには、よく観察しなければ文章に描き表すことはできないものです。

よく見て、よく捉え、しっかり頭の中で噛みくだくことが大切になってくるわけです。

されば、それは文筆家だけに言えることなのでしょうか?

あることについて、何も知識がないにも関わらず、何も考えず、よく調べもせず、さぞ正しいかのように安易に意見を言ったり、文句を並べ立てる人がいます。

しかし、言われている側にはしっかりとした道理と意味があって、今の姿かたちがあるのだと思うのです。

そういう現場に出くわしたときに聞いていて、言われている側は軽蔑の眼差しを向けている状況を目の当たりにします。

物やその状況、姿・形にはすべて意味があって、存在しているのだとわたしは感じます。

すべて意味があって、長い時間を経てそこに存在しているわけですので、その物の道理をわきまえずして、見下したり、ネガティブな発言は当然によろしくありません。

物の本質に意味のあることを識る、味わう。そして物事をわきまえておく姿勢でいること。

素晴らしいではありませんか。

上の一言は心に沁みる豊かさをもたらしてくれる一言です。

漱石は意外にもわたしたちに優しく色々なことを文章から教えてくれます。

今回は一例を挙げたのみですが、小説を含めた他の文芸作品からも得られるものが多くありますので、漱石の作品から便益で、そして幸福をもたらしてくれるメッセージがまだまだ秘めているような気がしてなりません。


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