栗山 丈

物書き。音楽をテーマとした小説などを書いています。2024年に『四条河原町ヘテロフォニ…

栗山 丈

物書き。音楽をテーマとした小説などを書いています。2024年に『四条河原町ヘテロフォニー“純情編”』出版予定。古本屋巡りと散歩が何よりも好物。 *三田文學会 所属 *現代音楽の作曲(横田 直行) *日本作曲家協議会 所属 *鎌倉市在住 twitter.com/@yokonao57

マガジン

  • note クラシック音楽の普遍化を達成する

    • 1,161本

    クラシック音楽の歴史や作曲家、作品について、哲学的な視点から分析し、その普遍性や深さを探求する和田大貴のnoteです。クラシック音楽について語り合えることを楽しみにしています。参加希望の方はマガジンの固定記事でコメントしてください。

最近の記事

初期の投稿の10の短編については、近く『短編集』として電子出版をする運びとなりました。このため、これらを2024年4月29日より¥100の有料記事とさせていただきますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。今後も皆様に楽しんでいただける記事を随時投稿してまいります🙇‍♂️

    • 【評論】日本伝統音の深み

      「ー(略)ー 邦楽の音は私にとって新鮮な素材としての対象にすぎなかったが、それは、やがて私に多くの深刻な問いを投げかけてきた。私はあらためて意識的に邦楽の音をとらえようとつとめた。そして、その意識はどちらかといえば否定的に働くものであった」 作曲家武満徹氏が邦楽に触れたときのひとつの認識として、自己の感覚で得た発言である。 西洋音楽を扱う作曲家がかかわれば、異なった性質のゆえにつかみずらく、扱いにくい領域であるのは間違いない。 日本の音楽は古来の伝統、ないし楽器の性質から

      • 音楽を物語る

        自然を音楽にしたり、他の芸術カテゴリーの影響のもとで、音楽が生まれることは作曲家の仕事として通常に見られていることである。 最近のわたしの仕事として意識していることは、音楽を言葉で表現すること。 評論でも詩でもなく、小説で。 「音楽を物語に?」 そう、小説は物語であるから、登場人物はト音記号や音符たちであり、さらには速度や強弱、発想、演奏法などの用語も対象になる。 これらも音楽が演奏される上では、常に生きた会話をしているのである。 時にはこれら各々が衝突し、乱れ、

        • ハイネの形容するパガニーニを通じて想う

          詩人ハインリヒ・ハイネ(1797-1856)は、1830年に聴いた稀代のヴァイオリスト、ニコロ・パガニーニ(1782-1840)の演奏とその時の聴衆について、記録を残しています。 その文章が特異で文学的表現に満ち、豊かな感性に満ちていたので、次に引用してみたいと思います。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 「舞台に現れたのは、臨終間際の男なのか。 瀕死の剣闘士のように痙攣している様子を見せて、聴衆を楽しませようとでも言うのか。 あるいは死からよみがえった、ヴァ

        初期の投稿の10の短編については、近く『短編集』として電子出版をする運びとなりました。このため、これらを2024年4月29日より¥100の有料記事とさせていただきますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。今後も皆様に楽しんでいただける記事を随時投稿してまいります🙇‍♂️

        マガジン

        • note クラシック音楽の普遍化を達成する
          1,161本

        記事

          拙作ピアノソナタ第4番“ティル・オイレンシュピーゲル”(2024)について

          長年、作曲家をしてきていますので、小説の執筆のほかにもクラシック音楽をたくさん書いてきました。 昨年秋に一度書き終えた、 ピアノソナタ第4番“ティル・オイレンシュピーゲル” という作品ですが、ドイツに伝わる『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』といういたずら話をもとに書いたものです。 その後、気に入らないところも少しありましたので、手を入れ直して今回改訂をし終えました。 これにより、一段と洗練されたティルの奥深い性格などが、ピアノで語る交響詩として描くこと

          拙作ピアノソナタ第4番“ティル・オイレンシュピーゲル”(2024)について

          どうやら、30回投稿バッチをいただいたようです。どうもありがとうございます🍀まだまだ短編、評論、詩、エッセイなどを掲載していく予定です。

          どうやら、30回投稿バッチをいただいたようです。どうもありがとうございます🍀まだまだ短編、評論、詩、エッセイなどを掲載していく予定です。

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第5話(最終話)

          そして最近であるが、芸術家にとって一番嬉しいお知らせをいただいたことをお伝えしておきたい。 スポンサー主催の現代音楽祭に継続して作品発表をさせていただいたことが契機となったのか、顕彰事業に私の《琵琶、篠笛、尺八、声のための室内楽詩「リヴァイアサン」が芸術祭賞で表彰されることになった。 音楽活動をしているものにとって、これほど嬉しいことはないし、これからの作曲活動にいい意味での影響を及ぼすことは間違いなく、躍動のバネになり得るものである。 またこのタイミングで出版社から「

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第5話(最終話)

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第4話

          やはり、このレベルの作曲家というものはいつも必死にチラシをまいて、SNSでしつこいくらいに演奏会の案内を投稿し、友人に拡散希望と記しておいてシェアしてもらって広報を怠らないことが肝要となってくる。 チケットは少しでも多く売らなければならない。作曲家たる者、曲を書き続けなければならないし、書き続けて作曲の技術全般がようやく見えてくるものだ。 曲を書いて演奏会を次々と打たなければ、自分をアピールできずにそのまま埋没してしまう。 作曲だけで生計を成り立たせるのは困難に近く、や

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第4話

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第3話

          作曲活動をコツコツと続けていた中で、継続していたことが少しは功を奏したのかもしれない。 世間の反応というものを感じていて、作品委嘱の依頼がまたもやあったのである。 受けた話は行き違いになったり、破棄されてはいけないと思い、丁寧に対応し締め切りまでにはしっかりと仕上げて提出することを肝に銘じた。 ところで演奏会の際の告知は外すことはできない大切な作業である。 主催者から送られるチラシを丹念にSNSを使って友人に宣伝するために、しつこいくらいにアップを重ね、またかと思われ

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第3話

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第2話

          作曲に対する強い想いは無残にも会社に引き裂かれることになる。 突如、冷徹な指示が下され、それに承服しかねて、「何故だ」と何度も自問自答を繰り返していた。 会社にとって大きな転換期であるので、新事業を実行に移さないでいて、大きなチャンスを逃す手はないと言っているのはわかる。 だが、個人の生活への影響に配慮せずして、有無を言わさず指示に従わせようとするのは悔しくて仕方がない。 組織とはそんなものなのだと落胆して、抵抗もろくにできない自分の無力に嘆くことしかできないでいるの

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第2話

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第1話

           日常生活をここに記すことに、ためらいの微塵もないと言えば嘘になる。 初めのうちは人生に幻滅しかけていたことがあって、それが後々なんとか持ち直して生きるすべを探り出し、結果は好転し始めたのだが、お恥ずかしいことに、初めのうちは細々と生活をしていたのが実情だった。 自分のキャパシティの上限が低いことに愛想を尽かし、自分の好きなこと以外は無能で、なんて弱くて薄っぺらの存在なのだと思っていた。 弱い人間性をここで暴露するわけではないが、世間が何故これほどにもつらいのかをずっと

          【短編】メタモルフォーゼ  〜 晩学作曲家のモノローグ 〜 第1話

          【文芸論】夏目漱石が教えてくれること

          小説だけに限らない、夏目漱石の多くの作品の世界は私たちの生活視野を広げてくれます。 文学論、文芸論、また公演の記録などは、岩波文庫から広く出ていますし、図書館でも容易に入手することができます。 その中の一つ『漱石文芸論集』(岩波文庫1986年5月16日第1刷発行)に収録されています「文芸の哲学的基礎」講演の記録において、目に留まった気になった一言がありました。 それは文筆家の物を書く際の姿勢として、「文芸家はものの関係を味わうものだ」と言っていることです。 確かに人や

          【文芸論】夏目漱石が教えてくれること

          【本多顕彰『文章作法』は目から鱗】

          英文学者、評論家で浄土真宗の僧侶でもあった本多顕彰氏は(1898-1978)は『芸術と社会』、『文学の知識』、『徒然草入門』などを始めとした大変多くの著作を残しています。 文章もわかりやすく、著述することに対して基本を踏まえた素晴らしい考え方を持っている方です。 ここで、1959年に書かれた『文章作法』は「表現と伝達」、「生きた言葉」、「習練」、「文章の組み立て」、「書き出しとそれ以後」、「ユーモア」、「手紙の書き方」などを章立てとし、多岐にわたって詳しく述べられていました

          【本多顕彰『文章作法』は目から鱗】

          【人物伝】グスタフ・マーラーの素顔[3]〜リヒャルト・シュトラウスとの不思議な人間関係〜

          マーラー(1860-1911)の人間性に関する記述を過去に2回書いてきたが、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)との関係を示すおもしろい記録が残っている。 同世代のこの二人の作曲家の歳の差は4歳。 お互いに尊重し合い、かつ対立心もあったという表面上は良きライバルであったようだ。 ただお互いを「尊重」という一言で片付けられるかというとそうでもない特殊な関係を築いていたようである。 石倉小三郎著『音楽文庫 グスターフ・マーラー』(音楽之友社 昭和27年出版 絶版

          【人物伝】グスタフ・マーラーの素顔[3]〜リヒャルト・シュトラウスとの不思議な人間関係〜

          【人物伝】グスタフ・マーラーの素顔[2]〜シェーンベルクとの関係性〜

          グスタフ・マーラーはアルノルト・シェーンベルク(1874-1951)と意外にも深い関係を持っていたことはあまり知られていない。 このことを確認するには、石倉小三郎著『音楽文庫 グスターフ・マーラー』(音楽之友社 昭和27年出版 絶版)を参照すると、次のような記述が見られる。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 彼を死の床において苦しめたものに、今一つ別の問題があった。 それは誰が自分なき後シェーンベルクを援(たす)けるだろうかということであった。 当代の若い音楽

          【人物伝】グスタフ・マーラーの素顔[2]〜シェーンベルクとの関係性〜

          《2023年の振り返り》 今年は京都を舞台にした中編『四条河原町ヘテロフォニー“純情編”』と音楽や文学資料を読んでの想いを綴ることができました。多くの皆様と著作を通じ、交流できましたことに心から感謝を申し上げます。来年も引き続き皆様の記事を拝読させていただき、精進してまいります。

          《2023年の振り返り》 今年は京都を舞台にした中編『四条河原町ヘテロフォニー“純情編”』と音楽や文学資料を読んでの想いを綴ることができました。多くの皆様と著作を通じ、交流できましたことに心から感謝を申し上げます。来年も引き続き皆様の記事を拝読させていただき、精進してまいります。