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【小説】「twenty all」203

(しかし、部員が多いな)
 道場や看的小屋から出て来る人数を数えていた空良。
(ざっと20人強か、一体どんな練習をしているんだろう)
 興味津々でもっと近付いて行こうとした、その時・・・

「おい、そこで何をしている?」

 いきなり背後から声を掛けられ、空良は飛び上がった。


 ロードワークの帰りだろうか、首にタオルを掛けたジャージ姿の男子部員が、彼をジロジロと眺めていた。
 見た感じ、割と軽そうな男だ。
「あ、あの・・・」
 事情を話そうとした空良だったが、彼はその前にポンと手を叩いて言った。
「そっか、君は入部希望の1年生だね」

「へ?」
「ふーん、この時期に入部とは少し遅い気がするけど、まあ大歓迎だぜ」
 思いもかけなかった言葉に、空良の思考が一瞬止まる。
 クラブ見学者だと完全に思い込んでしまった彼は、嬉しそうに自己紹介を始めた。
「俺、2年の須山ってんだ、ヨロシク」
「いや、その・・・」
 須山は、戸惑う空良の手を強引に取って言った。
「1年は今日休みだけど、ゆっくり見て行ってくれよな」
「あ、あのぉ」

 空良は、そのまま強引に道場の中へと引き摺られて行った。

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