黒珈(くろこ)|Kindle作家

モノづくりの会社で働いている🐈‍⬛です。 お仕事ショートストーリー【営業課長の心得帖】Ki…

黒珈(くろこ)|Kindle作家

モノづくりの会社で働いている🐈‍⬛です。 お仕事ショートストーリー【営業課長の心得帖】Kindle出版(全3巻) 現在は続編の【備忘録】シリーズ、新感覚学園小説 【straight(駅伝)】を連載中。

マガジン

  • 【小説】straight(ストレイト)

    新感覚の学園小説です。 ある事件の責任を取るカタチで地方に左遷された、某飲料メーカーに勤める元箱根駅伝選手、澤内悠生。 ひょんなことから地元の女子高校駅伝部のコーチを引き受けることになり……。

  • 週末ストーリィランド

    週末にひと繋ぎのものがたりをご提供いたします🐈‍⬛☕️✨

  • 【備忘録】シリーズ

    「四条畷紗季の備忘録」シリーズを纏めました。 【主な登場人物】「四条畷紗季」某食品メーカー本社マーケティング部担当課長。真面目で優秀だが少し天然。「寝屋川慎司」紗季の上司。家族とトンカツを心から愛する副部長。

  • 【黒珈の雑記帳】

    お知らせやつぶやきなどなど🐈‍⬛☕️

  • 【黒珈メソッド(有料記事)】

    部下やメンバー、自分自身のステージアップに繋がる【心得帖】などなど

最近の記事

  • 固定された記事

【PR】(Kindle出版)新感覚学園小説「twenty all」を刊行いたしました!🐈‍⬛☕️✨

 Kindle作家の黒珈です。  普段はものづくりの会社にて、のべ1000人以上の営業担当者をマネジメントして参りました。  その経験を活かして「ビジネスハック」や「マネジメント」をショートストーリー形式で楽しく学べるKindle書籍【営業課長の心得帖】シリーズを刊行しています。  ご興味のある方は、文末の著者情報をご確認ください。  その一方で「ライトノベル作家」として、メディアプラットフォーム「note」にて「新感覚学園小説」シリーズを連載中。  本書は2023年6

    • 【小説】「straight」095

      (また来たっ!)  5度目の感覚に、身を固くする諸積。  ややあって、その気配がふっと消える。 (なんだ、またフリだけか……)  そう思って、彼女が気を抜いたその瞬間、左脇を紫の風が吹き抜けた。 「え?!」  諸積は、スローモーションの様に前方に向かっていく、桔梗女子のゼッケンを目で追っていた。  一瞬後、意識が戻って来る。 (や、やられた!)  弾丸の様に飛び出した柚香の背中を、諸積は慌てて追おうとした。  しかし、度重なる偽スパートに備えて来た彼女の脚には、もう柚香を

      • 【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第4話

         彼女は、否定とも肯定とも取れるあいまいな表情を作っていた。 「自己紹介がまだだった。俺は、篠原悠生」 「……」  久深は、先程から一言も口を聞いていない。  困った悠生は、幾分饒舌気味に話していた。 「さっき君が言った『風の色』の事なのだけれど」 「……もういい」  彼の言葉を、久深は静かに遮った。 「突然あんな事を言った私が間違っていました。ごめんなさい、忘れて」  寂しげにヴァイオリンをケースにしまった彼女は、そのまま立ち上がろうとする。  その背中に、悠生は言葉を

        • 【小説】「straight」094

          「くっ!」  何度目かのスパートの気配に、諸積は身構えた。  しかし、後ろから出てくるはずの柚香が来ない。 (もう、いいかげんにして!)  彼女は、声にならない悲鳴をあげた。  順位の上では、聖ハイロウズのトップは変わらない。  しかし、実際の選手の消耗度は、二人の間で大きく違っていた。 (よし、最初のスパート分の体力は回復した)  両拳をぐっと握りしめた柚香の瞳に、再び強烈な光が宿った。 (では、そろそろ行きますか) (頑張れ、ユカ)  第四中継所、ウインドブレーカー

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        マガジン

        • 【小説】straight(ストレイト)
          95本
        • 週末ストーリィランド
          4本
        • 【備忘録】シリーズ
          13本
        • 【黒珈の雑記帳】
          35本
        • 【黒珈メソッド(有料記事)】
          4本
        • ◎完結【小説】「twenty all」
          231本

        記事

          【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第3話

           夏の夕方は、悠生のお気に入りだ。  昼間の喧騒はどこへやら、この時間に聞こえるのは、寄せては返す波の音だけである。  バイトが引けた悠生は、鞄に機材を詰め込んで海の家を後にした。  彼がカメラに興味を持ったのは、中学一年の頃からだ。  それまでは、絵画を主にしていた。  でも、写真がただ被写体を映すのではなく、撮影者の心もそのまま現れるものだと知ってからは、風景・人物を問わず、あらゆるものを撮りまくってきたのだ。  今回、ここをバイト先に選んだ一番の理由も、そこにあった

          【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第3話

          【小説】「straight」093

          「ゴメン真深、ちゃちい小細工使うよ!」  そう叫んだ柚香は、気合で早めのスパートを掛けた。 (何っ?!) 聖ハイロウズ学園の第四区ランナー、諸積遥果(もろずみはるか)は、一気に差を詰めてきた柚香に戸惑った。  慌てて現在地点を確認する。 (スパートするには早い、どうして?!)  まだ1キロを少し過ぎた地点だったが、柚香の姿はぐんぐん迫っている。 (くっ、抜かれる)  そう思った彼女は、慌てて抜かれた時背中に貼り付いていく体勢を整えた。  しかし、いつまで経っても彼女は現

          【小説】「straight」093

          【小説】「straight」092

          『柚香、一番でタスキ持ってきてね』 『うん、任せておいて』 『勝とうね、絶対』 「よっしゃあ!」  柚香は、カーブを曲がり切った所で、一気に速度を上げた。  前方に、必死で逃げていく聖ハイロウズ第四区選手の姿が小さく見える。 (さすがハイロウズ、そう簡単には追いつかせてもらえないか)  速度に乗ったまま、柚香はペロッと舌なめずりをした。 (でも、約束しちゃったもんね)  彼女の脳裏に、いつぞやのミーティング風景が浮かんできた。 『澤内さーん、私の四区はどういう試合運び

          【小説】「straight」092

          【小説】「straight」091

          「おっ、あんたが部長やな」  初対面の真深が私を見てこう言った時、すぐに否定しようとした。  でも、光璃はそれを押し止め、私は部長に祭り上げられた。 「言い出したのはピカじゃない、あなたがやりなさいよ」  何か気に食わない事があったのか、この時の私は珍しく感情を爆発させて、光璃に詰め寄った。 「いつもそうじゃない、何で面倒な事全部押し付けるの? 私だって、もっと楽したい時があるのよ!」  勢いでまくし立てた私は、光璃の大きく開いた瞳に溜まった涙を見て、口を閉じた。 「…

          【小説】「straight」091

          【小説】「straight」090

           子供の頃から、一通りの事は出来た。  小五から伸びた背丈のせいもあり、周りの友達からは常に頼られる存在だった。  私はいつも、涼しい顔を作る。  そして自分自身に、出来て当たり前、なって当たり前、と言い聞かせていたのだ。  本当は、ずっと苦しかったのに……。  佐山光璃。  小学校低学年から、自分の一番近くに居た、掛けがえのない友達。  彼女は、私の性格をよく見抜いていた。 「ユカりんはすごいよ」  学校の帰り道、ランドセルを背負った彼女が背中を向けたまま、決まっ

          【小説】「straight」090

          【小説】「straight」089

           大西稔流(おおにしみのる)  前社長、大西征五郎の長男。  次期社長が有力視されていたが、straight事件により専務から平取締役まで降格させられた。  それから半年間、会社の表舞台から全く姿を消し、社員の間では隠居説まで流れていたのだ。  その男が今、一地方支店の営業課長と向き合っている。  全身の毛穴から一気に汗が噴き出した課長は、当初の疑問に立ち返っておそるおそる尋ねた。 「それで、こちらにはどのようなご用件でいらっしゃったのですか?」  彼の質問に、暫く黙って

          【小説】「straight」089

          【小説】「straight」088

          「あー、何てドキドキする展開なんだ……」  観衆が詰めかけている競技場の中、スクリーンを眺めていた営業課長は、第三中継地点の映像から目を離して一息ついた。  ちょっとだけ見て帰るつもりだったが、今ではすっかりレースにのめり込んでしまっている。 (桔梗女子の子達、ただの高校生かと思ってたらなかなかやるじゃないか)  自分をおっさん呼ばわりした真深の力走に、心を打たれた彼は、もう一度椅子に深く掛け直した。 (澤内悠生が育てた選手、か。  出来る事なら勝たせてやりたいが、トッ

          【小説】「straight」088

          【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第2話

          「は、はい」  柄にもなく上擦った自分の声が恥ずかしくなり、悠生は慌てて店内を見回した。 「どうぞ、こちらに」 「ありがとう」  昼食時で混み合ったテーブルの間を、彼女は風の様にすり抜けて行った。  白いワンピースが、その動きに合わせて揺れている。  素足に似合う、真っ白いミュール。  肩まで伸びた黒い髪に、優しく包み込む様な大きな瞳。  それはまさに、悠生の理想とする女性を映したものだった。  彼女は、テーブルに置かれたメニューには全く目を向けずに、店の外に広がる青

          【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第2話

          【小説】「straight」087

           3人を気合でゴボウ抜きにした真深は、先頭の中野まであと100メートルの所まで迫っていた。  しかし、第四区のランナーが待つ第三中継所はもう目前である。 (あかん、あいつには追いつけそうにないわ。  畜生、レースで追いついてから一発殴ったろうかと思ったんやが……。  ま、それは、部長サマに任せっか)  聖ハイロウズが、ほうほうの体でタスキリレーを終える。  真深も、傷ついた身体に鞭を打ってスパートした。  出迎えた柚香は、鮮血まみれで走ってくる彼女に一瞬ぎょっとしたが

          【小説】「straight」087

          【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第1話

          「風の色を、作ってください」  白いワンピースを着た彼女は、メニューを閉じたあと、そう言って微笑んだ。  大学生になって、初めての夏。  篠原悠生(しのはらゆうき)は、彼が所属するサークルのOBが経営している海の家で、住み込みのバイトを行っていた。  風の浜海岸は、最近よく情報誌に取り上げられている、人気の海水浴場だ。  炎天下の中、注文を取って鍋をふるい、皿を片づけて泥の様に眠る生活が、一週間続いた。  二週目、ようやく仕事にも慣れた悠生には、もう一つ困った事が出て

          【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第1話

          【小説】「straight」086

           中町小学校前の、折り返し地点。  順調な走りを披露している聖ハイロウズ学園第三区、中野ひとみは、折り返しのポールをくるっと回った。  そのまま、来た方角へ走っていく。  途中、二番手の選手とすれ違ったが、彼女の眼中には全く映っていなかった。  駅伝にとって、緻密なペース配分がいかに大事かを命題としているハイロウズ学園。  彼女は、一・二区で乱れた『ハイロウズ・タイム』の修正を加えながら走っていたのだ。  そんな中野の頭脳コンピューターが、前方からの人影を見つけた瞬間、は

          【小説】「straight」086

          【小説】「straight」085

           現時点で、桔梗女子の順位は……5位。  先頭から1分以上遅れた真深は、短距離走並みの猛ダッシュをかけ、全身追撃態勢に入っていた。  走る度に流れ出た血が飛び散り、彼女の視界を狭くする。 (こんな事くらいで、負けてられへん)  彼女は、弾尾山の練習中、悠生と交わした言葉を思い出していた。 『真深は、何で三区希望なんだ?』 『何でって、どういう意味やねん』  口を尖らした真深に、悪戯っぽく笑った悠生が言う。 『いや、人一倍勝気で目立ちたがり屋のお前が、花の一区やアンカー

          【小説】「straight」085