【小説】「twenty all」223
(負ける、ものか!)
会で伸び合いながら、空良は必死に狙いを付けていた。
一方の御角も、痙攣を起こしている左腕に必死で力を送り込んでいる。
(このまま、永遠に続くのだろうか)
空良がそう思った瞬間、彼の周りからフッと時が消えた。
『・・・1年D組、国府田空良です』
『私は、弓道部部長の河上里香です。宜しくね』
『空良君、私に勇気を頂戴』
『あと、少しだったのになあ・・・』
『橋を架けるわよ、空良君』
『道場に、繋がる橋をね』
『もう、疲れたの』
『インターハイ出場の夢、あなたに任せるわ』
(・・・里香先輩)
再び時間を取り戻した空良は、左手の角見にグッと力を掛ける。
その瞬間、
流れ落ちてきた彼の汗で、手の内がズルっと滑ってしまった。
「!!」
彼は焦った。
(これでは、狙いが付けられない)
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