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【小説】「straight」091

「おっ、あんたが部長やな」
 初対面の真深が私を見てこう言った時、すぐに否定しようとした。

 でも、光璃はそれを押し止め、私は部長に祭り上げられた。

「言い出したのはピカじゃない、あなたがやりなさいよ」
 何か気に食わない事があったのか、この時の私は珍しく感情を爆発させて、光璃に詰め寄った。
「いつもそうじゃない、何で面倒な事全部押し付けるの? 私だって、もっと楽したい時があるのよ!」
 勢いでまくし立てた私は、光璃の大きく開いた瞳に溜まった涙を見て、口を閉じた。

「……そんな事、考えていたんだ」
 頬を伝う涙を拭って、彼女は言った。
「ゴメン、私、ユカの事何も分かってなかったんだね」
 彼女の次の言葉は、私の胸をがんと打った。
「私、バカだから……ユカが大丈夫だって言ったら、本当に大丈夫なんだって思ってた。ホントはずっと苦しかったんだね、ごめん」
 目の前で、しゃくりあげて泣く彼女を見て、大きな後悔の念に苛まれた。

(この娘は、何にも悪くない。
 私が、格好ばかり付けて本当の事言わないから、こんな事になったんだ。
 無理出来る時は笑顔で、限界を超えたらヒス起こして。
 あげくの果てに、一番失いたくない親友を傷つけている。
 私、最低だ……)


「悪いのは、私の方よ」
 泣いている光璃の肩に手を掛けた。
「やるわ、部長……いや、私にやらせて」
「でも、無理してるんでしょ?」
「違うの」
 ゆっくりと、自分に言い聞かせる様に言う。
「それからもう一つ、私、嫌な事、無理な事は絶対受けないようにする」

(そうする事で、本当の自分でいたい)
「約束、するわ」
「うん」
 笑顔が戻った光璃は、少し気恥ずかしそうに私の手を取った。
「よろしくね、水野部長」

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