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【小説】「twenty all」218

「先輩、やったぁ!」
 感極まってぶわっと涙が溢れてきた佳乃は、射場を出て来た空良に駆け寄った。

 が、彼は黙ってそれを押し止める。
「まだ、終わっていない」
 空良の視線の先には、既に次の射の準備に入っている御角の姿があった。
 思わず息を呑む佳乃。
 彼は、静かに言った。
「ここからが、本当の勝負だ」


 11射目、
 的前に立ったのは、空良と御角の二人だけ。
 もう、彼等の勝負を邪魔する者は、誰も居ない。
「早々と抜いて、失望させるなよ」
「お前こそな」
 憎まれ口を叩きながら、二人は射位に立った。
 空良が大前、御角が落。
 この立位置は、1射毎に変更される。


(やってやるさ)
 会で十分伸び合った空良、スッと離した。
 タアンという音で的中を知った彼の耳に、ドバアァンという派手な音が響いて来る。
(・・・ニャロォ)
 未だに衰えを見せない御角の豪快な射に、空良は戦慄を覚えた。

 しかし、
 介添場、観客席、看的場に居る後輩達が、一生懸命手を合わせて祈っている姿を見て、彼は再び表情を元に戻した。

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