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【小説】「straight」111

「ウソつきジュース、飛んでいけえーっ!」

 河川敷で遊んでいた男の子達が、大声で叫んで足元の缶を蹴る。

 『YES』と印刷されたそれは、むなしく宙を描いて、川の手前のよどんだ湿地にぼちゃんと落ちた。


 その様子をボーッと眺めていた悠生は、背後に人の気配を感じて振り返る。

「ホントは、戻りたかったんじゃないですか?」
 缶ジュースを両手に持った制服姿の光璃が、彼の横に腰を下ろしながら言った。
「研究所に」

「いいや」
 悠生は、そっぽを向いた。
「まだまだ、ここで教わる事が沢山あるしな」

 彼の脳裏には、先週からいきなりやる気を出した営業課長が、事務所で鼻息を荒くしている姿が浮かんでいた。


(それに……
 俺自身も、見つけちまったからなあ)


 悠生は、昨日豊田と交わした言葉のやりとりを、ぼんやりと思い出していた。

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