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【小説】「straight」087

 3人を気合でゴボウ抜きにした真深は、先頭の中野まであと100メートルの所まで迫っていた。

 しかし、第四区のランナーが待つ第三中継所はもう目前である。

(あかん、あいつには追いつけそうにないわ。
 畜生、レースで追いついてから一発殴ったろうかと思ったんやが……。
 ま、それは、部長サマに任せっか)


 聖ハイロウズが、ほうほうの体でタスキリレーを終える。
 真深も、傷ついた身体に鞭を打ってスパートした。

 出迎えた柚香は、鮮血まみれで走ってくる彼女に一瞬ぎょっとしたが、すぐに大きな声で声援を送った。
「頑張れ真深、あと50メートル!」

(あーあ、ユニフォームも血でベトベトや)
 胸の当り、流血で朱く染まったゼッケンをちらっと見て、真深は苦笑した。

(カレカレ、怒るやろうなあ)
 怒るというより、怪我を見てあたふたしている悠生の姿が浮かんだ彼女は、ぷっと吹き出した。

「頼んだで、部長!」
「OK!」
 柚香の手に、タスキを叩きつけた真深は、トップスピードに乗ったまま、人込みの中に突っ込んだ。

 逃げ出そうとしていた中野に身体ごとぶち当り、そのままなぎ倒す。

 思わずぎゃっと悲鳴をあげた彼女を背に、起き上がった真深は、会心の笑顔を見せてこう言った。

「すまんすまん、でも、わざとやないでえ」

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