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【小説】「twenty all」220

 ダアァン!!
 八寸的が裂けるのではないかという程の衝撃を与えて、御角の矢は勢い良く突き刺さった。
 続いて、
 空良の放った矢は、狙い違わず的の方に伸びて行き、その中心に吸い込まれて行った。


「・・・すげえ」
 二人の競射を見ていた外西が、感嘆の言葉を漏らした。
「これはもう、地区予選レベルの戦いじゃない。インターハイ全国レベルの競射だ」


「柔」の空良に、「剛」の御角。
 タイプの違う二人の選手の射に、外西だけではなく、観客達全員の目が奪われていった。
 彼等が的中させる度に、静寂が訪れる。


(この会場にいる人みんなが、空良先輩と御角さんの射を見守っている・・・)
 佳乃は思った。
(本当に、決着が付くんだろうか)
(どちらが、勝つんだろうか・・・)


 18射目、
「くっ!」
 半ば強引に弦を引き離した御角は、矢の行方を目で追う。
 ガキィン!という音と共に、矢は八寸的の枠内にギリギリ飛び込んだ。
 ふう、と息を付く。
(やべえ、早いトコケリを付けないと、身体が保たねえな)


 一方の空良も、極度の緊張感から来る疲労に身体が蝕まれていた。
 狙いがなかなか定まらず、必然的に会が長くなる。
(よし、ここだっ!)
 漸く射離した瞬間、彼の弦がバチンと弾け飛んだ。

 その衝撃で、彼の手から弓が吹っ飛んでいく。
「矢は!?」
 一年前、里香が弦切れを起こした時の悪夢が甦った空良は、慌てて的を見る。


 彼の矢は、辛うじて的の6時方向に入っていた。

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