【小説】「twenty all」224
的中を左右する重要な役割を持つ「角見」が崩れた今、通常的より難易度の高い八寸的を射抜く確率は、皆無に等しい。
落胆と諦めが意識の中を過った時、空良は皮肉にも、頭の芯がすうっと冷めていくのを感じた。
無念の表情を浮かべて、彼は謝罪の言葉を口にした。
「すみません、里香セ・・・」
その時、
奇跡が起こった。
突然、今迄感じたことが無い角見の感覚に襲われた空良。
(なっ、何だァ!?)
慌てて自分の左腕を見る。
すると、
そこには彼のものとは違う、もう一つの白銀の腕が、瞬く様に存在していた。
耳元から、優しく包み込むような、懐かしい声が聞こえる。
『橋が架かるわ、空良君』
彼は、迷わず射離した。
数秒後、
空良の矢は、八寸的の中心に深く突き刺さり、
弦切れを起こした弓の反動により、大きく上方に逸れた御角の矢は、あづちの上、コンクリート壁に弾かれて、矢道の中程まで跳ね返ってきた。
この瞬間、
県立都合ヶ丘高校、国府田空良の
インターハイ地区予選、男子個人戦優勝が決定した。
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