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わたしはそこにいないけど〜美術館さんぽ3/22〜

東京都写真美術館

トップ画像は目黒川。
撮影したこの日は、あいにく桜の開花前。
両岸の木々のシルエットだけが焼き付いた。

東京都写真美術館は恵比寿ガーデンプレイス内にある。
恵比寿駅で降りて、改札を出たら動く通路を延々と進む…これは目黒方面に戻っているのでは?そんなわけで目黒から歩くことにした。

こんなバスが走っているんだね

晴れた空の下をのんびりと歩く。線路をたどっていけば迷うこともない。
光村図書(国語の教科書が確かここのだった)、伊藤ハム、日の丸自動車学校、書道専門学校。目印になる建物を通り過ぎ、ようやくガーデンプレイスっぽい建物が見えてきた。

目当ては「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」だった。『ライカの名手』として名を馳せた彼の名は写真の賞にもなっている。
朝日新聞社が1975年に創設した「写真界の芥川賞」。写真の創作や発表で活躍した新人に贈られる賞だ。

地下1階から3階までの4フロア。
共通券ですぺて見られる。まずは3階の「恵比寿映像祭2024 コミッション・プロジェクト」から。床に置かれたビジョンにたくさんの人物が映っている。外国人みたい。字幕がついている。ドキュメンタリー?
撮影者の金仁淑(キム・インスク)が第48回木村伊兵衛賞をとったことを数日後のニュースで知った。
印象深い作品だったのだ。気のせいじゃなかった。

血の繋がり、赤の他人、地域コミュニティ、複雑な人間関係…さまざまな関係を映像にした作品。解説を抜粋する。

人生は複雑に絡んだ関係にあふれている。望むと望まないに関わらず、想像もできなかった さまざまな関係が人生とともにある。
日常の中で結ばれる人間関係も同じである。学校や職場、あらゆる環境の変化により、私たちはどう展開するかわからない出会いをくりかえす。 ある詩に、『人が訪れるということは一人の人生が訪れることだ』と書かれている

展示パネルの一部を引用

これを読んでから改めて作品を見ると違った心持ちになった。

2階は「記憶 リメンブランス 現在写真・映像の表現から」
篠山紀信が毎年誕生日に撮られた幼少期から少年時代の姿。震災の跡形。もう誰も住まわない住宅の1室。
人物や建物が被写体とは限らない。言われなければ気付かない軍事境界線。また屋外の風景を室内に取り入れて撮影されたポートレイト。モデルが高齢者というのも意味深。

最後に地下に降りた。全7章、木村伊兵衛の世界。
船に何日も揺られなければたどり着けなかった沖縄。言葉も文化も本土とまるで違う。見たことのない沖縄がそこにあった。
海外の写真も数多くあったが、昭和の列島風景が目を引いた。
この年代は両親が子どもの頃と重なるのではないか。駄菓子屋の店先ではしゃぐ子ども。祭りや花火。添い寝する母子。

見ている私はその時代を知らない。
でもじっと見ていると、息づかいや匂いまで伝わってくるようだった。瞬間をとらえた1枚の写真が心を動かす。
そこに私はいないけど、いるような気分になる。
柴崎友香「その街の今は」のヒロインは古い大阪の街の写真を集めていた。自分の知らない時代を知りたいと言って。
その気持ちがわかる気がした。

トップカフェでランチ

館内のカフェが新しくなっていた。思い切って「野菜カレーとルーロー飯の合盛り」!
たくさん歩いたしエネルギー補給しなくちや。野菜たっぷりで彩りが美しい…。

堪能後は来た道を目黒駅まで戻る。
今度は逆方面へ。
目黒区美術館で「広がるコラージュ展」を観て帰った。
たくさん歩いて、たくさん吸い込んだ日。



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