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フェデラーの引退を受け入れるために書いた記事。

ロジャー・フェデラーが引退してから少し日が経ちました。ラストマッチの時には、思わず涙を浮かべてしまいましたが、今日は彼に対しての思いを書いてみようと思います。

まず「ロジャー・フェデラー」という存在は、私にとって今も昔も変わらないヒーローです。きっと、世界中の多くの人が同じように思っていることでしょう。

彼のテニスに魅了された正確なタイミングはもはや覚えていませんが、僕がテニスを始めるきっかけになったのは、紛れもなく彼のおかげです(全然上手くないけど)

数多くの選手がしのぎを削るテニス界ですが、間違いなくフェデラーは「史上最高」の選手だと思っています。この話をした時に、よく「史上最強」という言葉と混同されてしまうのですが、僕の中で彼は「史上最強」ではありません。

もちろん、全盛期の彼を見ればこの言葉が最適です。向かうところ敵なしと言わんばかりの戦いぶりで、どんな選手が相手でも負ける姿が想像できませんでした。

しかし、そこに立ちはだかったのがラファエル・ナダルという男でした。初対戦した2004年から今に至るまで、実に40回も対戦した両者。男子テニス界を牽引する存在であり続けた二人は、長い時間をかけ、ライバルであると同時に、素晴らしい友情も築きました。

両者のイメージをシンプルに表現すると、「柔」のフェデラーと「剛」のナダル。そのくらい二人のプレースタイルは対照的でした。特に、シングルバックハンドでプレーするフェデラーにとって、ナダルの繰り出すスピンボールは厄介な存在でした。バウンドした瞬間に跳ね上がる球筋を、片手で打ち返すのはなかなか至難の技です。

しかし、フェデラーも黙っていません。ポジションの工夫や打ち方含め、"ナダル対策" とも言えるバックハンドの改善に努め、キャリア中盤〜終盤では、ナダルを圧倒するシーンも見られました。

こうした両者の関係性から「ナダルがいたからフェデラーは強くなたし、フェデラーがいたからナダルも強くなれた」といえるでしょう。そこに、後にビッグ4と称される、ジョコビッチやマレーが加わり、切磋琢磨するという構図が出来上がっていきました。

少し話が逸れた気がしますが、話を戻すと、フェデラーは「史上最高」の選手で、そのフェデラーを苦しめ続けたナダルこそ「史上最強」の選手だろうと思っています(成績だけで考えると、ジョコビッチも「史上最強」に近いでしょうが)

そんな両者が、フェデラーのラストマッチでダブルスを組むという展開を誰が想像できたでしょうか。スポーツ史に残る最高のライバル関係である二人が、対戦相手ではなくパートナーとして戦うなんて、感動以外の何者でもありません。

二人が最高のライバル関係である理由は、間違いなく互いのリスペクトがあってこそです。私がフェデラーを尊敬している理由は、プレースタイルはもちろんですが、誰に対してもリスペクトを忘れない姿勢があるからです。どんな選手が相手でも、対戦相手であればみな平等。簡単なようでなかなかできることではありません。

きっとフェデラー自身も、そうした姿勢を身につけるまでに多くの葛藤があったでしょう。今でこそ「紳士」である彼ですが、キャリア序盤には試合中に感情をあらわにし、ラケットを破壊したりすることもありました。今では想像もできない姿ですよね。

それが、多くの大会で勝利を収め、世界一になり、周りからの評価が上がるにつれて、王者としての自覚が芽生えたのでしょう。このメンタルコントロールは並大抵のものではなかったと思います。その姿を見て、ナダルも素晴らしい選手へと成長していったのだと思います。

そうした中で、いつしかライバルであり、親友となっていったわけです。今なので言えますが、昔は私自身、ナダルが嫌いでした。応援しているフェデラーを脅かす存在だったので、とにかく嫌な存在でした。

それでも、二人のライバル関係を知れば知るほど、不思議とナダルも好きな選手になっていきました。今では、フェデラーと共に応援している選手の一人です。周りの感情をも動かす二人の関係はやはり素晴らしいものです。

そんな二人が組んだラストマッチでは、残念ながら勝利を飾ることはできませんでしたが、大会中には、心から楽しむ二人の姿が見られ、ファンとしても本当に幸せな時間でした。

レーバーカップがフェデラーのラストマッチになったことは本当に良かったと思っています。ボルグやマッケンロー、レーバーなど数多くのレジェンドも駆けつけ、今の世界のトップ選手たちが集結する中で最後を迎えられたことは、フェデラーのこれまでの功績があってこそでしょう。試合後に涙ながらにインタビューを受けるフェデラー、それを見て涙するナダルの姿は、涙なしでは見ていられませんでした。

フェデラーの引退によって、テニス界の勢力図はまた大きく変化するでしょう。そして、テニス界のひとつの時代が終焉したとも言えます。そのくらい大きな存在でした。

私個人の気持ちで言えば、大会を追っかけるのはもちろんのこと、フェデラーがラケットを新しくするたびにラケットを買い、バッグを変えればバッグを買い替え、ウェアを買い、ニュースをいつもチェックしていた私のライフスタイルも少し変わることになると思うので、寂しい気持ちもあります。

ただ、これまで彼のテニスを応援し続けられたことは何にも変え難い財産ですし、本当に幸せな時間を過ごすことができました。それについては、心からフェデラーに感謝しています。

引退してもなお、「テニス界からご無沙汰になることはない」とコメントしていたフェデラー。今後の彼の人生、彼の家族の人生に幸せが溢れることを願って、彼の引退を受け入れたいと思います。

To Roger, with Love…

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