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スカイとマルコ(27)・温もり

「神様、僕、お願いがあるんです。僕がまだ犬の姿のうちに時枝さんに会わせてもらえませんか?」

天界に戻る道のり、マルコは神様に懇願した。

「時枝さん、ピーターとサスケと旦那さんと幸せな時間を過ごしいると思うけど、それでも、どうしているかなって心配なんです。」

腕の中のマルコに神様は、優しい声で答えた。

「時枝さんもずっとマルコのことを心配しているよ。」と。

マルコはそれを聞いて、ますます心配になった。

「神様、お願いします。僕、時枝さんに、大丈夫って、伝えてあげたい。心配から解放してあげたいんです。お願いします。僕を時枝さんに会わせて下さい。」

神様は、目を細めて、マルコを見つめ、優しく微笑んだ。
それが合図かのように、マルコは気づくと、時枝さんの目の前にいた。

「ママ!」
思わず、ママと叫んでしまったことにマルコ自身が驚きながらも、感情が抑えられず、時枝さんの元に駆けていった。

最初、時枝さんはマルコの姿に驚き、でも、すぐにしゃがんで、マルコを抱きしめた。

「マル、私の大切なマル、ごめんね、先に死んでごめんね。あなたを置いていってしまいごめんね。私は飼い主失格ね。マルに辛い思いさせてしまって、本当にごめんね。」

時枝さんの溢れる涙がマルコのふわふわの毛を濡らした。
マルコは、時枝さんの全ての涙を拭き取るように舐めまわし、「時枝ママは、ちっとも悪くないよ。僕はママと会えて、ママと一緒に生きて、本当に本当に幸せだったんだ。だから、もう泣かないで。謝らないで。ママが悲しいと僕も悲しいから。だから、ママは笑っていて。」

時枝さんは、うんうんと頷きながら、マルコにたくさんのキスを返した。そして、神様に向かって、「この子を私に与えてくれて、本当にありがとう御座いました。マルのお陰で、私は最後の一瞬まで本当に幸せでした。」と頭を下げ、マルコをもう一度、目を閉じ、ぎゅっと抱きしめた。
この温もりを永遠に閉じ込めようとするかのように。

どれぐらい抱きしめられていたのだろう。でも、時が来た事が分かったマルコは、時枝さんに名残惜しそうに最後のひと舐めをして、神様の元へと戻って行った。

「マルコ、本当に貴方に会えて、私は幸せだったわ。ありがとうね、マルコ。ありがとうね。貴方も幸せになるのよ。約束よ。」

マルコの耳に最後まで時枝さんの声が残り続けた。




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